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初公判(2010.10.19)

 

検察側冒頭要旨3 「やめて」と叫ぶ被害者に「この野郎」 強固な殺意、残虐

林被告

犯行状況

 (1)凶器を準備し、江尻さん方に押し入った状況

 〈1〉被告は8月3日朝、江尻さん殺害を決心した後、ペティナイフと果物ナイフの他に凶器になりそうな物を探し、工具箱のハンマーも使うことにしました。被告はこれらをショルダーバッグに入れ、電車で江尻さんの家に向かいました。

 〈2〉被告は駅で電車を降り、歩いて江尻さんの家のそばまで行きました。江尻さんの家に鍵が掛かっているか確認しようと玄関に近づきましたが、周囲に人がいたので2回通り過ぎ、タイミングを見計らって、午前8時41分ころ、再度玄関に近づいて右手で扉を開け、鍵が掛かっていないことを確認しました。

 そして、被告はいったん扉を閉め、その場を離れて気持ちを落ち着けてから、約10分後の午前8時52分ころ、通行人がいないのを見計らい、ショルダーバッグのチャックを開け、右手でいつでも凶器を取り出せるようにして、左手で玄関扉を開けて江尻さんの家に押し入りました。

 (2)被害者の鈴木さんを殺害した状況

 〈1〉被告は1階の玄関から押し入りました。被告が玄関に入り扉を閉めた後、靴を脱いで上がろうとしたところ、1階8畳和室にいた鈴木さんに見つかり、声を上げられました。

 被告は鈴木さんに叫ばれると江尻さんを殺せなくなる、鈴木さんを静かにさせるには殺すしかないと思い、鈴木さんの殺害を決意しました。

 〈2〉被告は座っていた鈴木さんを押し倒して馬乗りになると、片手で首の辺りを押さえ付けるなどして身動きできないようにし、ショルダーバッグから取り出したハンマーで、頭を5回殴りつけました。さらに片手で首の辺りを押さえたまま、首を目掛けて果物ナイフを16回以上振り下ろして、首や顔面などをめった刺しにしました。

 〈3〉鈴木さんは動かなくなり、頸(けい)部刺創による右内頸静脈切破に基づく失血により、即死しました。

 (3)江尻さんを殺害した状況

 〈1〉被告は鈴木さんを殺害した後、江尻さんを殺害するためにすぐに2階に上がりました。2階の各部屋のふすまを順に開けて、江尻さんの部屋を探し当て、ペティナイフを握り、ベッドで寝ている江尻さんに馬乗りになろうとしました。

 江尻さんは被告に気づいて上半身を起こして抵抗し、2人はベッドの下に転がり落ちました。江尻さんは「やめて」と何度も叫び、被告のペティナイフを必死でつかもうとして抵抗しましたが、被告は江尻さんに覆いかぶさり、「この野郎」などと怒鳴りながら、首を狙い、ペティナイフで少なくとも5、6回突き刺して気管を断裂させるなどしました。

 〈2〉被告が江尻さんを刺している最中、江尻さんの母親が異変に気づき、続いて江尻さんのお兄さんも気づいて廊下に出てきました。

 被告は江尻さんの家族に見つけられたことに気づいて廊下に出ましたが、母親とお兄さんは、被告のすきをついて階段を下り、裸足で玄関から飛び出して周囲に大声で助けを求めました。

 〈3〉被告は江尻さんの家族に見つかり、江尻さんはそのまま死ぬと思われたことから、逃げようと考え、1階に下りて、血だらけの手を洗ったり、血の付いたポロシャツを脱ぎ捨てたりしました。

 〈4〉一方、江尻さんは最後の力を振り絞って廊下まで出ましたが、力尽きて倒れました。

 〈5〉被告は再度2階に上がり、江尻さんが廊下で身動きせずに倒れているのを見て、死亡したと思い、逃げようとしましたが、通報を受けて駆けつけた警察官に1階で現行犯逮捕されました。

 〈6〉江尻さんは気管断裂による窒息および頸(けい)部刺創による出血性ショックから心肺停止状態に陥り、いったん蘇生(そせい)したものの、回復せず、平成21年9月7日午前5時14分ごろ、搬送先の病院で、低酸素脳症の傷害により亡くなりました。

争点

 被告が、江尻さん方に侵入し、江尻さんと鈴木さんを殺害した事実、ペティナイフと果物ナイフを携帯していた事実については、検察官と弁護人の間に争いはありません。今回の事件の争点は、被告に対し、どの程度の重さの刑を科するのが相当かという量刑になります。

特に考慮すべき情状

 最後に、情状、つまり被告の刑の重さを決めるに当たって重要となる事情について説明します。検察官は次にあげる6つの事実が、被告の罪の重さを決めるに当たって特に考慮すべき重要な事実だと考えています。

 1点目は、殺意が強固で、犯行は極めて執拗(しつよう)、残虐であるという事実です。具体的には、被告が鈴木さんに対して、馬乗りになって、ハンマーで頭を多数回殴りつけた上、果物ナイフで首や顔を強い力でメッタ刺しにするなど、激しい攻撃を加えたこと、鈴木さん殺害後、冷然と計画通り江尻さんを殺害したこと、江尻さんに対して、ペティナイフで、首などを強い力で繰り返し刺し、気管を切断するなど激しい攻撃を加えたことなどを証拠により明らかにしていきます。

 2点目は、犯行が大胆かつ計画的なことを示す事実です。具体的には、被告がナイフ2本とハンマーを準備したこと、江尻さんが在宅している時間を狙って犯行に及んだこと、無施錠であることを確認して玄関から侵入したこと、江尻さんの家族が屋内にいることを認識しており、障害を排除してでも江尻さんを確実に殺害しようと考えていたことなどを証拠により明らかにしていきます。

 3点目は、結果が重大であることを示す事実です。本件犯行により2名の女性の尊い生命が奪われたこと、被害者両名の肉体的苦痛は大きく、恐怖や絶望感は想像を絶するもので、その無念さは察するに余りあること、江尻さんの母親の精神状態が不安定になるなど、遺族に与えた影響も大きいことなどを証拠により明らかにしていきます。

 4点目は被害者に落ち度はなく、犯行の動機が身勝手で自己中心的であることを示す事実です。具体的には、被告が一方的に江尻さんに恋愛感情を抱き、それが受け入れられなかったことから殺害を決意したこと、耳かき店を出入り禁止になったのは、被告自身の行動に原因があったこと、江尻さんの被告への対応に何ら問題はなく、江尻さんに落ち度はないこと、江尻さん殺害の邪魔になると考えて、たまたま自宅に居合わせただけの鈴木さんを殺害したことなどを証拠により明らかにしていきます。

 5点目は、ご遺族の処罰感情が峻烈であることです。

 6点目は、社会的影響の大きさを示す事実です。具体的には、今回の事件が近隣住民や地域社会に大きな不安と恐怖を与えたことを明らかにしていきます。

 検察官は、このような情状に関する事実についても、証拠により証明していきます。

⇒弁護側冒頭要旨1 「地道で真面目な社会人」…胸のうちで葛藤