Free Space

(11)“浮気”の証拠得ようとICレコーダーを…

歌織被告が離婚を求めるに至った心理状態はどうだったのか。弁護側からの質問が続く。

弁護人「(祐輔さんの)会社に電話するときに、公正証書を使って離婚しようとは思わなかったのか」

歌織被告「考えなかった」

弁護人「どうして」

歌織被告「『公正証書には法的効果はない。ただの紙切れだ』と彼に言われていたから」

弁護人「なんで効果がないのか」

歌織被告「公正証書の中に『カウンセリングを2人で受診すること』とあったが、1度もしていなかった。彼は『シェルターから出てすぐに(公正証書を)使っていないのだから法的効果はない』と言っていた」

弁護人「離婚に対して備えたことは?」

歌織被告「彼には内緒で離婚を前提にアルバイトをしたり、部屋探しをした。海外に行ったらさすがに彼もあきらめるだろうと留学を考えた。離婚の裁判を考えて、暴力の証拠写真を撮ったりした」

癖なのか、ロングヘアーを左手でかき上げる歌織被告。だが時折、腹の辺りを手でさするなど落ち着きがない様子も。

弁護人「(暴力などを記した)メモや手帳はどこに保管したか」

歌織被告「見つかったら彼に捨てられてしまうので、自宅近くの銀行の貸金庫に預けようとしたが、予約待ちだったのでスポーツクラブのロッカーに入れていた」

弁護側の質問は、祐輔さんと(当時交際していた)B子さんの会話を歌織被告が録音した日の行動に移る。

弁護人「平成18年12月9日にしたことは」

歌織被告「ICレコーダーを部屋に設置した」

弁護人「祐輔さんの女性問題については」

歌織被告「気づいていた」

弁護人「祐輔さんは女性問題については認めたか」

歌織被告「認めることは1度もなかった」

弁護人「何のためにICレコーダーを部屋に設置したのか」

歌織被告「とにかく彼と別れるなら理由は何でもよかったが、決定的証拠がほしかった」

弁護人「どうして12月9日だったの」

歌織被告「(離婚のために)自分で考えられることをやったものの、何をやってもダメで、『もう限界』という感じでその日に設置した」

弁護人「12月9日のいつ」

歌織被告「朝です」

弁護人「その日は土曜日だが、どのように過ごしたか」

歌織被告「彼とスポーツクラブに一緒に行った。その後、2人でDVDを買ったりクリスマス飾りを買った」

弁護人「翌10日の日曜日は」

歌織被告「スポーツクラブに一緒に行った」

弁護人「この2日間で離婚の話はしたか」

歌織被告「しなかった。土日(曜日)なので(暴力が始まると長時間になるため)話し合わないようにしていた」

弁護人「10日に不動産屋に行ってるが」

歌織被告「外出先の新宿で食事をしているときの彼の言動から、『このまま家に帰ったら危ない。今すぐ家出したい』と思ったから(1人で行った)」

弁護人「外出先で暴力を振るわれると感じたのはどうして」

歌織被告「食事中に彼の買う品物について私が反対したら、急に彼が怒り出しテーブルを蹴って財布を取り上げた」

弁護側は、祐輔さんのDVを際立たせ、歌織被告の精神状態が普通ではなかったことを浮き上がらせようとする。

弁護人「不動産屋でどうしようと」

歌織被告「すぐに引っ越せる物件がないか部屋を探した」

弁護人「その結果は」

歌織被告「結局見つけられなかった」

弁護人「その間、彼から連絡は」

歌織被告「電話やメールが何度もあったが無視して、自分の実家に電話をした」

弁護人「母には何と言ったのか」

歌織被告「『とにかく彼の暴力がひどいので家を出たい。協力して欲しい』と」

弁護人「その後はどうしたか」

歌織被告「不動産屋で部屋探ししていたときに何度もあった彼の電話がなくなったので、部屋を滅茶苦茶にしたり、暴力の証拠を見つけているかもしれないと思い、タクシーに乗って自宅に引き返した」

弁護人「それで自宅は」

歌織被告「玄関にチェーンがかかっており、ドアを少し開けたすき間から部屋の様子をうかがった。中で彼がいろんな物をひっくり返し暴れる音が聞こえてきたので、近くのバーガーショップに避難した」

弁護人「その後は」

歌織被告「どれくらい時間が経ったか覚えていないが、もう大丈夫だろうと思い家に帰った」

弁護人「家の中はどうだったか」

歌織被告「とにかく全部が滅茶苦茶だった」

弁護人「ICレコーダーはいつ聞いた」

歌織被告「12月11日の朝。彼が会社に出勤してから」

質問は事件当日の言動へと移っていく。

⇒(12)「携帯に110番セットし、下着の中に」