(3)東城さんからの「GW遊べる?」メール…返事を出せたのは殺害後
公判は東城瑠理香さんの友人の女性への検察官による質問が続いている。法廷内の大型モニターには大学の卒業式で首席で卒業したはかま姿の瑠理香さんの写真に代わり、海が見える場所から、この友人と一緒に撮影した写真が映し出される。
検察官「大学を卒業してからも友人関係は続きましたか」
証人「はい」
検察官「この写真はどこへ行った時のものですか」
証人「千葉にある私の家の別荘に行ったとき、海ほたるで撮ったものです」
検察官「平成19年9月のことですか」
証人「はい」
検察官「何をしに行きましたか」
証人「芋掘りと栗拾いです」
検察官「なぜ瑠理香さんと行ったのですか」
証人「泥んこになって遊んでくれるのは瑠理香だけだからです」
検察官「帰りに瑠理香さんは何か持って帰りましたね?」
証人「イヌを連れて帰りました」
検察官「イヌの種類は何ですか」
証人「ポメラニアンです」
検察官「誰からもらったのですか」
証人「私の親戚からです」
検察官「名前は何とつけましたか」
証人「クロエです」
検察官「あなたの家にクロエと一緒に瑠理香さんが来たことはありますか」
証人「はい」
検察官「いつですか」
証人「平成20年の2月です」
大型モニターには続いて、携帯電話のカメラで撮影した瑠理香さんとクロエの写真が映し出される。
検察官「誰が撮影したものですか」
証人「私が携帯電話で撮りました」
検察官「20年2月10日のことですね」
証人「はい」
検察官「この写真は瑠理香さんとクロエが何をしているところですか」
証人「こたつでミカンを食べているところです」
検察官「今でもこの写真は保存していますか」
証人「はい」
検察官「ずっととっておくつもりですか」
証人「はい…」
親友を突然奪われ、最後の写真となってしまった携帯の画像。友人は涙声になった。
検察官「瑠理香さんは何時ごろ帰りましたか」
証人「(午後)6時か7時ごろと思います」
検察官「誰がどこまで送りましたか」
証人「私と母が車で(JR)大船駅まで送りました」
検察官「瑠理香さんは何と言って別れましたか」
証人「おじゃましました。また来ます」
検察官「あなたが最後に会ったのはいつですか」
証人「…2月10日です」
検察官「大船駅で別れたのが最後ですか?」
証人「はい」
検察官「永久に別れることになると思っていましたか」
すでに涙声になっていた友人はこらえきれず嗚咽を漏らした。
証人「思っていないです」
検察官「その後、メールのやりとりは続きましたか」
証人「はい」
大型モニターには、20年2月22日午前9時6分に瑠理香さんから友人に送った携帯電話のメールの内容が映し出される。
検察官「瑠理香さんは当時、彼氏はいましたか」
証人「いませんでした」
検察官「あなたの彼氏の同僚を瑠理香さんに紹介しようと思っていたのですね?」
証人「はい」
メールには絵文字入りで「そのメンズ何系=?」などと書かれている。
検察官「彼氏の同僚は紹介できましたか」
証人「できませんでした」
検察官「なぜですか」
証人「私の彼氏が忙しくなったためです」
モニターには携帯電話の別のメール受信画面が映し出される。3月29日に瑠理香さんが送信したものだ。「寂しいね」などと書かれている。
続いて瑠理香さんが、4月16日午後6時21分に、友人に送ったメールの画面が映し出される。内容は間近に迫ったゴールデンウィークに、一緒に遊びに行けるか尋ねている内容だ。
検察官「すぐに返事をだしましたか」
証人「いいえ」
検察官「いつごろ返しましたか」
証人「4、5日経ってからです」
メールが届いたのは事件2日前のことだ。友人が返事を出した時点ではすでに瑠理香さんは殺害されていることになる。
検察官「どのように返しましたか」
証人「『ゴールデンウィークは旅行に行くから遊べないんだ』って…」
涙をタオルで拭い、声にならない声で友人は証言した。
検察官「その後瑠理香さんから返事は来ましたか」
証人「来てないです」
検察官「すぐに返事をださなかったことをどう思っていますか」
証人「すごく後悔しています」
検察官「あなたは事件を知って、瑠理香さんはどうなっていると思いましたか」
証人「誘拐され監禁されているのかと思いました」
検察官「殺害されているとは思いましたか」
証人「いいえ。瑠理香は強いので絶対に帰ってくると思いました」
検察官「殺害されたのはどうやって知りましたか」
証人「テレビのニュースで知りました」
検察官「あなたの所にたくさん電話がきたと思いますが、どうしましたか」
証人「出られませんでした」
検察官「それはどうしてですか」
証人「とても話ができる状態ではなかったからです」
時折、涙声で声を詰まらせる友人。検察官は瑠理香さんの様子について尋ねていく。
検察官「瑠理香さんはどんな人でしたか」
証人「友達思いでやさしい子でした」
検察官「どんなときにそう思いましたか」
証人「話を聞いてくれたり一緒に遊んでくれたりしたときです」
検察官「瑠理香さんの両親は離婚しましたが、内心どう思っていたと思いますか?」
証人「ショックだったと思います」
検察官「表に出しましたか」
証人「出していません」
大型モニターに瑠理香さんのお別れの会の写真が映し出された。たくさんの花に囲まれ中央には微笑んだ瑠理香さんの遺影が掲げられている。
検察官「あなたは瑠理香さんと一生付き合っていたと思いますか」
証人「はい」
検察官「事件がなければどうなっていたと思いますか」
証人「一緒に年をとって…子供の相談をして…一緒におばさんになって…」
泣きながら言葉を選んで証言する友人。悔しさが伝わったのか目頭を押さえる傍聴人もいた。続いて検察官は星島貴徳被告に対してどう思っているか尋ねていく。
検察官「星島被告は『拉致して乱暴するのは誰でもいいと思っていた』と言っていますが、どう思いますか」
証人「瑠理香のことが大好きで追っかけていたのであれば少しでも報われて……」
大声で涙を流し語尾は声にならない。
検察官「バラバラにしたことにはどう思いますか」
証人「すごく自分勝手だと思います」
検察官「許すことができますか」
証人「できません」
検察官「逮捕前に(星島被告が)インタビューに答えている姿を見たと思いますが、どう思いましたか」
証人「人の人生を奪っておいてのうのうと自分だけ生きているのは信じられません」
親友を奪われた友人の悲痛な思いは星島被告に届いているのだろうか。背中を丸めてうつむいたままで表情はうかがえない。