(9)証拠隠滅…東城さんの1500円「使った」、ケータイは勤務先のトイレに
星島貴徳被告が東城瑠理香さんの遺体を損壊し、捨てる前に部屋に隠していた状況についての質問が続く。法廷内の大型モニターには、切断された遺体の胴体部分を隠していた引っ越し業者の段ボール箱の写真が映し出されている。
検察官「どういう気持ちで胴体を抱えましたか」
星島被告「早くしないといけないと、それだけで、人を切っているとか…人をバラバラにしているとか、そんなこと考えないようにしていました」
検察官「箱の中に胴体は入りましたか」
星島被告「入りました」
検察官「箱はガムテープでとめたりしましたか」
星島被告「いいえ。しませんでした」
検察官「なぜしなかったのですか」
星島被告「あとで警察官が来たときに、厳しく調べられるだろうと思ったので、自然にみえるように敢えてガムテープでとめませんでした」
検察官「(ガムテープで箱をとめていると)かえって怪しまれると思ったのですか」
星島被告「はい」
検察官「胴体を隠した後、部屋の中を掃除しましたか」
星島被告「はい」
検察官「(東城さんを寝かしていた)血まみれのベッドカバーはどうしましたか」
星島被告「血が落ちなかったので、切り刻んで、(東城さんの)衣服と一緒にコンビニ袋に入れました」
検察官「カバーを外した後のベッドマットはどうしましたか」
星島被告「タオルで拭き取れない血がたくさんついていました」
大型モニターにベッドマットが映し出される。空気で膨らませるもので、マットにはたくさんのくぼみがあるのが特徴だ。
検察官「拭き取れないのはくぼみがあるからですか」
星島被告「はい、そうです」
検察官「マットをシャワーで洗った後、どうしましたか」
星島被告「浴室に乾燥機能があるので乾かしました」
検察官は続いて東城さんの持ち物を星島被告がどのように処分していったかについて尋ねる。
検察官「東城さんの衣服はどうしましたか」
星島被告「大きなものは切り刻み、袋に小分けにして遺体の頭を入れた段ボールと同じ所に隠しました」
検察官「東城さんのバッグの中はみましたか」
星島被告「はい」
検察官「どんなものが入っていましたか」
星島被告「携帯電話とパスポート、化粧品の入ったポーチとシステム手帳です。それにアイポッドと時計があったはずですが気づきませんでした」
星島被告は記憶をたどるという感じではなく、鮮明に覚えているのか細かいものまで淀みなく答える。
検察官「アイポッドと時計はその時は気づかなかったのですか」
星島被告「はい」
検察官「(バッグの中に)住民票はありましたか」
星島被告「はい」
検察官「(犯行翌日の昨年)4月19日未明までに英語の書物を見つけましたか」
星島被告「はい」
検察官「どんなものですか」
星島被告「新聞紙のような表紙の本でした。厚みがありました」
検察官「大きさは」
星島被告「A6とか…」
検察官「文庫本よりも大きいものですか」
星島被告「そうだと思います」
検察官「厚さはどうですか」
星島被告「5センチ近くある分厚いものでした」
検察官「財布の中には何が入っていましたか」
星島被告「現金とカードがありました」
検察官「現金はいくらありましたか」
星島被告「1500円くらいだと思います」
検察官「その現金はどうしましたか」
星島被告「後日、使用しました」
月給50万円。金に困ってはいなかった星島被告。お金も「証拠」になると思い隠滅のために使用したのだろうか。
検察官「カード類はどうしましたか」
星島被告「細かく切り、ごみ捨て場に遺棄したりしました」
検察官「化粧品ポーチの中には」
星島被告「口紅や…薬もありました」
検察官「システム手帳にはどんなものが入っていましたか」
星島被告「プリクラが何枚かありました」
検察官「それから?」
星島被告「証明用の顔写真もあったと思います」
検察官「東城さんの名前はいつ知りましたか」
星島被告「かばんの中の住民票で知りました」
検察官「携帯電話はこの時どうしましたか」
星島被告「手元に持っておけば何かに使えると思って、そのまま残しておこうと思いました。その時、住民票の名前の欄と顔写真は後で使えると思って残していました」
13日の初公判で、東城さんの使用していた白い携帯電話の裏に証明写真と「東城瑠理香」と印字された紙片が見つかったことが明らかにされたが、紙片は住民票を切り取ったものだった。
検察官「携帯電話はどのように使えると思ったのですか」
星島被告「生きていることを偽装できると思いました」
検察官「どうすれば偽装できると考えましたか」
星島被告「きちんとは考えていませんでした」
検察官「再び電源を入れたら生存を偽装できると思ったのですか」
星島被告「そうだと思います」
検察官「その時に使えると思って名前と顔写真を(携帯電話に)貼り付けたのですか」
星島被告「はい」
検察官「携帯電話はまずどこに隠しましたか」
星島被告「はっきりとしませんが、机の上の封筒や書類の中に紛れ込ませ、スーツのポケットにもいれたかもしれません」
検察官「最終的にはどこに隠しましたか」
星島被告「勤務先のトイレの排水管の中に隠しました」
検察官「携帯電話にはアクセサリーがついていましたか」
星島被告「黒いぬいぐるみがついていました」
検察官「そういったものはどうしましたか」
星島被告「切り刻んでコンビニ袋に入れました」
検察官「その後どうしましたか」
星島被告「小分けにしてごみ捨て場に捨てました」
検察官「英語の書物はどうしましたか」
星島被告「手で細かくちぎり一般ごみとして燃えるごみに出しました」
検察官「普通に捨てても怪しまれないと思ったからですか。化粧品やアイポッドはどうしましたか」
星島被告「コンビニの袋に移し替えて、服や小物と一緒にゴミ捨て場に捨てました」
東城さんが愛用していた数々の物までもなんら躊躇(ちゅうちょ)することなく切り刻み捨てていった星島被告。遺体だけでなく、最後まで身につけていた愛用品までも奪われた遺族の気持ちは計り知れない。検察官はここで質問を変える。
検察官「あなたは東城さんが住んでいた916号室のベランダに入ったことがありますか」
星島被告「はい」
検察官「いつですか」
星島被告「2月の頭だったと思います」
検察官「どうやって入ったのですか」
星島被告「ベランダ伝いにです」
検察官「なぜ行ったのですか」
星島被告「部屋を整理していて、自分の荷物をどこかに置けないかと考えました」
検察官「916号室の室内はどんな状態でしたか」
星島被告「カラでした」
検察官「東城さんが入居する前ですね」
星島被告「はい」
検察官「結局、荷物は置けなかったのですね」
星島被告「はい」
検察官「かぎがかかっていたからですか」
星島被告「はい」
ここで平出喜一裁判長が休廷を宣言、午後4時20分から再開する。