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(3)惨状思いだし涙…女性目撃者の傷、いまも癒えず

事件現場の交差点で救護活動中に加藤智大(ともひろ)被告(27)に刺された男性警察官の証人尋問が終了し、続いて法廷内に遮蔽(しゃへい)措置が取られ、この日2人目の証人が出廷してきた。

裁判長「どうぞそこにお座りください」

証人「あ、はい」

声からは証人は若い女性のようだ。名前や生年月日を村山浩昭裁判長が確認し、宣誓書を朗読するように証人に告げた。証人は正直に答えることを誓い、女性検察官による尋問が始まった。女性検察官ははっきりと法廷に通る声で質問していく。加藤被告は少し下を向いた状態のままだ。

検察官「あなたは平成20年6月8日に秋葉原の現場にいましたね?」

証人「はい」

検察官「あなたが見聞きしたことを聞いていきます。友達と遊ぶために秋葉原に来ましたね?」

証人「はい」

検察官「午後0時25分に駅に到着しましたね?」

証人「はい」

検察官「駅では1人でしたか」

証人「はい」

検察官「駅に着いてから外神田3丁目の交差点に歩いたんですね?」

証人「はい」

検察官「事件直前はどこにいましたか」

証人「交差点を渡っていました」

証人は、検察官にうながされ、法廷の大型モニターに映し出される見取り図に、現場の交差点の横断歩道や自分がいた場所などを示した。事件現場の惨状を目撃した様子が語られ始める。

検察官「信号は確認しましたか」

証人「青でした」

検察官「渡り初めてから何が起きましたか」

証人「目の前の人たちが北の方向に逃げ始めました」

交差点にトラックが突っ込んできたため、交差点にいた人が、北側にある大型電器店「ソフマップ」の方に逃げた様子を証人は説明する。

検察官「あなたはどうしましたか」

証人「何が起こったのか分からず、同じように北に逃げました」

検察官「そこで何が見えましたか」

証人「トラックが突っ込んでくるのが見えました」

検察官「スピードはどうでしたか」

証人「車を運転したことがないので時速何キロとか分かりませんが、すごいスピードでした」

検察官「ブレーキをかけた様子はありましたか」

証人「ありません」

検察官「トラックにひかれている人を見ましたか」

証人「はい。見ました。車輪に横たわっているようにひかれていました」

検察官「車輪の近くに人がいましたか」

証人「自分から見て右側の車輪の下に頭を北側にして人がいたのを見ました」

加藤被告が運転していたトラックにひかれた被害者が、トラックのどこで横たわっていたのかを詳しく質問する検察官。トラックの正面からの写真を提示し、被害者がどこにいたのかを書くよう指示した。

検察官「その後の状況を聞いていきます。逃げた後、交差点の方を見ましたか」

証人「はい」

検察官「人が倒れているのを見たときのあなたの位置を書いてください」

証人「はい」

検察官「倒れている人がいた地点を書いてください」

証人「はい」

証人は交差点内の横断歩道近くにA、Bと、2人の被害者の位置をペンで記した。

検察官「あなたは倒れている人を見てどうしましたか」

証人「Bさんには救助する人がいたので、Aさんを救助しないと、と思ってAさんに近づきました。恐る恐る近づきました」

検察官「恐る恐る近づいたのはなぜですか」

証人「もしかしたら死んでるかもと思い怖かったので」

検察官「Aさんの様子はどうでしたか」

証人「ぐったりしていました」

検察官「あなたは何をしましたか」

証人「大丈夫かを聞きました」

検察官「反応は?」

証人「全くありませんでした。急いで専門の人、救急車を呼ばないと、と思い、携帯を取り出して、110番通報しました。119番にかけようとしましたが動揺していて110番にかけました」

検察官「警察には何と告げましたか」

証人「事故ですと伝えました」

検察官「倒れている人の人数を聞かれましたか。何人と答えましたか」

証人「3人と答えました」

検察官「先ほどは2人とおっしゃってましたので、もう1人をCと図面に書いてください」

証人「はい」

検察官「Cの人には何が起きましたか」

証人「Cさんを救助しようとしている人に近づいている人を見ました」

検察官「どんな人でしたか」

証人「覚えていません」

検察官「Cさんに近づいている人はどんな人でしたか」

証人「警備員か警察官のような服装の人でした」

検察官「制服の人に近づいた人は何をしましたか」

証人「制服の人にぶつかりました。制服の人は崩れるように倒れました。何が起きたか分かりませんでした」

証人は、先ほど証人として出廷した男性警察官の◯◯警部補が、加藤被告に刺されたときの様子を語っていく。

検察官「何か声は聞こえましたか」

証人「『刃物持ってるぞ!』という声が聞こえました」

検察官「その声を聞いて何をしましたか」

証人「ソフマップの中に逃げました。みんなすごい勢いで逃げました」

検察官「逃げた後はどうしましたか」

証人「しばらくして外に出ました」

検察官「それはなぜ?」

証人「110番の電話を切っていなかったので、警察官に『状況を教えてください』といわれたからです。交差点の方を見たところ、先ほどより人が倒れていました」

検察官「何人ぐらいですか」

証人「5、6人です」

検察官「何が起きたと思いましたか」

証人「事故に便乗して通り魔が出たのかと思いました」

検察官「110番の電話に説明できましたか」

証人「被害者は何人ですかと聞かれ、『5人倒れています』と答えましたが、『よく分からないです』みたいな動揺した感じで伝えました」

証言する証人の声まで動揺の色がみえ始めた。

検察官「救助している人の様子で印象に残っている人は?」

証人「そうですね…」

証人の声は涙声になり、口ごもってしまう。

証人「泣きながら救助している様子を見ました」

検察官「いま泣いてらっしゃいましたが、その場面を思いだしましたか」

証人「そうですね…」

続いて質問は事件で証人が受けた影響に移る。

検察官「次に目撃したことへの影響を聞いていきます。あなたはコンピュータープログラマーとして働いていましたが、仕事を休むなどの影響はありましたか」

証人「事件の次の日、仕事を休みました。事件のショックで外を歩くのが怖かったので…」

検察官「体に変調はありましたか」

証人「ありません」

検察官「仕事に影響はありましたか」

証人「3カ月ぐらいは事件の現場を思いだしました」

検察官「それでどういう状態になりましたか」

証人「鬱々(うつうつ)とした気分になりました」

検察官「どういう場面を思いだしましたか」

証人「トラックが突っ込んできたり人が3人倒れている場面を思いだしました」

検察官「事件から2年近くたちますが、現在はどうですか」

証人「やはり似たような事件があったりすると思いだします」

検察官「証人として出廷すると聞いたのは昨年の11月ですが、最初はどうでしたか」

証人「正直いやでした。話すと思いだして鬱々とした気分になるので」

検察官「それでも出廷したのは?」

証人「あのとき、何もできなかったので、証言することで遺族や裁判で何か貢献できるのならと思いました」

証人は再び涙声になった。

検察官「事件をどう思いますか」

証人「被告人に対しては法律にのっとって人として処罰を望みます。被害者には、あのとき、助けてあげられなくて申し訳ありません」

検察官からの尋問は終了、弁護人による質問に移った。証人は再びはっきりとした声で質問に答え始める。

弁護人「事件当時のことを聞いていきます。交差点にいたとき、ぶつかった音は聞いていませんか」

証人「聞いてないです」

弁護人「トラックを正面から見ましたか。まっすぐ突っ込んできて歩道に乗り上げるような位置関係でしたか」

証人「はい。歩道と車道の境目でトラックを見ました」

弁護人「(図示した)交差点内を(イ)から(ウ)まで移動したということですが、トラックがハンドルを切る様子は見ていない?」

証人「はい。そのときは本当に一生懸命逃げていたので」

弁護人「トラックにどんな人が乗っていたか見ていましたか」

証人「運転席よりも、ひかれている方の印象が強くて…。運転されている方までは見ていないです」

証人の女性は丁寧に言葉を選び、ハッキリした口調で尋問に応じる。

弁護人「男が走っている様子は見ていないのですか」

証人「電話しているときはこの場所を伝えるのに一生懸命で。必死だったので、駆け抜けるのとかは見ていないし、分からないです」

弁護人「男がぶつかっている様子は見た?」

検察官「異議があります。男が『ぶつかった』ではなく、『覚えていない』と証言しています」

検察官の異議に、弁護人は質問を変えた。

弁護人「先ほど、制服の人を見たということですが、警察官か警備員だと思いましたか」

証人「その当時は、警察官か警備員かという判断は…。でも、警備員だと思っていました」

弁護人「事件より前に秋葉原に来たことは?」

証人「秋葉原に来たことはありますが、この付近には来ていないです」

弁護人「ビルにガードマンがいるかは知っていましたか」

証人「たまに行くぐらいで、何度も行ったりはなかったので。そういったことはあまり知りませんでした」

弁護人「尋問を終了します」

裁判長「午前中の証拠調べは予定通り終了しました。午後は1時半から再開とします。まず被告人が退廷します」

午前の審理は終了。午前中の証人尋問でほとんど表情に変化を見せなかった加藤被告は、傍聴席に一礼して退廷した。

⇒(4)「手には血…体の中に何かが入った」 刺された瞬間を証言