(4)仮死状態で生まれた彩香ちゃん「夢中で育てた」
さらに続くいじめ話。中学時代に続き、高校時代の状況について弁護人が問い始めた。
弁護人「高校は地元の高校ですよね。そこでいじめは?」
鈴香被告「使いっ走りみたいなことをしていました」
弁護人「具体的には?」
鈴香被告「部活前に二ツ井の町に出て万引したり、昼休みに『近くの雑貨屋でカップラーメンやパンを買ってきて』とお金渡されていったり…。私は吸わなかったけど、たばこを吸う人たちがトイレにこもるので、先生がこないよう見張っていてと言われました」
弁護人「万引もタバコも悪いことですよね。嫌だとは言わなかったのですか?」
鈴香被告「いいえ」
弁護人「なぜ?」
鈴香被告「せっかくできた仲間を失うのが怖かったんです」
弁護人「高校時代の友達は?」
鈴香被告「部活の仲間がいました」
弁護人「悩みを打ち明けられる人は?」
鈴香被告「いいえ。うわべの付き合いでした」
弁護人「高校時代、悩みがあったときはどうしたんですか?」
鈴香被告「悩みを打ち明けたことはありませんでした」
ここで、もう1人の弁護人が「1つだけ」といって質問を挟んだ。
弁護人「お父さんに殴られたとき、口のきき方が悪いとか、態度が悪いとか言われたと言っていましたが、そのとき悪いことをやったという意識はあったのですか?」
鈴香被告「殴られるときは、どんなことをしていたか、覚えていません」
弁護人「自分では、殴られるほど悪いことをしたという意識はありましたか?」
鈴香被告「…(聞き取れず)」
弁護人「悪いことじゃなくても、どんなことで殴られたのですか?」
鈴香被告「部屋の掃除ができないという理由が多かったと…」
弁護人「機嫌が悪いと殴ると言っていましたが?」
鈴香被告「機嫌が悪いと部屋に入ってチェックしてました。いつもチェックするんじゃなくて…」
そこまで質問すると、また元の弁護人にバトンタッチ。そこから、質問は長女、彩香ちゃんとの関係に移った。
弁護人「あなたと彩香ちゃんの関係について伺います。彩香ちゃんが生まれたとき、普通ではなかったそうですね?」
鈴香被告「頭と首にへその緒がついて、仮死状態で生まれました」
弁護人「最初に抱いたのは?」
鈴香被告「10日以上たってからです」
弁護人「母乳はあげられましたか?」
鈴香被告「いいえ」
弁護人「なぜですか?」
鈴香被告「初乳を冷凍保存しようと看護師に言われたのですが、哺乳(ほにゆう)瓶の底に膜が張るか張らないかぐらいしか出なくて…。その後乳腺炎という、お乳がたまって腐る病気になり、母乳が止まってしまったので、彩香には人工乳しかあげることができませんでした」
弁護人「その後、子育てを始めるわけですが、小さいころは(子育ては)できていましたか」
鈴香被告「できていたかわからないけど、夢中でやっていました」
弁護人「離婚する前までは元夫と一緒でした?」
鈴香被告「はい」
弁護人「どこに住んでいましたか?」
鈴香被告「生まれて1カ月ぐらいは切石の実家にいて、その後、藤里の自宅に住みました」
弁護人「借家に住んでいたことは?」
鈴香被告「彩香が生まれる2カ月ぐらい前まで」
弁護人「生まれて実家に帰るころでは?」
鈴香被告「いえ、生まれてから藤里に引っ越したので」