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(1)「セックス拒否すると中絶責められた」

夫の殺人と死体損壊・遺棄の罪に問われた三橋歌織被告(33)の第12回公判は、開廷時間より4分早い27日午後2時56分、東京地裁104号法廷で始まった。

この日は歌織被告の3回目の被告人質問。最初の被告人質問は2日間にわたり行われたため、期日としては4日目となる。責任能力がなかったことを意味する「心神喪失」の可能性に言及した鑑定結果報告後は2回目の被告人質問となり、責任能力の有無をめぐる検察側と弁護側の攻防はヤマ場を迎える。

刑務官に挟まれ入廷した歌織被告は、ピンクの薄手のセーターに白いズボンを身につけ、髪をかき上げながら被告席に着席した。前回の被告人質問(12日)には殺害時の状況をめぐってを声を荒げる場面もあったが、入廷時は相変わらず無表情だ。きょうの被告人質問後、河本雅也裁判長が再鑑定の必要性を判断するとみられ、その供述が注目される。

裁判長「鑑定結果を受けてもう一度、被告人質問をします。被告人は証言席に座ってください」

裁判長に一礼して証言席に座る歌織被告。このときも背中まで伸びた髪をかき上げており、癖になっているようだ。検察側から質問を始めることになり、女性検察官が立ち上がった。

検察官「あなたは平成17年6月にシェルターに入ったか」

歌織被告「はい」

検察官「シェルターで心理面接をしたか」

歌織被告「はい」

検察官「祐輔さんとの間のことを答えている。それが証拠申請されているが、それを見ると、『結婚して仕事を辞めて悔しい。向こうの出方を見て一発何かやってやろう』とあるが」

歌織被告「記憶にない」

検察官「祐輔さんに対し、どういう風に思っていたか」

歌織被告「シェルターで? 『絶対に許せない』。離婚することを考えていて『離婚するとしても、できるだけのことをしたい』と思っていた」

検察官「『できるだけのこと』とは?」

歌織被告「慰謝料のことであったり、別れた後の自分の生活のことであったり…。そういうこと」

検察官「『一発やってやろう』とは?」

歌織被告「覚えていません」

ここで弁護人から異議申し立てがあった。

弁護人「今回は鑑定結果を受けて質問をすることになっているが、検察官の質問は以前の質問と同じ」

裁判長「意味のある異議だとは思わないが、(心理面接の)記録通りのことをだから、いまの答えで十分でしょう」

河本裁判長の注意を受け、検察官はここで歌織被告が書いたとされる手帳を示す。

検察官「『心からあいつが憎い。憎くて憎くてしょうがない』と書いている。日付は9月26日。これは平成何年?」

歌織被告「分からない」

検察官「17年では?」

歌織被告「分からない」

検察官「9月28日に『けんかの原因となった、あいつが指輪をなくしていた(こと)』という記載は覚えているか」

歌織被告「分からない。彼(祐輔さん)はない(指輪をなくしたこと)です。私はなくしたことはあったが」

検察官「それでは手帳の記載は嘘?」

歌織被告「彼がはめていないことはあった。なくしたことはない」

検察官「いつ?」

歌織被告「分からない」

検察官「『本当にあいつを何とかしてやるなら、誰にも頼らず、力をためておこう』という記載もあるが、あなたが書いたもの?」

歌織被告「そうです。離婚の準備をするため(という意味だ)」

続いて検察官は歌織被告が書いたとされるノートを示す。

検察官「11月28日と29日のノートはあなたが書いたもの?」

歌織被告「そうです」

検察官「平成18年のものか」

歌織被告「そうです」

検察官「11月29日の記載に『もうあいつのことは憎しみ、憎悪しかない。一緒にいることはできない。地獄に身を置くことだ』とあるが、あなたが書いたのか」

歌織被告「そうです」

検察官「祐輔さんと離婚するしかないという気持ちか」

歌織被告「そうです」

18年11月29日と言えば、犯行の2週間前。検察側は犯行直前、歌織被告が祐輔さんを憎みきっていたことを強調したいようだ。

検察官「犯行日の12月12日に新宿に行った?」

歌織被告「行った。ペットのおしっこの吸い取りを買いに行った」

検察官「土も?」

歌織被告「それは警察の取り調べでも何度も言ったが、土を買ったことは覚えていない。レシートを見せられたが、覚えていない」

検察官「祐輔さんの上半身を入れたキャリーケースはいつ買った?」

歌織被告「ノコギリを買った日と同じ12月14日」

検察官は犯行前後のことを聞くが、鑑定結果とは直接関係ないように思える。検察官の質問はここで結婚前後の話に移る。

検察官「平成15年3月29日に祐輔さんと結婚したが、祐輔さんとの間に子供ができたことが分かったのは結婚前、後?」

歌織被告「前です。そのときは結婚することを決めていなかった」

検察官「中絶したのはいつ?」

歌織被告「(同年)3月上旬」

検察官「祐輔さんは『子供を産んでほしかった』と言っていなかったか」

歌織被告「最初は言っていた。だけど、彼には収入なく、家もなく、アルバイトしていただけで不安定。話し合って堕ろすことにした」

検察官「○○さん(友人の女性)が産むように説得したことは?」

歌織被告「ない。当時、○○さんも妊娠しており、3人で○○さんの子供の話をしたことはあるが、私たちの子供のことを話したことはない」

検察官「祐輔さんが『産んでほしかった』と言ったことは」

歌織被告「ある。私がセックスを拒んだとき、言っていた」

検察官「交際していた男性のことは祐輔さんにはどう話していた?」

ここで河本裁判長が割り込む。

裁判長「鑑定を踏まえた被告人質問なのに、鑑定とは遠い話を聞いている。鑑定結果と関連するのか。しないよね」

確かに、この20分足らずで鑑定と絡む質問はなかった。検察側の意図がつかめず、河本裁判長もイラ立っているようだ。歌織被告は淡々としている。

⇒(2)仕事転々の果て…探偵も目指した?