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(18)被告は「人間の顔をした悪魔」…東城さんの遺影を胸に傍聴するワケ

東城瑠理香さんの母親は両手をひざの上で握りしめながら、気丈に証言を続ける。東城さんの遺体はバラバラにされて遺棄され、発見されて母の元に返ってきた遺骨は一部だけだった。このため、母は瑠理香さんが殺害されて約9カ月を経た現在も、瑠理香さんの死を受け入れることができないという。

検察官「あなたは瑠理香さんの遺体が見たいと思いますか」

証人「もちろんです。どんなにバラバラにされても、どんなに顔が崩れていても、それをかき集めて、瑠理香の体にして、私が抱きしめてあげたいです」

検察官「そうした望みを奪った被告に対し、どのような気持ちを持っていますか」

証人「人間の顔をした悪魔だと思っています」

検察官「事件の後、瑠理香さんのことを思って、泣くことはありますか」

証人「ありません。本当に夢の中のような話で、受け入れることができません。泣けないことで、自分は嫌な母親だと思うこともあります」

検察官「どういうときですか」

証人「生活のために仕事に行って、職場で話して笑ったり、テレビを見て笑ったりしたときです。そういう自分を、ふと『人間じゃない』『感情がない』と思います」

検察官「なぜ、泣けないのでしょうか」

証人「私にとって瑠理香は大きな存在でした。宝物をなくし、心が固まってしまったんです。だから、ダメだったんです」

瑠理香さんの母親は、こうして自分を責める日が続いていると証言する。他の殺人事件の報道を見ても、その遺族とは別の思いを抱いてしまうという。「私は瑠理香を抱きしめることすらできない」と…。

検察官「同居していたお姉さんの○○さん(実名)も、同じように心を痛めていますか」

証人「はい。『警察への通報がなければ、(瑠理香さんを)殺さなかったかもしれない』『最初は○○を狙っていた』と法廷で犯人が自供したため、自分の身代わりになったのではという思いからです。○○も精神的におかしくなりそうなところまでいってしまいました」

検察官「○○さんが心を痛めることになった原因は、誰ですか」

証人「犯人の、星島です」

おそらく名前すら口にしたくないのだろう。星島被告のことを「犯人」と呼んできた母親は、吐き捨てるように「星島」と呼び捨てにした。ここから検察は、星島貴徳被告に対する感情について母に質問していく。

検察官「では、現在の心境を聞きます。今回の法廷で証言台に立とうと決めたときのお気持ちは、どういうものでしたか」

証人「瑠理香が本当に無念の死を遂げました。なぜ殺されればいけなかったのか。瑠理香のために、私の口で代弁しようと思ったためです」

検察官「この法廷は第1回公判から傍聴していますね」

証人「はい」

検察官「いつも瑠理香さんの遺影をお持ちですが、それはどういう理由からですか」

検察官が指摘する通り、瑠理香さんの母親はすべての公判で、遺影を胸に抱えて傍聴している。

証人「瑠理香は家に帰るなり、殴られ、目隠しをされたのです。だから犯人の顔を見ていないのです。瑠理香は今、私と一緒にここにいると思っています。瑠理香もきっと、『犯人を見たい』と思っているはずです。私も『犯人を見せたい』と思ったのです。犯人にもにこやかな、すてきな瑠理香を見てほしかったんです」

検察官「被告の法廷での態度を見てきて、どう思いますか」

証人「とっても、いらついています」

検察官「反省の様子はうかがえますか」

証人「私には感じ取れません」

検察官「どうしてですか」

母親は語気を強めて、積を切ったように言葉を続けた。

証人「入廷するときは弱々しい態度で、反省しているふりをしていると思います。それに受け答えがもう…。反省しているなら、しっかりと裁判長さんの顔を見て、受け答えすると思うんですね。それが本当に、蚊の泣くような声で全然聞こえないし、下を向いていて。それなのに、自分のことになると大きな声だって出るんですよ。ずっと見てきたから、私はわかるんです。絶対に反省はしていないと思っています」

検察官「瑠理香さんは、被告に対し、今、どういう感情を持っていると思いますか」

証人「『こんな奴に、私は殺されてしまったのか』って、すごい怒りをぶつけていると思います」

母親は感情を高ぶらせて証言した。星島被告は母親の言葉通り、弱々しく背を丸め、下を向いたままだ。時折まばたきをする以外、星島被告の顔や体が動くことはなかった。

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