(8)「絶対に死刑だと思います」…突然、叫んだ星島被告
東城瑠理香さんを殺害した後、証拠隠滅のため遺体を損壊し始めた星島貴徳被告。損壊の一部始終が法廷で明らかになり、遺族とみられる傍聴人からはすすり泣く声も漏れた。突然、星島被告は法定内に響き渡る声で、不可解な主張を口に…。
星島被告「絶対に死刑だと思います」
検察官「質問されていないことに答えなくていい」
傍聴人だけでなく、質問を続ける男性検察官も一瞬、面食らった表情を見せたが、すぐさま鋭い眼光で星島被告をにらみ、低い声で注意した。20秒ほど時間を置き、検察官は捜査を始めた警察官と星島被告とのやりとりに質問を向けた。
検察官「東城さんの遺体を損壊している最中に、警察官がドアをノックしたことはありますよね」
星島被告「はい」
検察官「何をしていましたか」
星島被告「左腕を切っていたと思います」
検察官「何時くらいに来たと思いますか」
星島被告「(平成20年4月19日)午前2時くらいだと思います」
検察官「そのときどう思いましたか」
星島被告「体が凍り付きました。起きているのは確かなので、(玄関先に)出ないわけにはいかないと思いました」
検察官「出なければなぜまずいと思いましたか」
星島被告「起きているのに警察官の訪問に出ないのは怪しまれると思いました」
警察官の訪問に応じる決意をした星島被告。検察官は、事件隠蔽の細部まで追及の手を伸ばす。
検察官「あなたはどういうことにしましたか」
星島被告「お風呂に入っている芝居をしました。髪を濡らして上半身を裸で応対したと思います」
検察官「手や足に血は付いていましたか」
星島被告「洗い流しました」
検察官「下はジーンズをはいたのですね」
星島被告「はい」
検察官「洋室の照明は」
星島被告「消しました」
検察官「頭部の入ったビニール袋はどうしましたか」
星島被告「浴室にしまいました」
検察官「玄関ドアを開けたとき、玄関には誰がいましたか」
星島被告「刑事がいました」
検察官「何人いましたか」
星島被告「3人くらいだった思います」
検察官「警察官は最初なんて言っていましたか」
星島被告「『お風呂に入っていましたか』と言ってきました」
検察官「その後は何を聞かれましたか」
星島被告「『女性がいなくなったが、叫び声などを聞きませんでしたか』と尋ねてきたと思います」
検察官「何と答えたのですか」
星島被告「『いえ。そんなものはなかった』とシラを切ったと思います」
検察官「その後は何と言いましたか」
星島被告「もう眠いので寝ていいですか、といいました」
検察官「(東城さんの)写真を見せられたのは、(平成20年4月)19日午前2時ごろか昼ごろか覚えていますか」
星島被告「わかりません」
検察官「午前2時の可能性もあると」
星島被告「はい」
検察官「警察官は918号室(星島被告の自室)に入りましたか」
星島被告「いいえ」
検察官「警察官は何と言って帰りましたか」
星島被告「よく覚えていません」
警察官の訪問に動転したのだろうか。やりとりでは記憶があいまいな部分が目立つ。星島被告の声はボソボソと、今にも消え入りそうだ。
検察官「警察官が帰った後、玄関を閉めましたね」
星島被告「はい」
検察官「玄関を閉めるときに(玄関前の)共用通路が見えたと思いますがどんな様子でしたか」
星島被告「たくさんの警察官がいて、現場検証しているようでした」
検察官「現場検証をしている状況を知ってどう思いましたか」
星島被告「遺体の損壊を早く進めないとと思いました。警察官がたくさん来て、私の部屋を見せろというのも時間の問題だと思いました」
検察官「切り落とした腕と足はどうしましたか」
星島被告「ゴミ袋に1本ずつ入れて、冷蔵庫に隠しました」
大型モニターには、冷蔵庫に2本の腕と2本の足が詰め込まれた状態のイラストが映し出された。冷蔵庫いっぱいに折り重なるように押し込められた状態だ。
検察官「頭部はどうしましたか」
星島被告「クローゼットの段ボール箱に隠しました」
検察官「クローゼットの中にパソコンケースがあったのですね」
星島被告「はい」
検察官「そこに隠したと」
星島被告「はい」
検察官「(パソコンケースに入れた後)頭部の上には何を置きましたか」
星島被告「緩衝材やほかの部品の箱などを置いてカムフラージュしました」
入念な隠蔽(いんぺい)工作。ただ、その場にあるものを用いるなど場当たり感は否めない。背中を丸めたまま、星島被告は淡々と話す。
検察官「胴体はどうしましたか」
星島被告「浴室でゴミ袋に入れて、ベッドの下にあった引っ越し業者の段ボール箱にあおむけにするように入れました」
検察官「ゴミ袋は二重にしましたか」
星島被告「二重にして入れました」
検察官「ゴミ袋の口の部分をどうしましたか」
星島被告「ガムテープでとめました」
検察官「浴室から胴体をどのように運びましたか」
星島被告「浴室から胴体を抱えだして床に置いて、ベッドの下から段ボール箱を引き出し、遺体の胴体を入れてその上に電気毛布を掛けてすぐに分からないようにして元の位置に戻しました」
検察官「胴体を抱えたとき暖かかったですか」
星島被告「いいえ」
検察官「重かったですか」
星島被告「はい」
検察官「固かったですか、柔らかかったですか」
星島被告「わかりません」
東城さんの遺体を抱え、星島被告は何を思ったのか。冷酷な犯罪に検察官の語気も自然と強まっていった。