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(10)「周りの壁が迫まり、呼吸できなく…」被告、声を絞り出し

英国人英会話講師のリンゼイ・アン・ホーカーさん=当時(22)=に対する殺人と強姦(ごうかん)致死、死体遺棄の罪に問われた無職、市橋達也被告(32)の裁判員裁判第5回公判は、市橋被告に対する追加の質問が行われた。

この日の公判で検察側が追加質問を求め、堀田真哉裁判長がこれを許可。検察側、弁護側双方に約10分ずつ被告に対する質問を認めた。

裁判長「被告は証言台に来てください」

若い男性検察官が質問に立つ。市橋被告の自宅マンションの玄関を写した2枚の写真が法廷内の大型モニターに映し出された。

検察官「自宅玄関が写っていますね?」

市橋被告「はい」

市橋被告が消え入りそうな声で答える。

検察官「この玄関の棚は、リンゼイさんを縛った結束バンドを入れていた棚ですね。短いバンドの袋はいつ開けましたか」

これまでの公判では、市橋被告の自宅玄関の棚には、45センチサイズの結束バンドと30センチサイズのバンドが入っていたとされる。

市橋被告「30センチの袋は事件当日に開けています」

検察官「当日のどの時点で?」

市橋被告「45センチのものを使い切ったと思って、30センチの袋を開けました」

検察官「強姦の後?」

市橋被告「そうです」

市橋被告は比較的はっきりした口調で答えた。

検察官「リンゼイさんに着せたパーカが切られていますが、いつ切ったのですか」

これまでの公判によると、市橋被告は強姦後、裸にしたリンゼイさんに自分のパーカを着せたとされる。

市橋被告「はっきり覚えていません。リンゼイさんが動かなくなるまでは、パーカを着ていました。26日に脱がせた後、切ったのだと思います」

検察官「何のために切った?」

市橋被告「なぜ…私が…切ったのかは分かりません」

市橋被告は震える声で一言一言、区切るように答えた。これまでの証言でも市橋被告は記憶が鮮明でない証言をする際、声がうわずったり、震えたりしていた。

この後、検察官は4畳半の和室に尿の痕跡があった理由を尋ねた。市橋被告は「分からない。すいません」と答えた。

傍聴席から向かって右から2番目の若い男性裁判員はあごに手を当て、考え込むように聞いている。

検察官「ご遺体の足の結束バンドに、さらに2つのバンドがついていたのは、両手、両足のバンドをつなごうとしていたのではないですか」

これまでの公判で、リンゼイさんの家族の代理人の弁護士が、1本の結束バンドに別の結束バンドが結ばれていたことに疑問を示していた。この点について検察側が追及していく。

市橋被告「違います」

検察官「なぜ連結されていたのですか」

市橋被告「長いバンドは何回か切って、すぐになくなってしまいました。そこで封を開けていない30センチのバンドがあることに思い当たりました」

「でも(30センチのバンド)1本じゃ、短くてはめることができない。輪を作ってつなげて長くして手首、足首にはめようとしました。それが発見されたのだと思います」

向かって右から3番目の男性裁判員は口に手を当て真剣なまなざしで市橋被告を見ている。

検察官「連結した結束バンドで被害者を縛ったことは?」

市橋被告「あります」

検察官「具体的には?」

市橋被告は「30センチのバンドを…」と説明しようとするが、うまくいかずに何度も言い直す。市橋被告は、30センチのものをつなげて1つの輪にし、手首、足首を縛ろうとしたと説明する。

検察官「手錠のようにしたのでは?」

市橋被告「手錠のようにしたのではありません。手錠は左と右の輪が別れていますが、(私は)1本にしたものを手首、足首に回してはめました」

この後、検察官の質問に対して市橋被告は、この30センチのバンドで作った輪をリンゼイさんの足首にはめ、その後、45センチのものが1本残っていたのを見つけ、さらに上からそれをはめたとの説明を加えた。

代わって中年の男性弁護人が質問に立った。

弁護人は結束バンドを玄関の棚に保存していた状況と犯行時、バンドを取り出したときの状況について追加の質問をした。裁判員らがしきりにメモを取っている。

弁護人「話が変わりますが、被害者に掛けたという上着は、被害者に会いに行ったときに来ていた上着と同じですね?」

市橋被告「同じものです」

大型モニターに茶色の長袖の上着の写真が映し出された。弁護人が情状面の質問に質問内容を変えた。

弁護人「この裁判で、リンゼイさんのお父さん、お母さんの証言を聞きましたね?」

市橋被告「聞きました」

弁護人「とても苦しんでいらっしゃることは分かりましたか」

市橋被告「はい」

市橋被告の声が激しく震えだした。

弁護人「聞いてどう思いました?」

弁護人は、前に手を組み、市橋被告の顔を見ながら諭すような口調で質問する。

市橋被告「私は…この先…苦しまなくてはいけません…と思いました」

震える声で、やっとのように絞り出した。

弁護人「『被害者の立場に立って想像しなければ』との◇◇さん(法廷では実名)の話も聞きましたね?」

◇◇さんは、この質問の前に情状証人として法廷に立った市橋被告の大学時代の指導教授のことだ。

市橋被告「聞きました」

弁護人「あなたに足りないものは、このことでは?」

市橋被告「はい」

弁護人「被害者への手紙に加えて話すことは?」

この法廷で、市橋被告がリンゼイさんにあてて書いた手紙が弁護側の証拠として読み上げられていた。

「はあ、はあ」という市橋被告の激しい息づかいがマイクを通じて聞こえてくる。

市橋被告「リンゼイさんの最期の気持ち、苦しくて、怖くて、つらかったと思います…」

徐々に涙声になっていく。はなをすする音も法廷に響く。

市橋被告「それを考えると、苦しくなります…。周りの壁が迫ってきます。呼吸ができなくなります…。でもそれをやったのは私です」

やっと絞り出したというような声で言い切った。

市橋被告「私はリンゼイさんの気持ちをこれからずっと考えていかなければなりません…。と思います」

弁護人「被害者にとってあなたはどう見えていると思いますか」

市橋被告「けものに見えていると思います」

弁護人「あなたの一番の罪は何だろう?」

市橋被告「一番の罪…。リンゼイさんに、怖い思いをさせ、苦しませ、死なせてしまったことです」

市橋被告の声の震えが収まらない。右から3番目の男性裁判員は身を乗り出すように、市橋被告の表情をうかがっている。

弁護人「(リンゼイさんの)ご両親の『最高に重い罪になってほしい』との言葉は聞きましたか」

市橋被告「はい。聞いています」

弁護人「その証言についてどう思っています?」

市橋被告「私はそれを重く受け止めなければいけないと思います」

リンゼイさんの母、ジュリアさんは通訳の言葉を聞き逃すまいとするように顔を傾けて震える市橋被告の証言を聞いている。

⇒(11)「私の中は自分勝手であふれている」被告発言にリンゼイさん父、激しく同意