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(4)再び土下座しようとするも…鬼の形相で父、リンゼイさんの写真向け続ける

平成19年3月に英国人英会話講師のリンゼイ・アン・ホーカーさん=当時(22)=が殺害された事件で、殺人と強姦(ごうかん)致死、死体遺棄の罪に問われた無職、市橋達也被告(32)の裁判員裁判の判決公判。堀田真哉裁判長が裁判所が認定した事実について読み上げを続けている。

裁判長「被告人は救急車を呼んでおらず、死亡を受け入れていたと考えられる。(リンゼイさんの)目の焦点が合っていないことから心臓マッサージや人工呼吸をしたというが、肋骨(ろっこつ)は折れておらず、救命に資するような行為とはいえない」

これまでの公判で、弁護側は「肋骨が折れるほどの強い心臓マッサージは専門家にしかできない」と反論していたが、裁判所はこの主張を退けた。

裁判長「さらに救急車を呼んでおらず、心臓マッサージをしていたとしても、殺意がなかったとはいえない。頸部(けいぶ)圧迫時に殺意があったと認めることができる」

続いて堀田裁判長は、検察側と弁護側の間で争点となっていた強姦致死罪の適用について説明を続ける。検察側は強姦から、リンゼイさんが死亡するまでに時間差があったとしても、強姦致死罪が成立すると訴えてきた。

裁判長「被告は19年3月25日午前9時45分過ぎに(市橋被告の自宅マンションに)リンゼイさんが入室後間もなく強姦した。発覚を恐れ、結束バンドで拘束し、4畳半の室内に置いた浴槽に入れた。翌26日午前2時か3時ごろ、リンゼイさんが逃げようとしたため頸部を圧迫した」

「犯行の発覚を恐れて頸部を圧迫しており、強姦してから時間が経過している。強姦致死罪は成立せず、強姦罪が成立することになる」

この争点については、弁護側の主張が認められた。

裁判長「本件では、証人や通訳の費用は被告人に負担させない。本件で、リンゼイさんは強姦され、人格を踏みにじられており、結果が重いということは言うに及ばない。22歳でさまざまな可能性があった。無念や苦しさは計り知れない」

「傷は無残で暴行の激しさを物語っている。両足を結束して土の中に埋めており、人格に対する敬意は感じられない」

検察側は公判で、リンゼイさんの遺体を発見した警察官の供述調書を朗読。浴室の浴槽が外れていることに気付いた刑事らはベランダで浴槽を見つけたといい、供述調書によると「浴槽に詰まっていた土を軽くなでると、白い肌色の皮膚が見えた」という。

裁判長「犯行態様は悪質。性欲を満たすために強姦し、発覚を恐れて殺害し、遺体を遺棄した。身勝手きわまりない」

通訳の女性が抑揚をつけて感情を込めて、堀田裁判長の読み上げを通訳する。リンゼイさんの母、ジュリアさんは父、ウィリアムさんの手をしっかりと握った。

裁判長「被告は本件後、2年7カ月にわたって逃亡し、リンゼイさんの両親が来日したことを知っても意に介さず、整形して逃亡を続け、真相解明を妨げた」

公判では、2年7カ月の逃亡生活で、神戸や大阪の建設会社に偽名で勤務していたことや鼻などに整形手術をしていたことが明らかになっている。だが、公判上の争点となっておらず、細かな逃亡の経緯が最後まで明らかになることはなかった。

裁判長「犯行後の様態も悪質で、遺族の悲嘆は言い表すことができず、峻烈な処罰感情がある」

堀田裁判長は遺族感情について言及し、市橋被告の態度を糾弾していく。

裁判長「(市橋被告は)公判前整理手続きでも、客観的事実に反する不自然な供述をしている。本件に向き合おうとしていないと言わざるを得ず、真摯(しんし)な反省は感じられない」

市橋被告は初公判で、入廷直後にリンゼイさんの両親に向かっていきなり土下座している。裁判所にはこのような態度も“謝罪”とは映らなかったようだ。

裁判長「被害弁償に逃亡生活を記した手記の利益を充てるなど、リンゼイさんの遺族に対する心情の配慮はない。刑事責任は非常に重いと言わざるを得ない」

堀田裁判長は、市橋被告に前科がないことや、32歳という若さで更生可能性が残されていることなど有利な情状についても説明した。

裁判長「犯行態様は被害者に肉体的にも精神的にも苦痛を与えるなど悪質で、動機も身勝手だ。ただ、計画性はなく、殺意も極めて強固といえず、無期懲役が相当である」

被害者参加人として参加したリンゼイさんの両親は公判で、「法律上許される最高刑で処罰してほしい」と訴えていた。堀田裁判長はこの点について「心情は当然といえる」と一定の理解を示した。

午後4時過ぎ、堀田裁判長が閉廷を告げた。裁判所職員らが退廷を促すが、傍聴人や記者らは市橋被告の様子を見つめている。

証言台から立った市橋被告は、突然倒れ込もうとしたが、周囲の職員がそれを許さない。土下座しようとしたのだろうか。

ウィリアムさんは、スーツの胸ポケットからリンゼイさんの写真を取り出し、市橋被告に鬼の形相で向け続けた。

市橋被告は職員らに抱え込まれたまま、弱々しい足取りで法廷を後にした。

市橋被告の退廷後、ウィリアムさんはジュリアさんの胸元に顔を埋めた。顔を紅潮させ、泣いているようだった。

⇒裁判員会見(1)「遺体が真実を語った」「証拠つき合わせ十分審議」 判決内容に自信