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(4)咲被告に理解も「家庭環境に重大な影響」と指摘

咲被告は身動きせずにまっすぐ前を見て、裁判長の読み上げる判決を聞いている。一方、傍聴席最前列に座っている咲被告の夫ら遺族は、うなだれたり、ときおり手で顔をおおったりと、やりきれなさを隠し切れない様子だ。

裁判長「加害者と被害者が同一の家族であり、刑の軽減を望むものと厳罰を望む者が同居し、厳罰を求める遺族が加害者の子の面倒を見ざるを得ない状況。家庭環境に重大な影響を与えていることも軽く見ることはできない」

「以上からすると、被告人の刑事責任は相当重大である」

裁判長は咲被告の犯行を厳しく断罪した後で、情状面を述べ始める。

裁判長「咲被告は一貫して自らの罪を認め、一生償いを続けていくと述べて反省している。絵里子さんの咲被告に対する態度には厳しいものがあった。穏やかで口数が少ない咲被告は不満をため込む性格だった。絵里子さんにそれを伝えることができず、夫にも相談することもできなかった。犯行の経緯には咲被告の性格に起因する面も大きく、すべての責任を咲被告のせいにすることは相当でない」

「責任能力に影響を及ぼさないものの、咲被告は(絵里子さんとの暮らしの中で)精神的に疲弊していた」

裁判長は心神耗弱や心身喪失は認めなかったが、咲被告の精神面の疲労を認めた。

裁判長「前科などもなく再犯の可能性はない。夫はおおむね同情的で、厳重処罰は望んでおらず、法律上は離婚しても、この後も婚姻関係を継続し、監督すると誓っている。職場の同僚や友人から減刑を求める嘆願書が出ている。このように咲被告に有利な条件はある」

犯行の悪質さと、咲被告が追い込まれていた情状面。双方をかんがみ、裁判長は事件を総括する。

裁判長「本件は性格の違いで対立していた義理の姉妹が、同一の職場、家族であったために関係を解消できず、絵里子さんの生命を絶つことになり、同一家族内で加害者、被害者、厳罰、減刑を求める遺族を出した痛ましい事件。咲被告に有利に斟酌(しんしゃく)すべき事情を考慮し、求刑を減らすべきとも考えられる。だが、刑事責任の重大さからすると、長きにわたって罪を償うべきと判断した。諸事情をすべて勘案し、刑を決めた」

判決文の読み上げが終わり、裁判長が咲被告に起立を促した。

裁判長「それでは、立って下さい」

一瞬、よろけた咲被告に裁判長が「立てますか」と気遣い、語りかける。

裁判長「あなたなりの考えがあったのでしょうけど、人の生命を奪ったわけで、さらに周囲にも波紋が広がったわけですから。分かりますか?」

小さな声で「はい」とだけ答える咲被告に対し、荒川裁判長は控訴手続きについて説明する。正午ちょうどに閉廷が告げられた。

裁判長「傍聴席は退廷してください」

咲被告の夫ら3人を残し、空っぽになる傍聴席。うつむき、表情をうかがわせずに退廷していく咲被告は、肩を落としてぼうぜんと座り続ける夫ら3人に一度も顔を向けることはなかった。

閉廷後、弁護人は報道陣に対し、「即日控訴は考えていないが、代理人としては控訴を考えるべきと思う。咲被告と話し合って決める」と述べた。判決の最も不服な部分は、「裁判所が咲被告の犯行当時の精神状態について、精神的に疲弊していたことは認めたものの、減刑となる心神耗弱や、無罪となる心神喪失を認めず、責任能力があったと判断したこと」という。

また、弁護人は咲被告が最近の接見で「事件当時のことや現場であったことなどの夢を見る」「子供に対し、親としての資格がない」などと話していることを明らかにした。「深い反省がうかがえる」としている。

⇒判決要旨(1)「精神障害に支配されていない」