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(1)「犯人は『アー』と叫び走っていった」証人 加藤被告がメモ

東京・秋葉原の無差別殺傷事件で殺人罪などに問われた元派遣社員、加藤智大(ともひろ)被告(27)の第7回公判が27日午前10時1分、東京地裁(村山浩昭裁判長)で始まった。

これまで法廷では、事件の被害者や目撃者が次々と証言台に立ち、当時の惨状を赤裸々に語ってきた。第7回目となる今公判では、被害者1人と目撃者3人の証人尋問が行われることになっている。

また、少なくとも証人の1人は法廷には姿を見せず、別室で尋問に応じて音声のみが法廷に中継される「ビデオリンク方式」が採用されるようだ。これまでも被告と顔を合わせたくない証人のために衝立による遮蔽(しゃへい)措置などがとられてきたが、ビデオリンク方式がとられるのは今裁判では初めて。

法廷は、普段使用してきた東京地裁最大の広さを誇る104号法廷ではなく、ビデオリンクの設備がある426法廷が使われることになった。傍聴席は38席で、98席ある104号法廷に比べると2回りぐらい小さい印象を受ける。

傍聴人の入廷が終わり、午前9時59分、加藤被告が向かって左手の扉から法廷に姿を現した。いつものように黒のスーツに白いワイシャツ姿。入廷すると、すぐそばに傍聴席が見える。事件関係者の姿を認めると、やはりいつものように一礼し、向かって右手に位置する弁護人席の前の長いすに腰を下ろした。傍聴席最前列から加藤被告までは、わずか2メートルほど。手が届きそうなほどの距離だ。

裁判長「それでは、開廷します」

午前10時1分、村山裁判長の声が法廷内に響いた。

裁判長「次に取り調べる証人については、遮蔽の措置が決定していますので、いまからその措置をとります」

村山裁判長の声に促されるように、法廷内に遮蔽用の衝立が立てられた。しばらくするとドアが開く音と、いすに座る音が聞こえる。

裁判長「証人の方ですね」

証人「はい」

男性とみられる証人の声が響いた。証人の宣誓が終わり、尋問が開始される。検察官が立ち上がり、質問を始める。加藤被告は視線を下げた状態で、身動きせず座っている。

検察官「あなたは、平成20年6月8日、殺人事件の起きた現場にいましたね」

証人「はい」

最初の証人は、事件の目撃者の男性のようだ。

起訴状によると、加藤被告は平成20年6月8日、東京・秋葉原の交差点にトラックで突っ込み、3人をはねて殺害。さらにダガーナイフで4人を刺殺したほか、10人にけがを負わせたなどとされている。

証人は事件当日、ゲームソフトやパソコンソフトを購入するため、友人と2人で秋葉原に来ていたという。事件直前は、ラーメン店でラーメンを食べ、その後ゲームソフト店に向かうため、加藤被告がトラックで突っ込んだ交差点近くを、北から南へJR秋葉原駅方向に歩いていたようだ。

検察官「そのとき、何が起きましたか」

証人「後ろから、ガシャーンという音が聞こえました」

検察官「現場の見取り図を証人に示したいのですが」

村山裁判長の許可を得た検察官が、法廷内の大型モニターに現場の見取り図を映し出した。検察官は、証人に図の位置関係が分かるか確認した後、質問を再開する。

検察官「あなたがガシャーンという音を聞いたときの場所を『あ』と書き込んでもらえますか?」

証人が見取り図に「あ」と書き込み、丸で囲む。

音のする方向を見ると、人が倒れていたという証人。近づこうとすると、その周辺から「キャー」という悲鳴が聞こえたという。

検察官「そのとき、何が見えましたか」

証人「犯人が何かを持って走っていました」

検察官「犯人とは?」

証人「この事件の犯人である加藤被告のことを指して言いました」

検察官「今、犯人と言いましたが、その犯人はどのような様子でしたか」

証人「右手に何か持って、『アー』という言葉を叫んで走っていきました」

検察官は大型モニターに、加藤被告が事件当日に着ていた白のジャケットと白のズボンを映し、証人に確認させた上で、次の質問に移った。

検察官「犯人はどのような姿勢でしたか」

証人「両腕を広げていました。そのとき『ナイフを持っているぞー』という叫び声が聞こえました」

その後、交差点の中央付近に立っていた警察官に犯人が体ごとぶつかっていった姿を見たという証人。

検察官「その警察官は、どうなりましたか」

証人「その場で前のめりに倒れました」

検察官「その後、犯人はどうしたのでしょうか」

証人「友人と逃げたので、細かいところは分かりません」

それまで身動きせず質疑に聞き入っていた加藤被告。ここで机の上に置かれたノートを開き、なにやら書き込み始めた。

証人はこの後、もう一度犯人を見たという。それは、警察官に追われる加藤被告の姿だった。

証人「犯人に大きな声を出している人は『待てー』と言っていました。(声を出している人は)制服を着た警察の人でした。(警察官は)犯人の(ナイフを持っている)右手をたたくような動きをしていました」

検察官「犯人はその後どのような行動をしましたか」

証人「路地の方へ入っていきました」

検察官「路地の様子は見えましたか」

証人「人が取り囲んでいて見えませんでした」

見取り図に、さまざまな記号を書いて、状況を説明する。証人はその後、被害者を救護するため、近くで倒れていた男性のそばに近づいたという。証人は、介護福祉士の資格を持っており、そのカリキュラムで救護法を学んでいたという。

証人「駆け寄って『大丈夫ですか』と声をかけましたが、男性は口を開きませんでした。下をみると、胸のあたりから、すごいたくさんの血が出ていました」

間もなく、医者だと名乗る人が近づいてきて、心臓マッサージを始めた。証人は隣で傷口を圧迫し、止血を試みていたという。

証人「心臓マッサージをすればするほど、出血が激しくなりました」

必死で救命活動にあたる目撃者たち。先ほどまでノートになにやら書き込んでいた加藤被告は、いつしかノートから手を離し、証人の言葉に聞き入っていた。

⇒(2)「ヤケかと思ったが、殺気を感じ…」事件当時の恐怖語る目撃者