(5)「嘘メールは」「ノコギリは」「映像は」…裁判長が矢継ぎ早に
河本雅也裁判長は歌織被告が事件後、祐輔さんの両親に、祐輔さんを名乗ってメールを送った理由について尋ねた。犯行の偽装工作とも取れる行動について、歌織被告は何と答えるのだろうか。
裁判長「もらった側としてはとんでもない嘘メール。送ることに抵抗はなかったのか」
歌織被告「私が殺害した後…。彼といろいろ話している中で、約束したことがあった。その中で約束したことを私が1回も守らなかったので、彼があれだけ…」
歌織被告の長い供述が始まった。当時を思い出しながら丁寧に話そうとしているようだが、回りくどい説明だ。
「彼からは『花を飾る約束したのに、1回も飾らなかった。他に何かをちゃんとしろ』と言われて…。そういうこととか、何でそういう話をしたか分からないが、(彼は)彼の両親の話をよくした。その中で、(私が)両親の誕生日を分からないのに、『こういうことをやろう』とか、そういう話をしたが、誕生日も知らないし、両親のことも知らない。彼を殺した後、約束したことをしていなかったので、どうしていいのか分からなかった。(彼が)両親のことを心配していたことは分かっていたので、とっさに彼の代わりにメールを送った」
裁判長「メールの文面は分かっていますよね。十分分かったうえで送った?」
歌織被告が泣き出す。
歌織被告「…」
裁判長「犯行の後、捜索願を出しましたね」
歌織被告は髪をかき上げたり、手で涙をぬぐっている。
歌織被告「その前…何度も電話がかかってきて、『早く捜索願を出せ』と。会社からも電話がかかってきて、朝から同僚の人からも電話があり、どうしていいか分からず、とっさに『出した』と言ったが、会社が確認して出ていないと分かって、すぐに電話があり、『どういうことなんだ。管轄の警察署じゃないし、どうして嘘をつくのか』と言われ、すぐに警察へ…」
裁判長「(以前の)質問に対して、祐輔さんが倒れた後ろ姿を認識したのは、ワインボトルを持っていることに気付いて、と話したが」
歌織被告「手が痛くなったことを…」
裁判長「倒れた後ろ姿を見ているのか」
歌織被告「はい」
裁判長「(現場には)他に人がいないので、自分のせいだと分かるでしょう。(倒れた後ろ姿の)映像は見た?」
歌織被告「はい」
裁判長「メールを送るとき、なぜ自分が殺害したことを言わなかった?」
歌織被告「言えませんでした。怖くて。何か怖い…」
裁判長「自分がしたことが怖くて言えなかった?」
歌織被告「何が怖いのか…。自分でも分かっていなかった。『怖くて』としか言えない」
裁判長「分かりました。前の質問でも言ったことだが、切断するノコギリ、運ぶ台車などの買い物をしている」
歌織被告「はい」
裁判長「買うときには、『必要だな』と思って買った? 何に必要か分かって買ったのか?」
歌織被告「はい」
裁判長「事件前に自宅で◯◯さん(友人の名前)と話している。◯◯さんの証言を聞いていますね」
歌織被告「はい」
裁判長「『怒っているようだった』と」
歌織被告「はい」
裁判長「怒っているように見えたのは、どういうところだと思うか」
歌織被告「彼と夕方、電話で話し、興奮していた」
裁判長「興奮していたのと怒っていたのは違うが」
歌織被告「◯◯さんには怒っていたように見えたのだと思う」
裁判長「祐輔さんの頭部の傷について、弁護人から聞いていますね」
歌織被告「取り調べで警察から聞いた」
裁判長「頭に傷がたくさんあった」
歌織被告「はい」
裁判長「マットから頭しか出ていないと知っていたのか」
歌織被告「はい」
裁判長「色々な映像の間に、祐輔さんの立ち上がった姿は見えなかったか」
歌織被告「ないです」
裁判長「別の映像は見えなかったか」
歌織被告「合間合間に、彼が見えた」
裁判長「(祐輔さんが)『何で』と立ち上がった姿は?」
歌織被告「覚えているのは、倒れていた後ろ姿」
裁判長「立ち上がってからの映像は」
歌織被告「(映像は)早かったし、よく分からない。感じとしては、以前に彼に引きずり回されたときに見えた部屋の映像とか、人の顔とかがドアップになっているものがあった」