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(6)鑑定人2人とも責任能力に疑問符 歌織被告は無表情のまま

検察側請求の鑑定人、金吉晴氏は、スライドを使いながら「歌織被告は犯行時、急性の精神病状態だった」とする所見を説明した。スクリーンに映し出された脳の断面図や脳波の表を考え込むような表情で見つめていた河本雅也裁判長は、「確認程度に聞きますが…」と切り出し、証言台に座った2人の鑑定人に質問した。

裁判長「今回は弁護側から鑑定申し出があり、弁護側が請求した木村先生、検察側が請求した金先生に鑑定をやってもらった。木村先生、ただいまの金先生の意見について異論は?」

木村鑑定人「全くない」

裁判長「金先生はどうか?」

金鑑定人「基本的には同じです」

裁判長「木村先生、殺人や死体損壊は被告の意思のもとに行われたのか?」

木村鑑定人「それは(歌織被告の)責任能力(の有無)ということか?」

裁判長「はい」

木村鑑定人「被告は犯行時、そして死体遺棄時に短期精神病性障害に罹患(りかん)しており、正常能力は欠如していた」

裁判長「金先生はどうか?」

金鑑定人「(責任能力を)喪失していたことは、十分想定できる」

裁判長「金先生は鑑定結果の報告が当初より遅れたが、それは検査を行っていたためか?」

金鑑定人「犯行時の精神状態について、(歌織被告は)最初の1カ月程度、混乱していて、十分に話を聞くことができなかった。あとは、検査を行っていたのもある」

裁判長の短い質問が終わると、弁護側が質問に立った。裁判長の提案で、金氏が検査結果の説明で使用したスライドが再度スクリーンに映し出される。照明を落とし薄暗くなった法廷に、「トラウマ」「PTSD」「離人病性障害」といった文字が浮かび上がった。

弁護人「先ほどの金先生の説明では、意識障害について(アルコール摂取などの)身体的要因の有無で(歌織被告の)診断名が変わるということだったが、実際にはそのとき生じた精神状況に違いはあるのか?」

金鑑定人「ない」

弁護人は、金鑑定人が歌織被告に行った脳波検査についても質問した。この検査では例外的な脳波である「ポジティブスパイク」が検出されたが、歌織被告の精神疾患を示す根拠となるのだろうか。

弁護人「脳波検査の結果、脳の器質(的問題)は疑われるのか?」

金鑑定人「(別の機会に行った)睡眠時の脳波(検査)では、ポジティブスパイクは表れておらず、(今回の検出は)偶発的なものだと思う」

弁護人「木村先生、器質的問題は推察されるのか?」

木村鑑定人「(歌織被告は)意識障害で幻視を生じており、それで器質的疾患が疑われたため検査を行ったのだが、今のところはっきりしたものは見つかっていない」

弁護人「金先生、今後も検査を行って何か分かる保証は?」

金鑑定人「保証はないが…。犯行から1年以上経っており、犯行時の明確な症状が分からない状況」

弁護人「当時の症状を断定することはできるのか?」

金鑑定人「できない」

弁護人「つまり、何らかの脳の器質的障害を指摘することはできるが、診断名をつけることはできないということか?」

金鑑定人「はい」

弁護人は、死体遺棄など歌織被告のとった行動の合理性について質問する。

弁護人「被告は犯行時、何らかの責任能力が欠如していたということか?」

金鑑定人「はい」

弁護人「被告は当時、買い物をしたり誰かと話をしたりもしているが?」

金鑑定人「現実感はないが、ある程度まとまった行動ができるということはある」

弁護人「木村先生はどう考えるか?」

木村鑑定人「朦朧(もうろう)状態で動揺しているが、動揺の程度によっては合理的な行動もできる。意識障害がある場合、『あれをしよう』と思って、偶然(行動が)合理的だったりすることもあるし、そうでないこともある。一見、合理的にふるまうことはある」

弁護人「合理的でないと感じる点はあるか?」

木村鑑定人「死体を遺棄することは合理的ではない。袋から死体を取り出してそこら辺に投げたりは、普通しない。死体を遺棄した行動自体は、かなり合理性に欠ける」

弁護人「金先生はどう考えるか?」

金鑑定人「(祐輔さんが)血を流したことにショックを受けた。祐輔さんのDV(配偶者間暴力)被害について嫌悪する感情もあり、『(死体を)どこかに移したい』と考えた」

検察側がこれまで「合理性がある」と主張していた犯行前後の歌織被告の行動について、両鑑定人ともに責任能力が欠如している可能性を指摘した。弁護側にとっては有利な証言だが、歌織被告は表情を変えることなく前を向いたままだった。

⇒(7)「犯行はバーチャルリアリティー」鑑定人、詐病も否定