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(1)右目付近に皮下出血、口内も出血…解剖の女医が詳述

千葉県市川市のマンションで平成19年、英国人英会話講師のリンゼイ・アン・ホーカーさん=当時(22)=が殺害された事件で、殺人罪などに問われた無職、市橋達也被告(32)の裁判員裁判の第2回公判が5日、千葉地裁(堀田真哉裁判長)で始まった。今公判ではリンゼイさんの遺体の司法解剖を行った医師が証人として出廷した。初公判で殺意の有無などをめぐり、真っ向から対立する主張を展開した検察側と弁護側双方が、それぞれの主張に沿う証言を引き出そうと火花を散らすとみられる。

市橋被告は4日の初公判で、入廷と同時にリンゼイさんの両親にいきなり土下座。「リンゼイさんの死に対し、私は責任は取るつもりです。本当に申し訳ありませんでした」と謝罪したが、「殺意はありませんでした」と述べた。

また、初公判では検察側、弁護側それぞれの冒頭陳述により、今回の裁判の争点が明確に示された。それによると、検察側、弁護側ともに市橋被告が19年3月25日にリンゼイさんを乱暴したことと、その後死体を遺棄したことについて争いはなく、死亡に至る経緯が争われることになった。

検察側は市橋被告が乱暴後にリンゼイさんの首を圧迫した結果、翌日夕までに死亡したと指摘。「乱暴の発覚を防ぐという殺害動機があり、3分以上、相当な力で圧迫し続けた」とし、殺意があったとした。また「死亡まで時間が経過していたとしても拘束状態は続いており、いつでも暴行可能な状況が継続していた」と指摘し、強姦致死罪の成立を主張した。

一方、弁護側は「大声を出さないよう左手で口をふさいだが、それでもリンゼイさんが逃げようとしたため、顔に左腕を回して押さえ込んでいるうちに動かなくなった」と殺意を否定。さらに乱暴と死亡までの間に時間の開きがあることから、強姦と傷害致死罪の適用を求めた。

リンゼイさん亡き今、死亡の真相に迫ることができる有力な方法はリンゼイさんの遺体の状況だ。遺体を解剖した医師の口からは何が語られるのか。そして裁判員たちは、どう判断していくのだろうか。

法廷は千葉地裁最大の201号。午前10時22分、被害者参加人として公判に参加するリンゼイさんの父、ウィリアムさんと母、ジュリアさんが入廷し、検察官席の後ろに座った。10時23分、堀田裁判長の指示で市橋被告が、向かって左側の扉から入ってきた。白い長袖シャツに黒いズボン姿。初公判のときと同様、うつむき気味で憔悴(しょうすい)しきった表情だ。傍聴席に目を向けることなく、リンゼイさんの両親に深く一礼した後、証言台の後方にある長いすに腰を下ろした。

いずれも男性の裁判員6人も入廷し、法廷内の全員が起立、一礼をした後の午前10時25分、堀田裁判長が声を上げた。

裁判長「それでは開廷いたします」

堀田裁判長に促され、本日の証人であるリンゼイさんの遺体の司法解剖を担当した女性医師が左側後方から入廷してきた。小柄で眼鏡をかけ、髪は一部緑色に染めている。

堀田裁判長は名前や生年月日などを確認した後、女性医師に証人としての宣誓を読み上げるよう求め、女性医師は宣誓した。

堀田裁判長は「偽りの証言をすると偽証罪に問われることもある」などと付け加え、向かって右手に陣取る検察官に対し、証人尋問を始めるよう促した。

男性検察官が立ち上がり、尋問を始める前に、裁判員に対し語りかけた。

検察官「お配りしたA3の紙の順番に沿って進めます。専門用語もありますが、これを参考にしてください。メモをしてもらっても結構です」

「遺体の写真など画面には凄惨(せいさん)なものも映りますが、事件の真相を知るために必要ですのでご理解ください」

「それでは始めます。証人(女性医師)はリンゼイさんの司法解剖を担当しましたね」

証人「はい」

女性通訳が、早口でリンゼイさんの両親に英語で通訳していく。

続いて、検察官は大型モニターに、女性医師の所属と資格をまとめたものを映し出した。それによると、千葉大大学院医学研究院法医学教室に所属。資格は医師、医学博士。専門は法医学となっている。

次に、女性の経歴についても確認した上で尋ねる。

検察官「そうすると、法医学の勤務は12年ですか」

証人「はい」

検察官「これまでに何体くらい司法解剖を担当しましたか」

証人「およそ60から70件です」

女性医師は、やや早口ながら、はっきりとした口調で答えていく。

検察官「では、リンゼイさんの件についてお聞きします。確認ですが、リンゼイさんの遺体の司法解剖をしたのは、平成19年3月28日午前9時45分からということでよろしいですか」

証人「はい」

検察官「解剖時のリンゼイさんの身長と体重は176センチ、63・5キロということでよろしいですか」

証人「はい」

検察官「リンゼイさんの遺体のけがの状況について確認します。大画面を消してください」

傍聴席から見える大型モニターは消えたが、証言台席と、裁判員、検察官、弁護人らの前にある小型モニターには写真が映し出されていくようだ。

検察官「まず顔面の写真について説明してください」

証人「(1)と書いてある部分は、右目の周りが皮下出血、いわゆるあざがみられます。皮下を開けると、筋肉が挫滅、つまりつぶれている状況です」

「(2)と書いてあるところも、皮下を開けると皮下脂肪に出血がありました」

リンゼイさんの母、ジュリアさんは、まな娘の遺体の状況を「聞いていられない」という様子で、右手を額にあてて下を向いている。ウィリアムさんは、手をあごにあてて、険しい表情で聞き入っている。

証人「(3)は鼻のところの皮膚がへこんでいます。圧痕(あっこん)がみられました」

「(4)は表皮剥脱(ひょうひはくだつ)といって皮膚の表の層が取れている状態です」

ジュリアさんは、ハンカチで涙をふいて、一言二言ウィリアムさんに語りかけている。

検察官「表皮剥脱とはどういうことですか」

証人「すったり、強く圧迫されてもなります。皮膚の一番上の層が取れてしまうことです」

検察官「圧痕についてもう一度説明してください」

証人「強く長い時間圧迫されてへこんでしまうことです」

検察官「口の中はどうでしたか」

証人「粘膜の中にも出血がありました。口角、口のはじっこの内側です」

目の前で徐々に明らかになっていくリンゼイさんの遺体の状況。市橋被告は、やや猫背気味で身じろぎ一つせず聞き入っていた。

⇒(2)首を骨折、陰部に出血…遺体の状況生々しく