Free Space

(1)東城さんのボーイフレンド写真に無関心…うつむくばかりの被告

東京都江東区のマンションで、2軒隣に住む会社員の東城瑠理香さん=当時(23)=を殺害して遺体をバラバラにし、トイレに流すなどして捨てたとして、殺人、死体損壊、死体遺棄など5つの罪に問われた星島貴徳被告(34)に対する第4回公判が20日午前10時、東京地裁104号法廷で始まった。午後5時までに東城さんの友人や同僚らの証人尋問が予定されている。

19日の前回公判では、検察官が遺体解体の手順を詳細に質問。星島被告は事件当日の平成20年4月18日から手、足、胴体、頭の順番で解体を進め、遺体がにおってきたため、7日後の同25日に骨をゆでたことを明らかにした。当時の心境については「早く終わらせよう。それだけだった。東城さんのことは、ちっとも考えていませんでした」と振り返った一方、現在の心境は「処刑を願ってやみません」とした。また、幼少時に負ったやけど痕にコンプレックスを抱き、両親を恨んでいたとし、「殺人を平気に思ったのは両親への殺意から。殺すだけでは飽き足らない」と屈折した心情を吐露した。

また、今回の公判は分かりやすい裁判を目指す裁判員制度のモデルケースとされるが、起訴事実を認めている被告に対し、詳細に犯行の様子を確認していく検察側の手法に、「反省している人間の人格を破壊する懸念も抱きます」と弁護人が異議を唱える場面もあった。だが、当の星島被告は「(質問を)続けてください!」と求めた。

公判の冒頭、平出喜一裁判長が検察側、弁護側双方に証人尋問の順番を確認。午前中は検察側請求の証人として東城さんの友人2人と元上司が、午後は弁護側が請求した証人が登場した後、東城さんの母親が証言することになった。弁護側の証人は、今回の公判でこの1人のみとされており、星島被告を知る人物とみられる。

裁判長「では最初に、○○さん(実名)お願いします」

傍聴席から20代とみられる女性が立ち上がる。全身黒い服や靴を身につけている。傍聴席にはこの日も、東城さんの遺族とみられる10人ほどが前列に座る。星島被告は4回連続で黒いタートルネックに黒いズボン姿。今回も生気のない顔で、入廷時から遺族の方には一切視線を向けず下を向いている。

検察官「あなたは平成15年4月、相模女子大学に入り、平成16年にカナダのマニトバ州立大に留学しましたね」

証人「はい」

検察官「大学、留学時代に東城瑠理香さんと一緒に過ごしましたか」

証人「はい」

検察官「関係は?」

証人「親友でした」

検察官「大学の留学のシステムは?」

証人「筆記、面接で選抜します。10人が留学できます」

2人がいた英語系の学科には約200人がいた。狭き門だ。

検察官「2人はいつごろ留学が決まりましたか」

証人「1年の冬ごろです」

検察官「平成16年3月にマニトバ州にわたり、どこに住みましたか」

証人「私は一般家庭にホームステイしました。瑠理香は大学の敷地内にある学生寮です」

検察官「印象は?」

証人「『よくしゃべる子だな』と思いました」

検察官「アルバイトはしていましたか」

証人「していません。就労ビザを持っていなかったから」

法廷内のモニターに、2人が笑っている写真が映し出された。

検察官「ここはどこですか」

証人「クラスです」

仲間との写真、キャンパスの芝生の上、ピンクのコートを着て、友人のホームステイ先のソファの上でくつろぐ姿…次々と画像が切り替わる。東城さんはいずれも生き生きとした表情を浮かべている。

検察官「東城さんの誕生日はいつですか」

証人「9月27日です」

検察官「カナダで平成16年に20歳になりましたね」

証人「クラスのみんなで、10人ぐらいで祝いました」

日本食レストランで、東城さんがケーキのろうそくを吹き消している写真が映し出された。横には若い男性の姿が映っている。

検察官「この男性はだれですか」

証人「○○です(実名)」

検察官「当時の(東城さんの)ボーイフレンドですね」

証人「はい」

自らが殺害した女性の生前の姿を、星島被告は1回も見ようとせず、下を向いて机を見つめている。「ボーイフレンド」という言葉にも無反応だった。

検察官「夏にトロントに旅行に行ったとき、瑠理香さんらしいエピソードはありましたか」

証人「ホテルの部屋で瑠理香がシャワーを浴びていたとき、洗面所の水を出しっぱなしにして、床を水浸しにしました。あわてて叫んでいました」

⇒(2)「男の子を産んで幸せになりたい」…絶たれた夢、声詰まらせる友人