(20)吐き気催す裁判から逃げなかった遺族…「私たちの気持ち分かって下さい」
東城瑠理香さんの母親に対する証人尋問は終盤に近づき、検察官は裁判に臨む瑠理香さんの家族や友人らの思いを聞いている。母の口調は徐々に熱を帯びていくようだ。
検察官「瑠理香さんがいなくなって家族の中にはどういう変化が起こりましたか」
証人「瑠理香は家族の中で大きな柱でした。その柱がなくなって、みんなぎくしゃくしてしまい、まるでトンネルの中に入ってしまったような感じになりました」
検察官「トンネルの中から抜け出すために何かしたのですか」
証人「裁判の日取りが決まってからみんなで話しました。とにかく『裁判でみんな一緒の気持ちになる』こと。そして瑠理香のために何ができるかを話し合いました」
検察官「『できること』とは具体的に何ですか」
証人「思っていることを法廷ですべて話し、瑠理香にほっとしてもらうことです」
検察官「あなたは裁判が年明けだと知って平成20年いっぱいで仕事を辞めましたね。なぜですか」
証人「仕事をしていると色々なことが降りかかってきますので…。だから私は考えることを瑠理香のこと一つにしたかったんです」
裁判に対する東城さんの母の決意がにじみ出ている。
検察官「今日はあなたの思いをすべて話すことはできましたか」
証人「できました」
検察官「どのような刑を望みますか」
証人「もちろん死刑です。瑠理香が味わった以上の恐怖、痛みを負うような死刑を下してほしいです」
気持ちが高ぶっているのか、声は震えている。
検察官「無期懲役とかもあるかもしれませんが、どう思いますか」
証人「納得できません。瑠理香が何も悪さをしていないのに下水道にバラバラにして流されて…。星島被告は生きる価値のない人間と思っていますから死刑は当然です」
ふるえながらも強い口調で答え続ける。
検察官「瑠理香さんはどう思っていると思いますか」
証人「もちろん死刑を望んでいると思います。私が言った以上の気持ちでそう思っていると思います」
検察官「最後におっしゃりたいことはありますか」
ここで東城さんの母は「裁判長!」と大きな声を上げ、思いの丈を語り始めた。
証人「瑠理香のあまりにも残酷な死が明らかになる裁判なので、(瑠理香さんの)友人に対しては『聞かないでもいい』と話しました。だけど全員が『私たちは瑠理香の全部を知りたい。どういうことが起こって、どういう風に殺されたか、この目とこの耳で知りたい』といって、第1回目(公判)から来ました。みんなそれほどまでに瑠理香のことを慕っていてくれたのだと思いました。瑠理香がいなくなったことはみんなにとってすごく大きいことなんです」
時折、声を詰まらせる。
証人「(裁判では)本当に目を覆いたく、耳もふさぎたくなる吐き気を催すような場面も多かったですが、(裁判を傍聴した東城さんの姉妹や友人ら)20代前半の子たちは誰一人逃げることもなく、瑠理香が殺されていく姿を耐えて見てきました。どうかこの子たちの気持ち。私たちの気持ちを分かって下さい」
数秒の静寂の後、検察官が『質問を終わります』と告げ、裁判長が閉廷を宣言した。最後まで星島貴徳被告は無反応だった。次回公判は22日午前10時、被告人質問などが行われる予定だ。