(4)「あなたの目的分からない」と裁判長 ヤマ場迎えて被告は…
歌織被告が祐輔さんからDV(配偶者間暴力)を受けた際に自分を撮影した写真のことについて、検察官の質問が続く。
検察官「確かにあなたは、すべての暴力について日記に書いているわけではないと。事件後に捨てたのものあるということだね?」
歌織被告「はい」
検察官「いま、手帳と写真を見てもらった。あなたが祐輔さんに暴力を受けて(自分の)写真を撮ったのは、いま見てもらった分だけ。写真に残っているあざは、あなたの日記に書いてあるのと一致する?」
歌織被告「…よく分かりません」
検察官「あなた、よく分からないと言っているが、もう先ほど見せた程度のものしか出てこない。(結局)祐輔さんが憎くてたまらない、憎さあまって殺したのでは?」
歌織被告「違う」
歌織被告の祐輔さんへの激しい殺意を指摘し、『心神喪失状態』との鑑定結果に疑問を呈して検察官の質問が終了。弁護人の質問に移る。
弁護人「あなたが(殺害後に部屋の)リフォームをしたことについて、被告人質問では怖かったと言っていたが、具体的にどう怖かったの?」
歌織被告「具体的には…。部屋のあちこちに残っているにおいや返り血が怖かった」
弁護人「リフォームしてそれらは消えたの?」
歌織被告「消えてなかった…。においは…」
小声で、かなり早口で答える歌織被告。警察の取り調べで、自分の鼻の粘膜に祐輔さんの返り血がついていると言われ、『ずっとそう思っていた』ことを明らかにした。
弁護人「リフォームのことで親に金銭面で助けてもらうよう頼んだね? それは殺害した前? 後?」
歌織被告「後です」
別の弁護士が「先ほどの検察官の質問に関連して…」と質問を始めようとしたが、その後、弁護士同士で相談をした結果、「やっぱりいいです」と撤回、質問をここで打ち切った。いよいよ質問者が裁判所側に移った、まずは女性裁判官だ。
裁判官「では私の方から…。場面を区切って聞きたい。まずワインボトルで祐輔さんを殴った後のこと。(これまでの公判では)祐輔さんが予想外に動き回ったということだが?」
歌織被告「…」
裁判官「覚えてなければ結構だが」
歌織被告「あのときのこと…。はっきりとは分からないが…。はっきり覚えているのは彼が倒れた後ろ姿」
か細い声で、途切れとぎれに話す歌織被告。
裁判官「祐輔さんが動く感じは記憶しているか?」
歌織被告「そういう瞬間は…。そのときは彼を殴っているという感じではなかった。前の被告人質問でも『どれくらい力を入れているのか』と聞かれたけど、正直あのとき、力を入れるという感覚でもなかった。体が重たいという感覚でも…」
はっきりと答えられない歌織被告。時折、右手を挙げて身ぶり手ぶりを交えている。もう1人の裁判官からは質問がなく、河本雅也裁判長が最後の質問の口火を切った。法廷は静まり返る。
裁判長「いまのあなたの話、鑑定人の話を聞いていても、あなたが祐輔さんをワインボトルで殴った状況、祐輔さんのご遺体を損壊したこと、あなたの意思や目的が分かりにくい。犯行後、(平成19年)1月8日に祐輔さんの父の携帯に、祐輔さんの名前でメールを送ったのはなぜ?」
歌織被告「…」
沈黙する歌織被告。祐輔さんの遺族がすすり泣く声が法廷に響き、重苦しい雰囲気にく。この後、河本裁判長の質問に、歌織被告は涙声で話し始めた。