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(11)「私の中は自分勝手であふれている」被告発言にリンゼイさん父、激しく同意

英国人英会話講師のリンゼイ・アン・ホーカーさん=当時(22)=に対する殺人と強姦(ごうかん)致死、死体遺棄の罪に問われた無職、市橋達也被告(32)の裁判員裁判の第5回公判。弁護側による被告人質問が続く。

弁護人「自分でどういう罪が相当か考えたことはありますか」

市橋被告「ありません。私は裁かれる身です。裁判で何があったか話をすることだけ。あとは裁判所にお任せします。それ以上考えるべきではないと思っています」

弁護人「今、罪の深さが分かっていますか」

市橋被告「いいえ」

罪の深さが分からないとする市橋被告の回答に、男性弁護人は改めて聞き直した。

弁護人「まだ、足りないということ?」

市橋被告「はい」

弁護人「一生かけて罪と向き合っていく?」

市橋被告「その…。はい」

証言台の席に座る市橋被告は、両手のこぶしをそれぞれ握りしめている。

弁護人「事件のとき、本当に思っていたら、少なくとも警察に連絡したり、逃げなかったと思うんだけど」

市橋被告「そうです」

弁護人「2年7カ月、もっと早く出頭すべきだったのでは」

市橋被告「そうです」

弁護人「なぜできなかった?」

市橋被告「私の中は自分勝手であふれています。私がリンゼイさんにした行為に向かい合うということをしませんでした。リンゼイさんにした行為の責任を取ることが怖かった。だから、『誰だって逃げる。誰だって逃げるんだ』と言い聞かせて逃げていました。本当に卑怯(ひきょう)でした」

弁護人「本件以外にこれまでに女性を殴ったことはありますか」

市橋被告「ありません」

弁護人「無理矢理の性行為を強要したことは?」

市橋被告「ありません」

涙声ではなをすする市橋被告。弁護士に促され、手に握りしめていた赤いハンカチで「ずずずっ」とはなをかんだ。

弁護人「なんでこんな事件を起こしたの?」

市橋被告「逃げていた間に考えたのですが、私が自分がした行為に責任を取ろうとせず、逃げてきたからです」

男性弁護士はたたみかけるように質問を続ける。市橋被告を説き伏せているようだ。

弁護人「被害者に部屋に入ってもらって、ハグ(抱き合うこと)をしようとしましたね。拒否された時点で止めればよかったのではないですか」

市橋被告「そうです」

弁護人「強姦しておいて人間関係をつくろうなんてごまかしでしょ」

市橋被告「逃げです」

弁護人「向かい合わないから殴っちゃうんでしょ」

市橋被告「はい、そうです」

弁護人「そのときに責任を取らないから、アザができちゃって、1週間(自宅に)帰せない。これもごまかし」

市橋被告「はい」

弁護人「そのつど、やったことに責任を取らないから、最悪の結果になったんでしょ」

市橋被告「はい」

弁護人「『逃げて、誰だって逃げる』。全部自分、自分、自分でしょ」

市橋被告「はい」

市橋被告は7日の被告人質問で、自宅玄関でリンゼイさんに抱きついた理由を「誘惑に負けた」と説明している。拒否されて廊下に押し倒して乱暴した後に、リンゼイさんの言動に腹を立てて顔を殴ったとされる。

弁護人「責任をね、取らないからね、こういう形であなたの人生がめちゃくちゃになったんでしょ」

市橋被告「はい」

弁護人「もう、だから、責任から逃げるつもりはない?」

市橋被告「…」

市橋被告は、体を震わせながらうなずいた。

弁護人「もう逃げたくないんでしょ」

市橋被告「…」

言葉を出せない市橋被告は、もう一度うなずいて反応した。

弁護人「被害者に1点でも落ち度は?」

市橋被告「ないです。ありません」

弁護人「今後、責任転嫁はしませんね」

市橋被告「しません」

検察側後部の席に座るリンゼイさんの父、ウィリアムさんと母、ジュリアさんは市橋被告の顔をのぞき込もうとした。

弁護人「そういう気持ちで証言したと誓えますね」

市橋被告「はい」

ウィリアムさんは口を真一文字に結び、顔をしかめた。男性弁護士は市橋被告が出版した手記について質問した。

弁護人「責任を取る方法として?」

市橋被告「そのときは浅はかにもそう考えました。申し訳ありませんでした」

市橋被告は、公判で刑事責任を取り、リンゼイさんの気持ちや家族を考えて生きていくことで道義的責任を取りたいと主張した。

市橋被告はさらに強く、左手のハンカチを握りしめた。ウィリアムさんは顔を横にふる。市橋被告の考えに納得がいかないのだろうか。

弁護人「(手記の執筆は)被害者への弁償、民事責任と考えている?」

市橋被告「そう考えていました」

弁護人「弁償として申し入れた金額は?」

市橋被告「分かっています」

弁護人「金額は?」

市橋被告「912万9885円と聞いています」

弁護人「でも、(リンゼイさんの遺族は)1円も受け取るつもりはない、と。それを聞いてどう思いますか」

市橋被告「本当に申し訳ありません。私はリンゼイさんの家族の立場を考えなくてはいけないと思っています」

男性弁護士は、手記の印税を受け取ってもらえない場合について質問。市橋被告は手を付けるつもりはないと説明した。

弁護人「受けとってもらえないということだが、お金はどうするつもり?」

市橋被告「弁護士の先生に相談して、何か社会に役立ててもらおうと思っています」

「私は、人間以下の行為をしました。でも、よい人間になりたかった。実際には悪でした」

通訳を介して説明を聞くウィリアムさん。2度うなずき、ジュリアさんに小声で話しかけた。

弁護人「今日まで自分の親と会ったり、連絡したことは?」

市橋被告「ありません」

弁護人「理由は?」

市橋被告「リンゼイさんが両親と会えないようにしたのは私。その私が両親と連絡を取ることはできないと思いました」

弁護人「自分の親に対してどう思う」

市橋被告「事件を起こすまで、たくさんのチャンスをくれました。でも、感謝することができなかった。ただ、迷惑をたくさんかけました。その迷惑を考えるといえることはありません」

男性弁護士は、市橋被告が拘置所内に聖書の差し入れを受けたことを明らかにした。市橋被告は印象に残った部分を説明した。

弁護側の被告人質問が終了し、堀田真哉裁判長が閉廷を告げた。

第6回公判は12日午前10時から始まり、市橋被告に対する論告求刑が行われる。

⇒第6回公判