第3回公判(2010.10.21)

 

(5)クリスマスには「Wiiがいい」と言われてプレゼント お返しは「カード入れ」

江尻美保さん

 東京・秋葉原の耳かき店店員、江尻美保さん=当時(21)=ら2人を殺害したとして、殺人などの罪に問われた元会社員、林貢二被告(42)の裁判員裁判。江尻さんが秋葉原店のほかに新宿東口店でも働くようになり、その経緯などについて、秋葉原店の店長Xさん(法廷では実名)とのやりとりなどを中心に男性弁護人が質問していく。

弁護人「(江尻さんと電車で店まで)一緒に移動できないか考えていたようですが、(電車の経路について)分かったのはいつですか」

被告「11月28日です」

弁護人「分かってからどうしましたか」

被告「同じ所に同じような経路で行くと聞いて、じゃあ一緒に行こうかと思いましたが、『一緒に電車に乗るのはルールでだめだから行けない』と(江尻さんから)言われました」

弁護人「納得しましたか」

被告「納得できなかったです」

 林被告は前を向きながら淡々と男性弁護人の質問に答えていく。

弁護人「店の外では会えないことは知っていましたか」

被告「知っていました」

弁護人「11月28日以前から知っていた?」

被告「はい」

弁護人「電車で一緒に移動するのは、外で会うことと一緒とは思わなかったのですか」

被告「どうせ電車で一緒になるから、外で会うこととは別の意味と思いました」

弁護人「美保さんはどう言いましたか」

被告「それでもだめだ。店長がだめだといったと言っていました」

弁護人「それで?」

被告「連れ出すと誤解されているのでないかと思い、店長の所に直接行き、そういう意味ではないと言いました」

弁護人「店長は何と言っていましたか」

被告「『私は分かりますが、会社の規則でだめなんです』と言っていました」

弁護人「それで?」

被告「会社の規則なら仕方がないと言って帰りました」

弁護人「結局どうなりましたか」

被告「(江尻さんと店には)別々に行きました」

 若園敦雄裁判長が「いったん切りましょう」と15分間の休廷を告げた。

 午前11時21分に再開。林被告はうつむきながら入廷し、証言台に座った。

 若園裁判長は審理の再開を告げるとともに、検察官が証拠請求していたショルダーバッグについて、「やむを得ない必要性は認められないが職権で採用します」と述べた。

 男性弁護人は、林被告が江尻さんが勤務する店に通っていた頻度などを説明。その後、林被告と江尻さんが交換したプレゼントについて質問していく。

弁護人「お菓子を持って行くことがありましたか」

被告「はい」

弁護人「どんなお菓子を持って行っていたのですか」

 林被告が少し考え込むような仕草をするのを見て、答えを待たずに弁護人が質問を続ける。

弁護人「具体的にどのようなお菓子ですか」

被告「ケーキとかチョコレートです」

弁護人「クリスマスとホワイトデーにプレゼントしましたか」

被告「はい」

弁護人「一方的にプレゼントをしたのですか」

被告「違います」

 これまで静かに答えていた林被告が一瞬、声のトーンを上げた。

弁護人「プレゼントをするきっかけは?」

被告「(江尻さんに)クリスマスにプレゼント交換をしたいと言われました」

弁護人「美保さんから?」

被告「はい」

弁護人「これまで(女性に)プレゼントをしたことは?」

被告「ないです」

弁護人「(クリスマスの)プレゼントには何をあげましたか」

被告「(任天堂のゲーム機の)『Wii』というゲームです」

弁護人「林さんが選んだ?」

被告「美保さんから『Wiiがいい』と言われて買いました」

弁護人「美保さんからは何をもらいましたか」

被告「カード入れをもらいました」

 男性弁護人は、プレゼントの値段などについて質問した後、ホワイトデーのプレゼントについて質問を変えた。

弁護人「バレンタインデーは何をもらいましたか」

被告「チョコレートをもらいました」

弁護人「どういうチョコレート?」

被告「手作りのチョコレートです」

弁護人「林さんだけに特別なことはありましたか」

被告「たくさんの知り合いにあげると聞いていましたが、私のチョコレートには、私がお酒を飲めないことを知っているので、お酒を入れないで作ったと言っていました」

弁護人「3月14日のホワイトデーは?」

被告「ちょっと前に何がいいか直接聞いて、アクセサリーがいいと言われました」

 林被告はプレゼントを選んだ経緯を説明。裁判員は静かに聞いている。

弁護人「プレゼントは江尻さんから指定されたのですか」

被告「はい。実物の写真を携帯で見せられました。ちょっと高いかもしれないから、別のものを別の店に探しに行くと言っていましたが、そこまでしなくてもいいと言いました」

弁護人「結局それを買ったのですか」

被告「はい」

 林被告は抑揚のない口調で、男性弁護人の質問に答えた。

⇒(6)「体に触ってくるのが嫌」「出入り禁止にした」他の客の愚痴を被告に漏らす被害者