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(10)決断…遺体が隠されている部屋に被告は自ら刑事を招き入れた

12分の休廷を挟んだ午後4時20分、法廷が再開した。星島貴徳被告はゆっくりした足取りで証言台へと向かう。ほおがやや紅潮しているが、相変わらず精気のない顔つきだ。検察側による被告人質問は、東城瑠理香さんを殺害した翌日の平成20年4月19日の行動に移った。

検察官「あなたは4月19日、仕事は休みでしたね」

星島被告「はい」

検察官「何時ごろ起きましたか」

星島被告「午後だったと思います」

検察官「起きたのは、何がきっかけでしたか」

星島被告「チャイムか、ノックです」

検察官「誰が来たと思いましたか」

星島被告「警察です」

検察官「この時、部屋を徹底的に調べられたらどうなると思っていましたか」

星島被告「逮捕されるとわかっていました」

この時点で東城さんの遺体は、足と腕が冷蔵庫の中に、頭がクローゼットの中の段ボールに、胴体がベッドの下にあった段ボールにそれぞれ隠されていた。

検察官「それで、あなたはどうしましたか」

星島被告「玄関で話した後、部屋の中を見てもらって警戒を解こうと思いました」

検察官「怪しまれないように?」

星島被告「はい」

検察官「あなたは、チャイムかノックに、すぐ出ましたか」

星島被告「着替えていたので少し時間がかかりました」

検察官「ドアを開けると誰がいましたか」

星島被告「刑事が2人いたと思います。1人だったかもしれません」

検察官「マンションの廊下はどういう状況でしたか」

星島被告「鑑識をしている雰囲気でした。ビニールが敷かれ、足跡を採取している様子でした」

検察官「刑事は何と言いましたか」

星島被告「『寝ていましたか?』と言いました」

検察官「あなたは何と応じましたか」

星島被告「事件のことを聞かれ、適当に返答して、刑事を部屋に入れました」

検察官「『部屋を見せてくれ』といわれる前に、自分から『部屋を見てくれ』と言ったのですか」

星島被告「はい」

検察官「それは、なぜですか」

星島被告「そうした方が簡単に(部屋を)見られて、終わるだろうと思いました」

星島被告は遺体を隠した部屋に自ら刑事を招いたと証言した。絶対に見つからないという自信があったのだろうか。しかし結果として、星島被告のもくろみ通りに事は進んでいくことになる。

検察官「刑事は冷蔵庫やクローゼット、ベッドの下の段ボールは見ましたか」

星島被告「見ませんでした」

検察官「浴室は」

星島被告「見ました」

浴室はこの日の未明、東城さんの遺体を運び、包丁などで解体をした場所だ。

検察官「刑事は、何かに気付きましたか」

星島被告「いいえ。きれいに洗って掃除しましたから。筋肉や血の筋がないようにしました」

検察官「この時、刑事から写真を見せられましたか」

星島被告「はい」

検察官「どんな?」

星島被告「東城さんがエレベーターに乗っている写真でした」

検察官「その時、誰かわかりましたか」

星島被告「わかりませんでした」

検察官「覚えてなかった?」

星島被告「はい」

星島被告は自ら拉致、殺害した東城さんの顔の記憶がないと証言する。これまでの証言内容や行動からは、星島被告は冷静に証拠隠滅などを行ってきた印象があった。しかし、この証言が事実なら、犯行時・犯行後ともに、かなり動揺していたことがうかがえる。

検察官「それで、あなたはどう考えましたか」

星島被告「最初に(東城さん宅の)916号前で見た人と違うと思いました」

検察官「それで、刑事に何と言いましたか」

星島被告「(写真は)『本当に916号室の人ですか、私がみた人と違いますが…』と答えました」

検察官「刑事は何と言いましたか」

星島被告「『あなたがみたのは、お姉さんの方ではないか』と言いました」

検察官「どう思いましたか」

星島被告「『2人で暮らしていたのか。それであんなに早く警察が来たのか』と、前日夜の事が一度にわかりました」

この時点で、星島被告は初めて、東城さんが姉と2人暮らしだったことに気付いたという。

検察官「ターゲットは本当は誰でしたか」

星島被告「お姉さんの方だったと思います」

検察官「お姉さんが先に帰宅していれば、お姉さんを拉致しましたか」

星島被告「そう思います」

検察官「おそらく殺していましたか」

星島被告「そう思います」

傍聴席にいる遺族らを前に、星島被告はためらう事なく言い切った。

検察官「刑事は何分くらいで帰りましたか」

星島被告「20分くらいだと思います」

検察官「部屋はざっと見ただけですか」

星島被告「はい」

続いて検察側は、星島被告が外出した理由について問いただした。

検察官「19日の午後、あなたは外出しましたね」

星島被告「はい」

検察官「何時ごろですか」

星島被告「3時か4時ごろです」

検察官「何のために外出したのですか」

星島被告「靴を買うためです」

検察官「なぜ、靴を買おうと思ったのですか」

星島被告「マンションの通路で鑑識が足跡を採取していると思ったので、普段はいていた靴を処分して、新しいのを買えば、普段はいていた靴の持ち主が不審者ということになると考えました」

指紋や血痕の払拭のほかにも、新たな証拠隠滅工作を証言した星島被告。東城さんの顔も覚えていないほど動揺していた一方で、こうした行動は冷静そのものだ。

検察官「どこに買いに行ったのですか」

星島被告「豊洲のホームセンターの2階の靴屋です」

検察官「マンションの1階はどういう様子でしたか」

星島被告「刑事がたくさんいました」

検察官「何をしていると思いましたか」

星島被告「現場を調査していると思いました」

検察官「マンションを出るとどんな様子でしたか」

星島被告「マスコミがたくさんいました」

検察官「それで、どうしましたか」

星島被告「取材に応じないと不自然かと思い、インタビューに答えました」

この時の映像は、星島被告の逮捕後、報道各社が何度も報じている。

検察官「どんな事を話しましたか」

星島被告「『刑事に写真を見せられた』とか『(東城さんは)ホステス風に見えた』とかです。『事件の事は何も知らない』と適当な事を言いました」

検察官「どういう態度でインタビューに応じたのですか」

星島被告「怪しまれないように、普通を装いました」

検察官「あなたはカメラの前で笑ったりしていましたよね」

星島被告「…そんなこともありました」

⇒(11)被告の“心理戦術”にはまった捜査員…遺体が入った段ボールは調べず