(3)豪憲君…憎たらしい、うらやましい、ねたましい−張り裂けそうに

弁護人「スプレーはどう入手した?」
鈴香被告「だいぶ前に通信販売で防犯用に買った」
弁護人「だいぶ前とは?」
鈴香被告「最低でも3年から4年前だと思う」
弁護人「5月16日には、スプレーを持って子供を探した?」
鈴香被告「はい」
弁護人「さらえそうな子はいた?」
鈴香被告「いなかった」
弁護人「どういう状態?」
鈴香被告「小さい子たちは何人かで固まって帰っていたし、親がついているというような形で…。とてもさらえそうな子供はいなかった」
弁護人「それで(豪憲君が殺害された)5月17日を迎える。朝から行動を説明してほしい」
鈴香被告「朝起きたら弟が起きてきて、『DVDを返しに行くけど一緒に行かないか』といわれ、ほしい本があったので一緒に行くことにした。DVDを返したあと、雑貨屋で宝くじを買い、本を買った。弟はDVDを借りていた。そのあと別の店で弟はさらにDVDを借りようとしたが、クーポン券がなかなかダウンロードできなくて、そこで1時間から1時間半ぐらい時間をつぶして、直売所に行った。彩香の祭壇に飾る花束と、ドライフラワー用にしようとスターチスという花を買った。そのあと実家に戻ったが、弟にネコのトイレ用の砂を買ってくるよう言われ、100円ショップに行きながら藤里の自宅に行った」
弁護人「自宅に持っていったのは?」
鈴香被告「ネコのトイレ用の砂と、ドライフラワー用に買った花と、普段持って歩くカバンを持っていった」
弁護人「何しに町営住宅へ?」
鈴香被告「ドライフラワーを作ろうと思った」
弁護人「実際に作った?」
鈴香被告「洗濯ばさみに逆さにつるすだけなので、すぐ終わった」
弁護人「その後、あなたは藤里のスーパーに行っているが、何時ごろか?」
鈴香被告「2時か2時半ごろ」
弁護人「何を買った?」
鈴香被告「朝軽く食べてから何も食べていなかったので、おにぎりと揚げだし豆腐を買った」
弁護人「食べたか?」
鈴香被告「はい」
弁護人「食べ終わったのは?」
鈴香被告「3時ぐらいと思う」
弁護人「ここまでの話では、子供を探していないようだが?」
鈴香被告「ごはんを食べた後、1度町のほうに出たと思う」
弁護人「帰ったのは?」
鈴香被告「その日は携帯電話を持って行くのを忘れたので正確な時間は忘れたが、5分から10分ぐらいで戻ってきたと思う」
弁護人「豪憲君を見つけるまでどんな行動を?」
鈴香被告「彩香の部屋で、彩香の大好きだったぬいぐるみを押入れに飾っていたので、眺めて座っていた」
弁護人「何を考えていた?」
鈴香被告「何も考えていなかった」
弁護人「それから?」
鈴香被告「目の端に、1人で歩いてくる豪憲君が見えた」
弁護人「視界の端?」
鈴香被告「はい」
弁護人「どっちの?」
鈴香被告「左側」
弁護人「体はどこに向いていた?」
鈴香被告「斜めを向いて、彩香の部屋のドアの方を向いていた」
弁護側は検証調書を鈴香被告に示しながら、体の向きを細かく確認した。
弁護人「豪憲君を見つけてどうした? どう思った?」
鈴香被告「豪憲君にも何か(遺品を)もらってもらおうと、家の外に出た」
弁護人「何かとは?」
鈴香被告「彩香とよくキャラクターのカードで遊んでいたので、何枚かをもらってもらおうと思った」
弁護人「声をかけた?」
鈴香被告「はい」
弁護人「何て?」
鈴香被告「『豪憲君、あのね、彩香の思い出に何かもらってほしいんだけど』と」
弁護人「それで?」
鈴香被告「豪憲君は『はーい』と私の方へ歩いてきた」
弁護人「それで?」
鈴香被告「寄ってきたので、『入って』と言って、家の中のほうへ豪憲君を誘った」
弁護人「豪憲君は家に入った?」
鈴香被告「はい」
弁護人「何が目に入った?」
鈴香被告「帽子」
弁護人「どんな帽子?」
鈴香被告「黄色い、1年生がかぶる帽子」
弁護人「思ったことは?」
鈴香被告「彩香が保育園時代に4年間かぶり、1年生でもう1年かぶっていた。すごくかぶっている印象が強かった。なんで彩香はここにいないんだろう、と思った」
弁護人「それだけ?」
鈴香被告「彩香はいないのに、なんで豪憲君はこんなに元気なんだろうと」
弁護人「それからどう思った?」
鈴香被告「切なくて…うらやましいというのと…」
ここで鈴香被告は約30秒間、絶句した。
鈴香被告「…憎たらしいという気持ち。うらやましい、ねたましい、そういう気持ちの張り裂けそうな気持ちになった」
遺影を持って傍聴している豪憲君の母はむせび泣き、何度も涙をぬぐった。