第34回公判(2012.3.12) 【論告求刑】
(7)「更生の意欲や可能性も皆無」検察側の死刑求刑にも無表情貫く
首都圏の連続殺人事件で練炭自殺に見せかけ男性3人を殺害したとして、殺人などの罪に問われた木嶋佳苗被告(37)に対する裁判員裁判(大熊一之裁判長)は、休憩をはさみ、検察側の論告が再開された。
検察側は、この日も3つの殺人事件を中心に裁判員に丁寧に説明。最後に木嶋被告が問われている詐欺や窃盗などの罪についての補足や、3つの事件の共通点を論じた後、どのような刑を科すのが相当かを述べる。
検察官「本件はどの事件も直接証拠や被告の自白はなく、目撃者もない。このため、間接的な証明で立証するしかない」
「被告人が犯人でなければ、合理的説明が困難な事実関係が、本件では多数ある。埼玉、東京、千葉の各事件は、いずれも被告が購入したのと同じ練炭とコンロが使われ、一酸化炭素中毒で被害者は亡くなっており、その特殊な手口から被告人が犯人であると認めることができる」
検察官は続ける。
検察官「これまで公判で明らかにされた、さまざまな証拠によって、3人は自殺や事故ではなく(被告によって)殺害されたことは間違いない。犯人は被告と証明されている」
3つの殺人事件以外の詐欺や窃盗についても説明を加える。
検察官「被告人は、いずれも被害者に自分の身分や職業についてうそをついており、これらが露見すれば関係が破綻(はたん)し、被害者との交際を続けることができなくなる。被告人は、仕事をせず、ぜいたくな暮らしをして経済的に困窮していたことから、婚活サイトに登録し、男性から多額の金の要求を繰り返しており、相手の男性と結婚するつもりがなかったことは明らかで詐欺、詐欺未遂罪は成立する」
検察官は一気に説明した後、また休憩に入る。再開後、検察官はいよいよ量刑に踏み込み始めた。
検察官「被告人にいかなる刑を科すべきかについて述べたいと思います」
「極刑については、最高裁の永山事件がひとつの基準になっている。それは犯行の罪質、動機、態様、執拗(しつよう)性、結果の重大性などがその判断材料となっているが、何の落ち度もない3人を殺害した被告の犯行は悪質で、情状酌量の余地はみじんもない」
「遺族が厳罰を望んでいることや社会に与えた影響も大きい」
検察官は続ける。
検察官「逮捕されるまでぜいたくな暮らしを続け、いまだにすべての被害者に対して一切弁済していません」
「さらに、公判廷においても、亡くなった被害者を侮辱、愚弄(ぐろう)する発言を繰り返し、遺族感情を踏みにじった。反省の態度も更生の意欲や可能性も皆無だ」
そして、検察官は結論づけた。
検察官「死刑に処するのが相当だと思います」
弁護側の席に座る木嶋被告に傍聴席の視線が一気に集中した。だが…。木嶋被告は無表情を貫いた。