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(8)「性的写真」が別れられなかった理由 法廷でも「言いたくなかった」

殺害後に祐輔さんと会話をしたという歌織被告。その幻聴について、検察官は様子を細かく聞く。

検察官「鑑定人に話したという祐輔さんとのやりとりだが、声に出して話してはいないよね」

歌織被告「正直言って自分では分からない。私自身では出していないつもりで話している」

検察官「(幻聴の中の)祐輔さんとの会話の内容で祐輔さんから『それ(遺体)を捨てたら負け』などと言われたようだが、それはあなたの心の中の葛藤(かっとう)ではないのか?」

歌織被告「そうだったかも分かりません。ただ、声の感じで、彼がいることは分かっていた。(逮捕後の)2月14日に初めて代々木警察に行ったとき、鏡に映った彼の姿を見た」

ここで弁護人の質問に移る。祐輔さんが撮っていたという歌織被告の性的な写真について、なぜ鑑定医の報告まで法廷で明らかにされなかったのか、弁護人が確認する。

弁護人「弁護人に何を話していたのか確認します。(祐輔さんに撮られていたという性的な)写真について、(最初の)被告人質問前から、(弁護人に)法廷で出した方がいいと言われていましたか?」

歌織被告「はい」

弁護人「鑑定人からは出した方がいいと言われた?」

歌織被告「殺害した日に、なぜ私がICレコーダーまで持ち出して別れたいと思ったのか、その理由を説明するためにも、写真のことを出した方がいいとアドバイスされた」

弁護人「それで、鑑定人には(法廷で)話していいとなったのか?」

歌織被告「はい」

弁護人「被告人質問前に写真のことを(法廷で)出したくないと思った理由は?」

歌織被告「これまで、事件について、事実と違うことをおもしろおかしく報道されているのは分かっていました。写真のことを出して、事実と違う感じで報道されるのが嫌だったのです。あとは、あのような写真を夫から撮られていたことを知られるのが嫌だった、のもあります」

弁護人「鑑定人にした話の確認をする。遺体を捨てる際、上半身は袋に入れたまま捨て、下半身は袋から出したということだが、出したのは写真を探すためということなのか?」

歌織被告「はい」

弁護人「幻覚のことを警察に話しても、聞いてくれなかった?」

歌織被告「はい」

弁護人「弁護人には(幻覚のことを)話したね。何か覚えていることは」

歌織被告「…」

弁護人「祐輔さんが見える、血のにおいがするという話をした?」

歌織被告「しました」

弁護人「それ以上細かくは話さなかった?」

歌織被告「はい」

弁護人「それは(弁護人に話すと)警察や検察官に信用されなくなるからか? でも鑑定人には聞いてもらいたいと?」

歌織被告「弁護人の先生とは事実関係のやりとりばかりでした。(幻覚のことは)私が話したくなかったのもありますが、(弁護人から)質問されることもありませんでした」

弁護人は、鑑定を行った理由について、刑の軽減が目的ではなく、真実を明らかにするためであることを強調する。

弁護人「鑑定は必要ないと周りに言っていた?」

歌織被告「はい」

弁護人「鑑定は刑を軽くするためではなく、殺害に至るまでにどんな生活をしてきたのかを明らかにするためだと弁護人からは言われていた?」

歌織被告「はい」

弁護人「私は刑が軽くなるとは言っていないね」

歌織被告「はい」

再び、検察官が質問を始める。鑑定医の意見が認められると、検察側の主張は崩れてしまうだけに、立証には慎重になっている様子だ。

検察官「今、話で出た写真とは裸の写真のこと?」

歌織被告「はい」

検察官「写真はその後どうなった?」

歌織被告「その後とは?」

検察官「シェルターから戻った理由が写真(のことをばらすと祐輔さんに言われたから)だったよね」

歌織被告「はい」

検察官「その後、写真はどうなったの?」

歌織被告「返してもらったものは処分しました」

検察官「ということは全て無くなったということ?」

歌織被告「そう思っていましたが、(その後)彼から逃げようとしたとき、彼は『まだあるんだ』と言っていた。彼がいないときに部屋で写真を探しました。彼に写真を返してもらわない限り、(2人が住んでいた)あの家には写真がある。逃げたいが、写真を返してもらうまでは家を出られない。探す、見つからないの繰り返し。彼は私の友人の住所も知っていて、私が逃げたら友人に危害を加えると言ってきた」

検察官「努力したが見つけられなかった?」

歌織被告「遺体をしまったクローゼットには使わないものを入れていて、(入っていた)ものを出して遺体をしまった。その時に(クローゼットから取り出したものの中から写真を)見つけました」

検察官「その写真は?」

歌織被告「見つけた時点で、あのときの部屋にごみ袋がいっぱいあったんで、どれかに入れて捨てた。下半身を一番うしろの、手近にあった袋をつかんでいれたが、写真をどこに捨てたっけと思って、ごみ袋を探したが見つけられなかったので、『下半身の袋にもしかしたら写真があるのか』と思って、心配で心配で」

検察官「その袋は見たのか?」

歌織被告「そんなものは見ていない。ヤだと思って」

歌織被告は、「ヤだ」と発言したところで、嫌悪感を表すように手を空中で振り払うようなしぐさをした。

公判は午後0時を2分回った時点で終了。次回は3月24日午前10時から、2人の鑑定人に対する尋問の続きが行われる予定だ。

⇒第11回公判