Free Space

(2)衝撃の新事実 歌織被告、夫から「性的写真ばらまく」と脅されていた

木村鑑定人の報告が続く。生育歴から見た被告の性格を次のように総括した。

木村鑑定人「虐待的な親子関係、生育歴と考えられる。それが(人を)警戒したり、(人と)冷めた関係になることに影響した。以上が生育歴についての報告だ」

続いて、鑑定人は犯行に至る経緯を語り始めた。祐輔さんとの出会いからだ。

木村鑑定人「祐輔さんと出会ったのは平成14年11月。当時、被告はある男性との関係、いわゆる不倫関係にあった。この辺りがうまくいかなくなっていて、そういうころに祐輔さんと出会って、関係ができたのはある意味自然だった。祐輔さんが被告にアプローチして、一緒に住むことになったのが14年12月27日ごろ。色々なやり取りがあったが、(15年)3月に結婚することになった。最初の暴力は結婚して1週間後ぐらいのこと。被告が職場の人と話していると、『誰と話しているんだ』ということになって、携帯を投げつけ、平手で殴った。似たような暴力は結婚前もあった」

続いて鑑定人は2度目の暴力を報告し、祐輔さんによる暴力の構図を描き出した。

木村鑑定人「一番激しい暴力になったのが、15年8月に武蔵小山のマンションに引っ越したころ。きっかけは水道の手続きがうまくいかなかったことで、突然殴ってきた。被告を押し倒したり、髪をわしづかみにして引きずり回したりした。それほど(祐輔さんは)興奮していたのに、眠って起きると平謝りするという構図だった。ときには友人を呼んで何時間にもわたって謝ったり、土下座する姿を見せたりする。その繰り返しだった。配偶者間暴力(DV)自体がずっと毎日続いていたかと言うと、ある時期はあって、ある時期はない、またある時期はあるという感じだった」

鑑定人の説明は祐輔さんの暴力を受け、歌織被告がシェルターに保護された場面に移る。その後なぜ、歌織被告は祐輔さんのところに戻ったのか。鑑定人からその理由が明らかにされた。

木村鑑定人「17年6月22日にシェルターで保護された際、当時診断した医師は心的外傷後ストレス障害(PTSD)と判断した。(被告は)当時、『自分がいけないんじゃないか』と考えていて、(医師は)離婚を強く勧めた。診察した医師も(被告が)DV被害に遭った女性と考えて不自然ではないということだった。結局、(被告は)祐輔さんの元に戻っているが、その最大の理由は性的な写真を撮られていたことにある。その写真を『知人にばらまく』などの脅しが当時あった。このことについて、(被告は)鑑定が始まった前後からやっと話し始めた」

祐輔さんからの脅しは写真にとどまらない。鑑定人は続いて、別の脅しについて語り始めた。

木村鑑定人「17年1月に万引した経緯についてだが、当時(被告は)DVに悩んでいて、もともとお酒をほとんど飲めないのに、お酒を飲んだり、薬を飲んだりすることがあった。どういう薬かは正確には分からないが、それによって少しハイになって万引した。万引したことも『みんなに知らせるぞ』という脅しが(祐輔さんから)あった」

歌織被告がシェルターから戻り、暴力の形態が変更した。

木村鑑定人「(被告が)シェルターから出て以降、暴力の形態が変わった。直接殴るよりも、両手を挙げてわざとぶつかって、被告がどこかにぶつかったりという形態になった。そこで祐輔さんは『そういう暴力は未必の故意なので暴力ではない』という主張をして、被告は未必の故意の意味が分からず、(祐輔さんが)自分のことを困惑させていると思っていた。鑑定の終わりのほうまで、未必の故意が暴力ではないということを(被告は)信じていた」

祐輔さんによる暴力から、歌織被告がどのような心理状態にあったのかについて、鑑定人はまとめに入る。

木村鑑定人「このようにDVを受けていて、(シェルターで)PTSDという診断もつき、その後もそうだったと思う。フラッシュバックや家にいないで外に行くという回避行動を繰り返した。あとは眠れないとか、誰かにいつも見られているという緊張感、不安感があった。シェルターから出た後は被告も言い返したり、(祐輔さんとの)やり合いになっていた。ただ、暴力になると(男女の)差があり、夫婦ゲンカのレベルを明らかに逸していて、暴力というものだった。その後は祐輔さんはすやすやと眠ってしまい、(被告は)暴力は現実ではなかったのではないかと思う繰り返しだった」

⇒(3)「夫の寝顔に血を流す女性」歌織被告の幻覚や幻聴明らかに