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初公判(2010.10.19)

 

(3)「馬乗りになってハンマーで殴打」「ナイフで首をめった刺し」… 検察官の指摘に被告は深いため息

犯行現場

 引き続き検察側の冒頭陳述が続く。裁判員の方を見てゆっくりとした口調で話す検察官。耳かき店店員、江尻美保さん=当時(21)=と祖母の無職、鈴木芳江さん=当時(78)=を殺害した元会社員、林貢二被告(42)は微動だにせず聞き入っている。

検察官「被害者の家に侵入し、殺害した事実について、検察官と弁護人の間に争いはありません。被告人にどのような処罰が相当か、量刑が争点になります」

 今回の公判で何が争われているのかを丁寧な言葉で説明する検察官。

検察官「最後に情状となる事情について6点説明します」

 検察官は裁判員が分かりやすいようポイントを6つにまとめて説明する。

検察官「1つ目は殺意が強固で残虐であることです。被告が芳江さんに馬乗りになってハンマーで頭を数回殴打し、果物ナイフで首をめった刺しにする激しい攻撃を加えた後、美保さんを殺害しようと、ペティナイフで首を数回刺すなど、激しい攻撃を加えたことです」

「続いて2点目は犯行が大胆かつ計画的なことです。ナイフ2本とハンマーを用意していたこと、美保さんの在宅時間を狙っていたこと、無施錠を確認したこと、家族が屋内にいることを確認した上で、美保さんを殺害しようとしたことです」

「3点目は結果の重大性です。2人の尊い命が奪われたこと。2人の恐怖、驚愕(きょうがく)、無念さは察するに余りあります。遺族に与えた影響も甚大です」

「4点目は被害者に落ち度はなく、動機は身勝手で自己中心的なものです。被告人は美保さんに対し、一方的に恋愛感情を抱き、拒否され殺意を抱いた。被告人の出入り禁止は被告人の行動に問題があったからで、美保さんにはなんの落ち度もありません。芳江さんもまったく落ち度はありません」

「5点目は遺族の処罰感情が峻烈(しゅんれつ)なことです」

「6点目は社会的な影響の大きさを示す事実です。近隣住民や地域社会に大きな不安と恐怖を与えました」

「これらの情状についても検察官は証拠により証明致します。裁判員の皆さんは今回の事件がどのような事件かを知った上で、被告人にどのような刑が科せられるのが相当か判断していただきます」

 検察官の冒頭陳述が終わり、15分の休憩に入った。

 休憩が終わり、林被告が入廷。うつむいたまま席に座る。手錠が外されると1つ大きなため息をついた。

 続いて弁護側の冒頭陳述だ。男性弁護人が席を立ち上がり、裁判員の前に立ち、冒頭陳述の読み上げを始めた。

弁護人「被告人は事件直後から後悔し、深い反省をしています。毎日、美保さんと芳江さんのことを思いだして、ご遺族にあてた手紙を書いています」

 林被告は、ため息をついたり、舌で唇をなめたりと落ち着かない様子だ。

弁護人「社会人としてまじめに生活していた被告人がどうして本件のような犯罪を起こしてしまったのか。それは美保さんとの関係にさまざまな経緯があり、冷静ではなくなったことで、本来の人格とは違った精神状態にありました。そのような状況に至る経緯について大きく5点にまとめました」

 法廷の壁に設置された大型モニターに5つの項目が個条書きされた文章が映し出される。

弁護人「1つ目は被告人の普段の姿についてです。子供のころから大きな声を出したり、怒りをあらわにしたこともなく、20年間1つの職場で地道にまじめに仕事を続けてきました。28歳から1人暮らしを始めましたが、暮らしはまじめそのものでした。耳かき店に通うようになった後も仕事に支障のないよう平日の月曜から木曜に店に行くようなことはありませんでした。被告人の普段の生活にトラブルはまったくなかったことを注意していただきたいと思います」

 林被告のまじめな性格について弁護人は強調する。

弁護人「2点目は、美保さんとの人間関係を作り上げていった経緯です。被告は平成20年2月ごろから耳かき店に週末に1日1時間程度通うようになり、増えても土日のみでした」

 林被告は当時のことを思いだしているのか、苦しい表情を浮かべる。

弁護人「平成20年7月15日の美保さんの誕生日に被告人が秋葉原で美保さんに出会ったことで、美保さんは待ち伏せされたと思いました。被告人は美保さんに疑われたことを知り、店に通うのをやめました。その後、美保さんがブログ上で被告人に対し、『元気かな?』とメッセージを送ったことで前のように店に通うようになり、その際に、待ち伏せはしていないと美保さんの誤解を解いたことで、2人の距離は縮まりました」

 江尻さんとの関係について順を追いながら説明する弁護人。林被告は唇をかんだり、動揺しているような表情を浮かべ、聞いている。

弁護人「被告人は平成20年8月下旬からは毎週土日に加え、金曜の夜も閉店するまで店にいました。11月の終わりからは美保さんが新宿東口店でもアルバイトを始めました。被告人が指名客として行くことを約束したからです。平成20年の年末年始は12月27日から1月4日の9日間連続で店に通いました」

 2人の関係が親密だったことを強調する弁護人。

弁護人「平成21年3月には、美保さんは土日の午後5時以降は被告人だけの時間として空けていました。利用時間が増え、店からも特別扱いを受けるようになりました。美保さんとの時間は心地よい安らげる場所と思っていました。美保さんや店から大切な客と思われ、美保さんと信頼関係ができていると思っていましたが、4月5日の後に突然、美保さんから指名を拒否されました」

 弁護人は2人の関係が徐々に変化し、事件に向かう経緯について説明する。

弁護人「3つめは来店を拒否され、被告は困惑し、苦しい葛藤(かっとう)があり、葛藤が極限になり事件を起こすに至りました」

 当時のことを思いだしてか、林被告は、眉間(みけん)にしわを寄せ、うつむいた。

弁護人「4月4日に、店には内緒で翌日の午後10時の営業時間終了後に一緒にファミレスで食事の約束をしました。美保さんは『明日は何時に来る』と言っていました。4月5日に被告人が店に行くと、美保さんは体調が悪く、話もできないような状態でした。心配した被告人は『早く帰った方がいいよ』と言いましたが、美保さんは『早く帰ると店の売り上げが落ちる』と言いました」

 裁判員は一様に真剣な表情で聞き入っている。

⇒(4)「もう無理です」と拒む被害者に「なぜ会えない」と待ち伏せ 一方通行の思いが惨劇に…