×

[PR]この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。

Free Space

(2)リンゼイさんが被告宅に行ったのは…「レッスン料忘れた」口実に連れ込み

英国人英会話講師のリンゼイ・アン・ホーカーさん=当時(22)=に対する殺人と強姦(ごうかん)致死、死体遺棄の罪に問われた無職、市橋達也被告(32)の裁判員裁判の初公判は市橋被告の罪状認否が終わった。

殺意を否認する市橋被告の主張に、検察官の後ろに座る父親のウィリアムさんは険しい表情のまま首を振っていた。堀田真哉裁判長に促されて男性検察官の冒頭陳述が始まった。裁判員や遺族らには概要が書かれた紙が配られている。

検察官「被告は26歳で大学を卒業して、事件当時は28歳で無職でした」

検察官はまず市橋被告とリンゼイさんの略歴について簡単に説明する。リンゼイさんは1984(昭和59)年12月にイギリスで次女として生まれ、大学では生物学を学んだ。日本で英会話教師になるために平成18年10月に来日した。

検察官「続いて犯行のいきさつについてです。19年3日20日から21日に日付が変わったころの夜、東京メトロ東西線の行徳駅から西船橋駅に向かう電車の中で、市橋被告はリンゼイさんのことをじっと見つめていました。リンゼイさんが自宅最寄りの西船橋駅で降りたら市橋被告も降り、自転車で帰宅するリンゼイさんを走って追いかけました」

「市橋被告は『水を飲ませてほしい』という口実で家に上がり込みました。家には同居人の○○さん(法廷では実名)がいました。リンゼイさんと○○さんは市橋被告に早く帰ってほしいと思っていましたが、市橋被告は居座りました。市橋被告は『英語を教えてほしい』といい、リンゼイさんの連絡先を聞き、21日午前1時ごろにリンゼイさんの家を出ました」

裁判員たちは検察側から配られた手元の用紙を見つめながら検察官の言葉に耳を傾ける。

市橋被告は22日にメールで『英語を教えてほしい』と伝え、2人は24日までのメールのやりとりで1時間3500円の授業料を条件に、25日午前9時から行徳駅付近で英会話レッスンを行うことを約束した。

検察官「市橋被告は3月25日午前9時前に駅前でリンゼイさんと会い、駅前の喫茶店でレッスンを受けました。市橋被告は自宅に連れ込んで強姦するために『レッスン料を家に忘れた』と言ってリンゼイさんを自宅に誘い出しました」

リンゼイさんが市橋被告の家に行った理由が初めて明らかになった。リンゼイさんは同日午前10時50分から英会話学校でレッスンの予定があったため、市橋被告のマンション内のエレベーターではしきりに腕時計を見るなど時間を気にしていたという。

検察官「市橋被告は部屋に入り、リンゼイさんの顔を殴りつけ、結束バンドと粘着テープで手首を縛り、強姦しました。その後、首を圧迫して窒息死させました。26日夕方に外出して園芸用の砂を購入。(取り外しが可能な)浴槽にリンゼイさんを入れてベランダに運び、土を入れて遺棄しました」

リンゼイさんの母親、ジュリアさんは鋭い目線で市橋被告の横顔をにらむ。市橋被告は微動だにしない。

検察官「26日午後9時半ごろ、警察官が市橋被告の家を訪ねてきました。市橋被告はすきを見て逃走しました。そして市橋被告は2年半にわたり逃走していました」

市橋被告は21年11月10日、大阪のフェリー乗り場で身柄を確保されるまで顔を整形したり、土木現場で働いたりするなどして、逃亡生活を送っていた。

検察官「最大の争点は殺意の有無です。弁護側はリンゼイさんが声を出すのを止めるために市橋被告が首に手を回して死亡させたとしていますが、検察官は次の点から殺意があったと主張します。1、市橋被告が3分程度、リンゼイさんの首を相当程度の力で圧迫していました。2、リンゼイさんを強姦した後、犯行発覚を防ぐという殺害の動機がありました。相当程度の力で3分間、首を圧迫したことは遺体の解剖を行った医師の証言で立証します。医師は明日、証言します。重要なので良く聴いていてください」

検察官は裁判員裁判を意識して、裁判員たちに訴えかける。裁判員たちは顔を上げて応じた。

検察官「強姦致死が成立するかも争点になっています。弁護側は強姦から死亡するまで時間が経過しているため、強姦致死は成立しないとしています。しかし市橋被告がいつでもリンゼイさんを強姦できるように縛り続けていたことなどから、強姦致死が成立すると考えています」

検察官は情状面として、結果の重大性、犯行の粗暴・残酷さ、身勝手で自己中心的な動機、遺族の処罰感情が峻烈なことを述べて冒頭陳述を終えた。続いて男性弁護人が冒頭陳述のために立ち上がり、証言台まで移動した。

弁護人「市橋被告は強姦、傷害致死、死体遺棄の事実を認め、罪をつぐなう気持ちです」

弁護人は検察側と同様に市橋被告とリンゼイさんがレッスンを行うまでの経緯を簡単に説明した。

弁護人「市橋被告は(レッスンに間に合わせるため)朝早く自宅を出ましたが、慌てていて家にレッスン料を忘れました。レッスンを終えて財布にレッスン料が入っていないことに気づき、リンゼイさんに『お金を取りに戻りたい』と頼み、タクシーに乗って家に向かいました。最初は自宅近くにタクシーを止めて、運転手に『5、6分待ってください』と頼みましたが、断られました。そして2人で家に向かいました」

強姦目的で家に連れ込むため、『レッスン料を忘れた』と言ったとする検察側の冒頭陳述と真っ向から対立した主張となっている。

弁護人「部屋に入り、玄関のところでリンゼイさんに抱きつきましたが拒絶され、もみ合いになって押し倒し、強姦しました。このとき顔は殴っていません。抵抗できないようにするため両手首を縛りました」

弁護人「その後、リンゼイさんを4畳半に連れて行き、取り外した浴槽を持っていって、その中に入れました。リンゼイさんは裸だったので、灰色のパーカーを着せて、さらに上着をかけました」

弁護側が強姦の状況、その後の2人のやりとりについて詳細に述べていく。母親のジュリアさんは両目を手で覆った。

⇒(3)殴られ、たじろぐ被告 覆い被さると…弁護側が死亡の経緯詳述