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(2)幻覚「変なヤツと思われたくなくて言えなかった」…検察官は疑念の目

歌織被告の友人の証人尋問について河本雅也裁判長の報告が続く。弁護人が行った尋問部分の報告であるため、歌織被告に有利な証言が多い。

裁判長「弁護人が『歌織被告から公正証書や慰謝料を取ってやるという話を聞いたことがあるか?』という問うと、証人は『ない』と答えた。また、『(祐輔さんに)マンションを買わせて自分のものにするという話を聞いたことあるか?』という問いにも『ない』と答えた。要旨は以上の通りだ」

裁判長は、証人尋問の報告を終えると、「続いて、被告人に質問したい」と傍聴席から見て法廷の右側に座る歌織被告の方を向いた。歌織被告は口元に手をやり、目線を足元にやったまま、ゆっくりと証言台に座った。長い髪をかきあげ、正面の裁判長の方を向く。

裁判長「一昨日の法廷で両鑑定人が幻覚や幻視についての話をしていたが、これらの話をあなたは被告人質問でしていなかった。まず、幻覚や幻視の話を鑑定人にしたことは間違いないですか?」

歌織被告「間違いありません」

裁判長「今まで弁護人などに話したことがありますか?」

歌織被告「取り調べの段階で、警察官に話したことがあります」

裁判長「そうしたら?」

歌織被告「話をすると、『私(歌織被告)の中に罪の意識があったからそう見えるだけだ』『彼(祐輔さん)自身が成仏していなかったから見えたのだ』と言われました」

裁判長「それは警察から? 検察から?」

歌織被告「警察からです」

裁判長「検察からは言われたのか?」

歌織被告「警察ほどは言われなかったが、検察では、最初から金のことなどを一方的に言われるばかりだった」

裁判長「弁護人には話したのか?」

歌織被告「若干話したことはあるが、具体的にはない」

裁判長「あなたを弁護する弁護人にそういう話をするのは大事なことだと思うが、なぜ話さなかったのか?」

歌織被告「弁護人がついたのは逮捕されてから1カ月くらいたったころだった。その間、警察からも『ウソだ』『一時的な錯覚だ』と怒られるだけだった。警察で言われたみたいに、自分の弁護人から変なヤツと思われたくなかった」

「犯行時は心神喪失状態だった」という鑑定の根拠にもなった幻覚。裁判長は、自身に有利なはずのこの証言をしてこなかった理由を歌織被告にただした。

裁判長「法廷で弁護人から聞かれたときもその話はありませんでしたね。同じ理由からですか?」

歌織被告「正直言って、私が間違いなく犯人だから…。申し訳ないが、鑑定のためというか…(鑑定では)私が今まで話しにくかったことを話した。事件の鑑定がどうのこうの、鑑定が大切だという感覚では話していない。(これまでの法廷では)正直言って、話しにくい内容もあったので、話せなかった」

裁判長「鑑定人は『朦朧(もうろう)状態だった』と言っていたが、祐輔さんの殺害から1カ月近くも朦朧という感覚はあったのですか?」

歌織被告「朦朧という言葉が私に当てはまっているかはわからない」

裁判長「その(祐輔さん殺害)後、あなたは園芸用土やブルーシート、ゴミ袋を買ったり、捜索願を出したり、布団マットを実家に送ったり、祐輔さんの父に祐輔さんの名前をかたってメールを送ったりいろいろしている。はっきりとしたことをやっているが、(自分がしたことを)分かっていてやったのか?」

歌織被告「わかっていました」

裁判長は、ここで質問を終えた。弁護人からは特に質問はなく、検察官が『では』と言って立ち上がった。歌織被告は検察官の方に体を向けた。

検察官「これまでの証言と、鑑定人に話したのと違う内容を確認したい。以前、被告人質問で殺害時の状況を話したよね?」

歌織被告は、答えの代わりに、少しだけ顔を上向け、検察官を見やった。

検察官「『ワインボトルを持ってリビングに行った』と話した。覚えているか?」

歌織被告「…(うなずく)」

検察官「『祐輔さんの頭の方に座った。座り方は正座のようだった』と証言した。覚えているか?」

歌織被告「はい」

検察官「『その後、両手に持ったワインボトルを肩の辺りから振り下ろした』と話しているが、間違いないか?」

歌織被告「はい」

検察官「いつワインボトルを肩の辺りに振り上げたのか?」

歌織被告「…」

沈黙する歌織被告に、裁判長が「わかりにくい質問かもしれないね」と助け舟を出した。検察官は、質問を言い直す。

検察官「一連の行動の中で、あなたはキッチンからリビングに行く間、ワインボトルを片手に持った? 両手に持った?」

歌織被告「キッチンからリビング? …鑑定人の先生にも話したが、キッチンの壁によりかかったら、視界にワインボトルが入ってきた。見えたのでそれを取って…どうやって…両手か片手か覚えていない」

それまで証言台に行儀良く座っていた歌織被告は、ワインボトルを持ち上げる動作を再現しようとしたのか、左手を上下に動かしながら証言を続けた。

検察官「どの時点で振り上げたのかも覚えていない?」

歌織被告「そうですね(覚えていないの意)」

検察官「キッチンから出て、寝ている祐輔さんの枕元に座ったことは覚えているか?」

歌織被告「一連の行動自体もよく覚えていない」

検察官「それも覚えていない? ふーん…」

前回の被告人質問では「ワインボトルを持ってリビングの方へ行った。リビングに行って、彼を殴った」と証言していた歌織被告。今回はそれを『覚えていない』と証言する歌織被告に、検察官は疑惑のまなざしを向けた。

⇒(3)そのとき「地球上の全エネルギーが。体中から汗が」