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(20)「自供経緯」「取り調べ実態」−検察、矢のごとくの“反攻”

検察官「(検事の調べに対し)豪憲君をどこで見つけたと答えたか?」

鈴香被告「彩香の部屋と答えた」

検察官「最初『彩香の部屋で倒れているのを見つけた』と言わなかったか?」

鈴香被告「そうかもしれない」

検察官「それで、『怖くなって遺体を捨てた』と答えたのか?」

鈴香被告「はい」

検察官「弁解内容を聴かれる中で、あなたは最初は自分が何時ごろに帰ってきたとか言っていなかったけど、聞かれるうちに答えるようになって言ったのか?」

弁護人「それはいつのことを言っているのか」

検察側に対し、弁護側から補足を求める質問が出た。

検察官「ああ、豪憲君の殺害を認める前の段階の取り調べで」

鈴香被告「あまりにもたくさんの取り調べを受けたので、覚えていない」

検察官「前後の行動から(帰宅した)時間を『何時くらい』と答えるうちに、時間に矛盾があることを追及されなかったか?」

鈴香被告「…」

裁判長「どうですか」

鈴香被告「覚えていない」

検察官「あなたが豪憲君の殺害を認めたのは、罪をなすりつけた人のアリバイが証明されたり、説明の矛盾点を突かれたりして、認めざるを得なくなっていって、認めたんじゃないのか?」

鈴香被告「…」

裁判長「どうですか。質問の意味は分かりますか?」

鈴香被告「分かる」

裁判長「検察側は『あなたの話に矛盾があるから、認めたのでは』と言っている。どうなのか?」

鈴香被告「うまく言えないが…。自分の中で、きちんと話できるかどうか迷っていたのと…。きちんと話せるようになるまで、時間がかかったのは事実」

鈴香被告は、詰まりながら言葉を絞り出した。

検察官「自分が話したことの矛盾点を追及されたことを、覚えていないのか?」

鈴香被告「あまりにも取り調べの回数が多くて、最初のころのことを覚えていない」

検察官「あなたは○○検事(実名)に、第一声で『バカヤロー』と怒鳴られたと言っているが?」

鈴香被告「とても印象的だった」

検察官「ほかに怒鳴られたことはあったか?」

鈴香被告「ない」

検察官「イスに座るか座らないかのうちに怒鳴られたのか?」

鈴香被告「いえ、座ってから」

検察官「怒鳴られたのは、1回だけだったのか?」

鈴香被告「それだけで十分だった」

検察官「検事はあなたの弁解を聞かないで、突然怒鳴ったと?」

鈴香被告「はい」

検察官「不思議なことしたもんですな…。そして、あなたの弁解録取書を作った。引き続き、取り調べをした?」

鈴香被告「はい」

検察官「その時に体調が悪くなり、イスからずり落ちそうになったのを付き添いの警察官に座り直させられた?」

鈴香被告「はい」

検察官「休みたいとは言わなかったのか?」

鈴香被告「私は人から『大丈夫か』と聞かれても、なるべく『大丈夫』と答えるようにしているので言わなかった」

検察官「検事には何と言われたのか?」

鈴香被告「まっすぐ前を見なさいと」

検察官「具合が悪いのか、とは聞かれなかったか?」

鈴香被告「なかったと思う」

検察官「どのくらい連続して聞かれたのか?」

鈴香被告「覚えていない」

検察官「記録には、弁解録取書の手続きを午後3時からしたとある。夜まで取り調べしたのか?」

鈴香被告「覚えていない」

検察官「検事の取り調べの内容を、弁護人に話さなかったか?」

鈴香被告「覚えていない」

検察官「翌日、弁護側から検察に抗議書が送られてきた。弁護人から聞かされなかったか?」

鈴香被告「覚えていない」

検察官「送られてきているのだが?」

鈴香被告「…」

検察官「(抗議書が)提出されていて、6月6日の弁護人との接見で『6月5日の検察の調べで、具合が悪いので休ませてほしいと言ったのに休ませてもらえず、座り直させられて取り調べが続いた』という内容だが、覚えていないか?」

鈴香被告「覚えていない」

検察官「最低でも、2時間に1度は休憩を要求するという内容なのだが、覚えていないか?」

鈴香被告「覚えていない」

検察官「実際には、この日はあなたの弁解録取書を作った後、午後3時から取り調べに入って、午後4時53分に休憩に入った。たっぷり休みを取ってもう一度取り調べに入ったが、8時13分に終えている?」

鈴香被告「1日1日、(取り調べが)何分までだったかなんて覚えていない」

検察官「でも、今の話で事実と違うのは分かりましたよね?」

鈴香被告「覚えていない」

検察官「あなたは(取り調べの休憩に関して)うそをついていたのではないか。うそをついていなければ、このような抗議書が来るはずがないのではないか?」

鈴香被告「…」

裁判長「検察側の趣旨は、あなたは弁護人にうその話をしたことはないか、ということだが」

鈴香被告「…」

鈴香被告はまっすぐ前を向き、質問には答えなかった。

⇒(21)ついに逆ギレ「検事さんみたく賢くない」にらみつけ