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(2)「被告の記憶にない部分を調書にしたことない」 正当性主張する検察官

男性弁護人が証拠採用された調書を読み上げていく。加藤智大(ともひろ)被告(27)が接見時に語った内容を、弁護人がまとめたもので、いずれも検察官の取り調べ状況について語っている。

弁護人「検察官は(調書の)どうでもいいところは訂正してくれますが、(重要な部分については)私がいくら『違う』『覚えていない』といっても訂正してくれません。いくら訂正を求めても無駄だと思い、あきらめてしまいました」

次に読み上げられた調書では、事件翌月の平成20年7月に行われた検察官の取り調べについて、加藤被告が説明している。

弁護人「取り調べの状況を録画されました。検察官から『(調書で、供述内容と)違うところは訂正されましたよね』と言われました。私は、ずっと取り調べを受けていた検察官に遠慮してしまう気持ちがあり、言い出せず、ちょっと首をかしげただけでした」

この取り調べを録音・録画したDVDは、証拠として前日の第19回公判で再生され、裁判官や検察官も視聴している。加藤被告は調書の内容に不満を持っていたものの、録画された取り調べではそれを言い出せなかったという。さらに別の調書も読み上げられた。

弁護人「検察官に『取り調べに不満がないか』と聞かれ、『不満はない』と答えました。調書の内容が(自分の申告通りに)訂正されないことに、以前から抵抗がありましたが、言い出せず、首をかしげただけでした。訂正されても、表現が変わっただけで内容が変わらないことが不満でした」

加藤被告は首をかしげるという動作で、不満を表現していたようだ。全部で18の調書が読み上げられ、弁護側の説明が終了。村山浩昭裁判長が調書を提出するよう求めた。

村山裁判長はしばらく調書に目を通した後、「乙号証についてですが…」と切り出した。乙号証とは被告人の供述調書のことで、今回の公判では弁護側が不同意としているため、証拠採用が留保されている。

裁判長「昨日、証拠意見書が提出されています。内容としては、従前の主張と同じということでしょうか」

弁護人「はい。そこに被告人質問で出た内容を若干加えています」

弁護側は、検察側が調書の訂正に応じなかったなどとして、一部の調書について任意性を争っている。村山裁判長は、検察官にも意見を求めた。男性検察官が立ち上がり、口頭で意見を述べ始めた。

検察官「弁護人は任意性がないと主張していますが、複数の検察官調書の末尾には、被告の申し立てに基づいて録取された内容が記載されており、検察官が訂正に応じたことが分かります。また、被告は『検察官がどうでもいいところだけ訂正し、重要な部分は訂正に応じなかった』としています。しかし、平成20年6月10日付調書は、殺人罪の枢要である殺意の有無の部分についても訂正しています。被告が『記憶の大部分が欠落している』としている点についても、調書上はそのまま録取されています。検察官が被告の記憶にない部分を調書にしたことはありません」

さらに男性検察官は、録音・録画された取り調べについても言及した。

検察官「4回にわたって実施された録音・録画では、面前口述の際にも検察官が被告の訂正申し立てを受けていることが認められます。また、逮捕翌日の平成20年6月9日以降、被告はほぼ連日、弁護人の接見を受け、アドバイスを受けられる状態にありました。20年10月9日の最後の取り調べでは、検察官に『よく話を聞いてもらいましたし』と感謝の念に近いことを述べています」

最後に検察官は力を込めて、こう結論づけた。

検察官「(調書の)任意性に疑いを差し挟む余地はなく、刑事訴訟法に基づき、取り調べを請求するものであります」

ここで村山裁判長が検察官の主張内容などを確認。すると、男性弁護人が「2点だけ反論があります」と立ち上がった。

弁護人「被告が訂正を求めた6月10日の調書の枢要部分について、検察官が訂正に応じたとありますが…。(訂正後の内容は)『何が何でも殺してやろうと思っていたわけではない。もちろん、死んでもかまわないと思った』という、未必の故意を認定したものでした」

「未必の故意」とは、罪となる事実の発生を積極的に意図したわけではないが、その事実が発生するかもしれないと思いながら、発生しても仕方がないと認めて行動する心理状態のことで、故意の一種とされる。

弁護人「また、録音・録画された取り調べでは、被告が自分から積極的に『訂正してほしい』と言ったわけではなく、訂正内容も検察官が決めています」

村山裁判長は「これでまた反論となるときりがありませんので…」と断った上で、30分間の休憩を取ると告げた。午前11時10分に再開され、加藤被告の供述調書を証拠採用するかどうか、注目の結果が伝えられる。

⇒(3)「母は私を作品のように扱った」 採用決定で読み上げられる調書