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(1)「いま思えば、呆然としていたのかも」 取り調べ当初の思いは…

東京・秋葉原の無差別殺傷事件で殺人罪などに問われた元派遣社員、加藤智大(ともひろ)被告(27)の第20回公判が4日午前10時前、東京地裁(村山浩昭裁判長)で始まった。今公判では、証拠調べが行われる予定だ。

前回まで4日間にわたって行われた被告人質問では、加藤被告が1月の初公判以来、半年ぶりに口を開き、犯行動機や犯行に至る経緯、犯行状況などが生々しく語られたほか、自身の生い立ちや、家庭環境、インターネットの掲示板に深く依存した生活の実態なども詳細に明らかにされた。

一方、これまでの公判では、弁護側が被害者や目撃者など多くの供述調書を不同意としたことから、多数の証人尋問が採用され、これまでに計38人が証人として出廷。審理の長期化の一因ともなっている。このため、被害者の遺族が「傷口に塩を塗るような思いやりのない行為だ」と弁護側の法廷戦術を痛烈に批判する場面もあった。

今公判では、こうした弁護側の不同意で証拠採用が留保されていた加藤被告の供述調書が、採用されるかどうかが決定される。

加藤被告は被告人質問で、犯行動機に関し、捜査段階で供述したとされる派遣切りをめぐるトラブルについて「事件には関係ない」と否定。「インターネットの掲示板で自分に嫌がらせをしてきた人たちに事件を起こすことで本当に嫌がっていることを伝えたかった」などと語った。

弁護側は、捜査段階での供述調書の任意性について争う姿勢を示し、加藤被告も「訂正を申し出たが直してもらえなかった」などと主張。このため、今公判では弁護側が加藤被告との接見時に作成した調書の証拠調べも行われる予定だ。

法廷は、いつものように、東京地裁最大の広さを誇る104号法廷。加藤被告が語る機会は予定されていないが、傍聴席はほぼ埋まっている。午前9時58分、加藤被告が向かって左手の扉から法廷に姿を現した。いつもと同じ黒のスーツに白いワイシャツ姿。頭は丸坊主で眼鏡をかけ、無表情。いつものように傍聴席に向かって一礼し、向かって左手に位置する弁護人席の前の長いすに腰を下ろした。

午前9時59分、村山裁判長が開廷を告げ、弁護側の証拠調べから始めると話した。村山裁判長に促され、男性弁護人が立ち上がった。

弁護人「本日調べていただく弁護側の証拠は18点です。いずれも捜査段階における加藤さんの供述調書について、弁護人が作成した供述調書です」

これらは、加藤被告が検察官や警察官から取り調べを受けた直後に、弁護人が加藤被告から聞き取った内容をまとめたものだ。これを読み上げることにより、捜査段階での供述調書の任意性について疑義があると訴えたいとみられる。弁護人が早口で次々と読み上げていく。

弁護人「私は現在6月8日に秋葉原の路上でKさんという人をナイフで刺した殺人未遂と、ナイフを所持していた容疑で、万世橋警察署に身体拘束されています」

まずは、事件当時の状況についてのようだ。

弁護人「トラックで交差点に進入した後、逮捕されるまでの記憶ははっきりしません。ドーン、ガチャという音と、フロントガラスが割れる感じが見えました。しかし、やってしまったという思いや、目的を遂げたという思いはなかったです。いま思えば、呆然(ぼうぜん)としていたのかもしれません」

「どのくらいスピードが出ていたか分かりません。トラックをどこに止めたのかも分かりません。ナイフをどのように持って、どのように使ったのかも覚えていません」

「たぶん、最初に刺したのは、白っぽい人だったと思います。しかし男性か女性かも覚えていません。交差点に背を向けた青い服を着た人は覚えています。逮捕後、刺された方の中に警察官がいたと聞き、その青い服を着た人が警察官ではないかと思いましたが、当時は分かっていませんでした」

「ほかに白っぽい人を刺した記憶はあります。でも男性か女性かも覚えていません。何人くらい刺したのかも覚えていません。映像として記憶しているのは3人だけです」

調書では「覚えていません」「分かりません」という言葉が連発される。

続いて男性弁護人は、検察官の取り調べの“不当性”を示す供述調書を読み上げていく。

弁護人「私は6月10日に検察官から取り調べを受け、ビデオで撮影されました。私は人を刺したことをよく覚えていないと話そうとしました。しかし、検察官から遮られ、話させてもらうことができませんでした」

「私は6月14日に検察官の取り調べを受けました。このときも検察官に、人を刺したときのことについて、はっきり覚えていないと話しました。しかし、検察官は『近くで見ていたのだから覚えていないわけがないだろう。思いだせ』と何度も言ってきました。また私が話の中で、『「〜と思います』というと、『〜と思います』じゃないだろう。『〜です』だろうと、断定で話すよう強要してきました」

取り調べに対する自らの不満を訴えた調書が読み上げられていくが、加藤被告の表情に変化はない。男性弁護人は調書の読み上げを続けていく。

弁護人「私は6月16日、検察官から取り調べを受けました。警察官らしい人を刺した後、数人の人を刺したという調書を作成されました。しかし、これは記憶にないことです。今回の事件でたくさんの人が刺されたことは、客観的状況から私がやったことで間違いないです。しかし、人を刺したことと人数は、はっきりした記憶がないので、訂正を求めました。しかし、検察官はまったく訂正に応じてくれませんでした」

「また何かにつけて『殺すつもりで』と調書に書かれましたが、私は当時、何も考えていなかったので、何度も訂正を求めても、記憶と異なる供述調書に署名させられました」

これらの内容はおおむね、弁護人の被告人質問で出た内容だ。

⇒(2)「被告の記憶にない部分を調書にしたことない」 正当性主張する検察官