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(1)「人格破壊する」弁護人が質問に異議 星島被告は「続けて下さい!」

東京都江東区のマンションで、2軒隣に住む会社員の東城瑠理香さん=当時(23)=を殺害して遺体をバラバラにし、トイレに流すなどして捨てたとして殺人、死体損壊、死体遺棄など5つの罪に問われた星島貴徳被告(34)に対する第3回公判が19日午前10時、東京地裁104号法廷で始まった。公判は午後5時までの予定で、検察側が午前中に3回目の被告人質問を行い、午後は弁護側が初の被告人質問を行う予定だ。

これまでの被告人質問によると、星島被告は、セックスの快楽を与え続けることにより、自分の思うままになる「性奴隷」をつくりたいと考え、東城さんを拉致した。だが、勃起しないため、縛ったまま放置。犯行当日の深夜に警察が自分の部屋をノックしたことで「生活と体面を失う」と発覚を恐れるようになり、ノックの約40分後に首を包丁で刺して殺害した−とする経緯が明かされた。検察側は順を追って犯行の経緯を聞いているため、今回は遺体を解体した猟奇的な場面に関する質問などが行われるとみられる。

傍聴席にはこの日も、東城さんの遺族とみられる10人ほどが前列に座った。開廷直前に入廷した星島被告は過去2回と同様に黒いタートルネックに黒いズボン姿。緊張からか色白の肌がやや赤くなっており、遺族の方には視線を向けずに下を向いている。今回もゆっくりとした動きで背中を丸めて証言席に腰かけた。

平出喜一裁判長「検察官の質問の続きからです。途中で休憩を取ってもけっこうですし、早めに終わってもいいです。お任せします」

星島被告の声が小さいことを勘案し、検察官は質問を始める前に被告の前のマイクの位置を調整した。別の検察官はカレンダーを裁判官や被告に見えるよう示している。事件があった平成20年4月のものだ。

検察官「(事件翌日の)4月19日に午後9時ごろから、左右の腕、足を解体したときのことを聞きます。場所はどこでしたか」

星島被告「浴室です」

検察官「あなたの大小2本の包丁と金のこぎりを使いましたか」

星島被告「はい」

検察官「最初に切ったのは?」

星島被告「腕です」

検察官「左右どちらからか分かりますか」

星島被告の答えは聞こえない。検察官はマイクにもっと近寄るように指示したが、星島被告は反応しない。刑務官がいすを持つと、ほんの少しだけ腰を上げた。

検察官「今の答えは『いいえ』ですね」

星島被告「はい」

検察官「冷蔵庫から左右どちらかの腕を取り出したのですね」

星島被告「はい」

検察官「何に入っていましたか」

星島被告「ごみ袋です」

検察官「取り出すとどうなっていましたか」

星島被告「曲がっていました」

検察官「曲がったままどうなっていましたか」

星島被告「分かりません」

検察官「今の答えは? 『分かりません』っていったの?」

星島被告「はい」

検察官が「正解」に誘導する。

検察官「すでに固まったような状態だったんですね」

星島被告「はい」

検察官「それをどうしました?」

星島被告「洗ったと思います」

検察官「袋もシャワーで洗いました?」

星島被告「はい」

検察官「袋はどうしました?」

星島被告「乾かして…」

検察官「浴室のバー(棒)に干したということでいいですか」

星島被告「はい」

ここから検察官は、マネキンを使ってバラバラにする過程を再現した映像を法廷の大型モニターに映し出して説明していく。まずは横向きの男性が、マネキンの腕に刃物を当てている場面が映し出された。

検察官「どこから解体しましたか」

星島被告「骨のほう(付け根)からです」

検察官「具体的には」

星島被告「ナイフで…輪切りになるようにです。…骨から外して、まな板を持ってきて、包丁で切り刻んで、トイレに流しました」

早口で声が小さく、ところどころ聞き取れない。検察官が星島被告が書いたというバラバラの手順のイラストを映し出し、それもとに補足する。

検察官「(1)のように付け根からひじに向かって切り、今度は腕を1周するように切り、板のようになった肉をまな板の上で切り刻んだということですね」

星島被告「はい」

検察官「どのくらいの大きさに切りましたか」

星島被告「最初は小さく切って…早く流したくて。だんだん大きくしました」

検察官「なぜ最初は小さく切ったんですか」

星島被告「流れるか確かめようと…」

検察官「肉がたまるとどうしましたか」

星島被告「トイレに持っていきました」

検察官「何に入れてですか」

星島被告「両手で持っていきました」

検察官「最初はどれぐらいの大きさに?」

星島被告「3センチぐらいだと…」

検察官「最終的には?」

星島被告「5センチぐらいだと思います」

検察官「どういう気持ちで肉を切ったんですか」

星島被告「何も考えませんでした!」

突然興奮したような口調になる星島被告。質問の語尾と重なったため、検察官が『質問を最後まで聞きなさい』と注意した。

検察官「ほかに考えたことは?」

星島被告「何も考えず、早く終わらせよう。それだけだったと思います。東城さんのことは、ちっとも考えていませんでした!」

検察官「突き出た骨はのこぎりで切りましたね」

星島被告「はい」

検察官「どんなにおいでしたか」

星島被告「…」

検察官「いいにおいか悪いにおいかです」

星島被告「悪いにおいです」

検察官「ひじの関節の骨はどうしましたか」

星島被告「力を入れて外したり…」

弁護人が突然「裁判長、よろしいですか」と言って立ち上がった。

弁護人「裁判員制度があるんでこういうやり方を認めてきましたが、これ以上やるのが妥当なのか疑問を感じてきました。本人は画面をほとんど見ていません。調書には同意しており、(質問して確認しなくても)朗読で足りるのではありませんか。反省している人間の人格を破壊する懸念も抱きます。傍聴席も裁判官も(星島被告の発言が)聞こえないでしょうし、調書を認めているし図面もできている。被告人質問を続けるか疑問を持ちます。裁判所の判断に委ねますが、これ以上やる必要がないと思います」

星島被告「(被告人質問を)続けて下さい! 続けて下さい」

星島被告が口をはさんだ。この公判は分かりやすい裁判を目指す裁判員制度のモデルケースとされ、バラバラにされた被害者の肉片を法廷に映し出したり、犯行の詳細な手口を被告に語らせるなどして「証拠」を法廷で示しながら進めることが意識されてきた。だが、前回公判では遺族が耐えきれずに退廷して泣き崩れる場面もあり、「衝撃」は強い。

裁判長「検察官のご意見は?」

検察官「制度では、犯人が説明するのが原則です。もちろん黙秘権はありますが…」

裁判官3人が話し合う。

裁判長「続行しましょう」

⇒(2)「お役に立てずにすみません」東城さんの父親に白々しい芝居