(7)「あいつが憎い」
検察側の証拠調べは続き、スクリーンには三橋歌織被告直筆の紙が映し出される。紙には夫婦間のケンカに関するものが書かれているというが、文章は傍聴席からは読みづらく、検察側がその一部を朗読した。
検察官「あなたの目の前で顔が変形したので、あたなも驚いていたはずよね」
「今後の生活について肝に銘じてください」
裁判長「(紙が書かれた)時期などについては被告人質問で明らかにされますね」
検察官「はい」
検察側は歌織被告が実家に送った手帳について説明。手帳に書かれた文章を淡々と読み上げたが、その言葉からは歌織被告の憎悪が感じ取れる。
検察官「あいつが憎い。このまま引き下がるものか。自分の力をたくわえ、その日に備える」
さらに検察側は、歌織被告がボイスレコーダーの内容を書き写したというノートについて述べはじめる。詳しい説明はなかったが、その内容から、犯行後に書いたものとみられる。
検察官「『フット、ハンド、ボディー、バラバラ完了。外に置く』と記載されている」
無表情を崩さない歌織被告からは、その内面がうかがい知れない。検察側は祐輔さんと交際相手のメール、歌織被告の取り調べ時間などが証拠に含まれることを説明した後、祐輔さんの遺族の処罰感情について説明を始め、母親の供述調書を読み上げる。
検察官「19年1月4日、夫(祐輔さんの父)の携帯電話にメールが入り、夫は喜びのあまり飛び上がった。メールには『迷惑かけてすみません。もう少しだけ時間をください』と書かれていたが、私は偽のメールだと気づいた。(息子の)性格からして、メールは『父さんごめん』で始まるはず。また、祐輔は文末にローマ字の半角で『yusuke』と書く」
検察側は、歌織被告の偽装工作は母親には通じなかった一幕を明らかにし、母親が歌織被告への疑いを強めた様子を説明した。
検察官「こんなことをするのは歌織しかいない。歌織が(息子に)何かしたに違いない。殺したに違いない」
母親は歌織被告に電話した。
検察官「『(歌織被告は)本当ですか、本当に祐輔さんからのメールですか』と聞いてきた。演技に違いないと思った」