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(2)遺体損壊「別人格を仮定しないと説明つかない」 天井仰ぐ検察官

東京地裁104号法廷には、秋葉康弘裁判長の判決を読み上げる声だけが響いている。武藤勇貴被告はじっと裁判長のほうを見据えたままだ。一方、死体損壊が無罪とされたのがショックだったのか、検察官の1人は開廷から10分を経ても、天上を仰いでいた。

裁判長「牛島医師は鑑定の最終的な結論として、被告は殺害時も是非弁識能力は十分あったが、被害者の挑発的な言動で怒りの感情を抱き、感情を抑制する機能が弱体化していたため、攻撃的な性格が突出し、被害者の殺害に及んだとの判断を示した」

「このようにして殺害に及んだことが衝撃となって解離性同一性障害による解離状態が生じ、死体損壊時には、本来の人格とは異なる獰猛(どうもう)な人格になっていた可能性が高いとの判断を示した」

続いて秋葉裁判長は、勇貴被告の鑑定を行った牛島医師がこうした判断をした理由について、次の点を挙げた。

裁判長「死体損壊行為は、被害者の死体を左右対称に15にも解体するなどしたという手の込んだものだが、その意図や作業過程は、隠しやすくするとか運びやすくするということでは説明できず、別の人格を仮定しないと説明がつかない」

「怒り狂ったような殺害行為と非常に冷静で整然とした死体損壊行為とは、意識状態が変わったと見るべきである」

牛島医師の鑑定をもとに、秋葉裁判長は「死体損壊時に被告は本来の人格とは別の獰猛な人格状態にあった可能性が高いという判断に合理性がある」と認定。その可能性を前提に、なぜ死体損壊時に責任能力がないと認められるのかを説明した。

裁判長「死体損壊時には解離性同一性障害による、本来の人格とは別の人格状態にあった可能性が高い。被告の供述によると、(死体損壊時の)記憶はほとんどなく、そうすると本来の人格は別の人格とかかわりがなかったと認められる」

「被告はその人格状態に支配されて自己の行為を制御する能力を欠き、心神喪失であった可能性を否定できないから、心神喪失の状態にあったと認定した」

死体損壊時について心神喪失と認定したことの説明をこれで終え、次は殺害時には責任能力があったと認定した理由の説明に入った。勇貴被告は相変わらずじっとしたまま。動きはない。

裁判長「牛島医師は公判で、殺害時、被告に是非弁識能力はあったが、衝動の抑制力が弱体化しているとの見解を述べた。しかし、被告は生来アスペルガー障害に罹患(りかん)してはいたが、高校卒業までは一般的な社会生活に問題はなく、社会性の面では軽度の発達障害という状態だった。殺害時も是非弁識能力はあった上、解離性障害を発症する前は制御能力も十分あった」

続いて、秋葉裁判長は勇貴被告に制御能力が認められる具体的な事実として、(1)解離性障害の発症後も殺害時までの1カ月にわたり、日常生活でトラブルはなかった(2)犯行が発覚することを恐れ、防ぐための適切な言動を取り、家族に対しても以前と変わらない対応をしていた−の2点を挙げた。その上で殺害時の責任能力について結論を述べていった。

裁判長「これらのことは、被告がその時々の状況に応じて自己の行動を制御する能力を全体としてかなりよく維持していたことを示している。衝動の抑制力が弱体化したため、制御能力がかなり減退していたとは言えるが、責任能力が限定されるほど著しいものとは言えない」

犯行時の責任能力をどう判断したかについて説明を終え、判決はいよいよ量刑の理由について入っていった。

⇒(3)裁判長説諭「前向きに生きることが亜澄さんに報いる」…被告は軽くうなずき