×

[PR]この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。

Free Space

(3)「葬式後、彩香ちゃんの叫び声が頭の中に…」

竹花俊徳裁判長は、長女の彩香ちゃんが橋から転落した直後、畠山鈴香被告に記憶の健忘があったかどうかについて言及を始めた。

1審判決について、弁護側と検察側は次の点で「事実誤認」と訴えている。弁護側は「彩香ちゃん事件の記憶を鈴香被告が失っていなかった」とした点。検察側は「事件後の鈴香被告が彩香ちゃん事件をすぐに思い出せなくなっており、事件の真相を解明しようと信じて行動していた」とした点だ。

裁判長「被告の記憶に関する事実は、彩香ちゃん殺害事件、豪憲君殺害・死体遺棄事件についても、犯罪事実に直接かかわるものではなく、せいぜい豪憲君事件の動機形成に影響するに過ぎない」

「弁護人、検察官の各控訴理由は、主張自体失当というほかない」

検察、弁護側双方の主張は、「事実誤認にあたらない」という判断だ。

その一方で判決は「事件の理解に役立つ」として、その記憶について検討を始めた。

鈴香被告の精神鑑定は、捜査段階と1審公判段階の2度行われた。また、控訴審でも弁護側が精神科医による面談を行い、その結果を受けた意見書を裁判所に提出している。

いずれも鈴香被告の健忘について言及しており、捜査段階の鑑定は「健忘はなかった」、控訴審の意見書は「(橋の上のできごと)すべてを忘れたという可能性は低い」と結論づけた一方、1審公判段階で行われた鑑定は「健忘があった」としている。高裁はどう判断するのだろうか。

裁判長「被告は捜査段階の供述調書で、彩香ちゃん殺害について、その直後から『これを忘れよう、自分は大沢橋には行っていないし、彩香を落としたことにはかかわっていないと思いこもうとして、大沢橋から逃げ帰ってから、思い込みが真実のように振る舞った』などと述べている」

裁判長「捜査段階の供述調書には任意性が認められ、十分信用性もあることが認められる。だから、この点も信用性が認められ、信用性に疑問を差し挟むべき事情は見あたらない」

捜査段階の取り調べで鈴香被告は彩香ちゃん殺害時の状況を詳細に説明しており、供述には任意性がある、との判断だ。そして、こう結論づけた。

裁判長「被告が1審公判で供述した『大沢橋で彩香ちゃんを転落させた直後に、彩香ちゃんの死に関するすべての記憶を失った』との事実はとうてい認められない」

さらに、「健忘があった」とする1審段階の鑑定について、判決は、任意性のあった捜査段階の供述を考慮せず、鈴香被告に対する面接のみをもとに行われており、採用できないと断じた。

では、鈴香被告はどういう状態だったのか。

裁判長「捜査段階の供述や関係証拠によれば、鈴香被告は彩香ちゃんを殺害直後から、事件を自分の記憶の中でなかったことにして忘れてしまおうと考え、思いこもうとした」

「鈴香被告の母親が彩香ちゃんの死を知って半狂乱になるのを目の当たりにし、その思いを一層強くした」

判決は、公判で検察側が主張した見解を追認したうえで、結論を導き出した。

裁判長「捜査段階の鑑定および控訴審での鑑定を参考にしても、記憶は完全には失われておらず、想起しようと思えばできる状態にあったと認められる」

「実際、鈴香被告自身、彩香ちゃんの葬式が終わったころから、ふとした瞬間に彩香ちゃんの叫び声が頭の片隅に聞こえてくることが繰り返し何度もあったと供述している」

控訴審の被告人質問で、「覚えていない」「忘れた」「思い出せない」と話す鈴香被告に「本当のことを話してほしい」と苦言を呈していた裁判長。判決は、鈴香被告の「覚えていない」などの供述は信用できないと判断したようだ。

ここで読み上げはいったん中断。裁判長が午後1時15分に再開すると告げた。

鈴香被告は判決の読み上げを聞いているときと同様、うつむいた姿勢のまま、傍聴席に視線を向けることなく法廷を後にした。

⇒(4)「殺害容疑をそらすため豪憲君事件に及んだ」