(6)「結婚したかった」祐輔さんの不倫相手が登場
休憩をはさみ、午後1時29分、歌織被告が再び法廷に入ってきた。顔は正面を見据えているが、視線は伏せている。
この日2人目の証人として、被害者の三橋祐輔さんの交際相手の女性が出廷した。傍聴席から見えないよう、ついたてで仕切られた。被告人席から歌織被告は証人を一瞬見やったが、髪の毛をしきりにかき上げ、唇をなめたり、唇をかんだりと落ち着かない。
検察官「証人は亡くなった祐輔さんと交際していたのか?」
証人「はい」
検察官「きっかけはどのようなもの?」
証人「昨年の11月中旬の飲み会でスタートした」
歌織被告は唇をかみ、証人を見やる。
検察官「12月12日に祐輔さんが亡くなったわけだが、何回くらい会っていた?」
証人「5回くらい」
検察官「電話やメールのやりとりもあった?」
証人「はい」
検察官「長い電話も?」
証人「はい」
検察側は、2人の不倫関係についての質問に入る。
検察官「証人は祐輔さんが結婚していることは知っていた?」
証人「聞いていた」
検察官「被告との関係について、祐輔さんはどう言っていた?」
証人「夫婦としての関係はなくなっている、と話していた」
歌織被告は、証人の方に視線を向けたり目を閉じたり、視線が落ち着かない。検察側は、祐輔さんが被告の性格をどう評していたか質問を始める。
検察官「被告の性格については何か言っていましたか?」
証人「気性が荒くて性格がきつい。穏やかではないと」
検察官「具体的にはどういうこと?」
証人「…祐輔さんが傷ついたといっていたのは『給料が安い』と言われたというのと、『あんたの子供だけは絶対に欲しくない』と言われ、傷ついたと言っていた」
歌織被告は証人の方をじっと見つめる。
検察官「証人と祐輔さんとの間で結婚しようという話は出ていた?」
証人「出ていた」
検察官「いつごろから?」
証人「11月下旬には、はっきり言葉で出ていた」
検察官「具体的に結婚しようという言葉だった?」
証人「はい」
検察官「証人も結婚したかった?」
証人「はい」
検察官「11月中旬に知り合って、だいぶ日が浅いという気がするが、急激に親密になったのか?」
証人「…そうですね」
検察官「どこにひかれ合ったのか?」
歌織被告は机の上のメモを見やった後、目を閉じる。
証人「最初の見た目もあったが、努力家のところにひかれた」
検察側が、証人と祐輔さんが、互いにどこにひかれ合ったのかを何度も尋ねると、証人は答えに窮して、黙ってしまった。裁判長が検察側にその質問をやめ、話を先に進めるよう促す。
検察官「祐輔さんは奥さんがいたわけだ。奥さんとはどうすると言っていた?」
歌織被告が目を閉じる。
証人「別れると言っていた」
検察官「離婚すると言っていた?」
証人「言ってましたね」
検察官「祐輔さんは本気だった?」
証人「最初は本気か分からず、傷つくのが怖くて聞けなかった。でも、途中から本気だと思った」