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(2)「☆→駐車場→助手席」 記号入り犯行メモ明らかに

殺害に至った経緯について、認定した事実を早口で読み上げる裁判長。咲被告は少しうつむきながら、座ったまま動かない。表札の名札が外されていた件で義母にメールを送ったことなど、これまでの公判で明らかにされた義姉妹の確執に関することだ。さらに荒川裁判長は、咲被告が証拠隠滅について忘れないようにするため、自分しか分からないように記号を使った犯行計画メモの内容を明らかにした。

裁判長「犯行前に『☆→駐車場→助手席』などと、罪証隠滅について忘れないようにするため…☆は被害者を指していた」

続いて、殺意がいつ生じたかについて述べる。

裁判長「午前8時40分に『今の時間は誰もいないから』と、自分への嫌がらせを暴こうとして、合い鍵を使って犯行現場に入った。(咲被告の名前が書かれた)表札がタンスにあり、絵里子さんが盗まれたと言っていたものも自作自演と確信し、絵里子さんの殺害を決行した」

裁判長は殺害の決意は、表札を見たときだったと認定。アリバイ工作についても指摘する。

裁判長「犯行後に服が血痕で汚れていたため被害者の服に着替え、夫に『スーパーに寄ってくる』とメールを送り、被害者の血の付いた服を雑草地に投棄した…」

うなだれて判決文に耳を傾ける咲被告。かすかに震えているかのようにも見える。弁護側は、咲被告が犯行当時、被害観念が存在し「妄想型統合失調症」や「妄想性障害」など精神病に罹患している疑いがあると主張していることから、裁判長は責任能力の有無について言及する。

裁判長「(犯行の約4カ月前の)平成19年7月に3回内科を受診し、最後となる18日には急性気管支炎など。精神病に罹患している事実はなかった」

「医師から『気分転換に赤い服を着たら』といわれたと(咲被告は)言っているが、医師がそういったことを言った事実はなく、仮に(咲被告がそのような事実にないことを)言ったとしても、それで精神病に罹患しているとは言えない」

裁判長は咲被告の精神状態には問題がなかったと言及。では、被害妄想からくる妄想性統合失調症はどうか。

裁判長「(妄想性の精神疾患があったという)そのような思いを抱くようになった経緯に関する咲被告の供述は、犯行に至る客観的事実経過とも概ね合致しており、その経緯は通常人の感覚に照らして命を奪うことを決意させるまでのものとは言い難いが、警戒心を抱かせる余地はあった。前日まで稼働している状況や犯行の経緯などから判断し、精神疾患が存在していたと伺わせる事情は認められない」

裁判長は咲被告の心情に一定の配慮を示したものの、刑事責任能力については問題がないとの見解を示した。

⇒(3)2時間20分後に“完オチ”「自首は成立せず」と認定