(4)相次ぐけんか…離婚めぐって揺れる夫婦
祐輔さんの元同僚で、歌織被告とのけんかの仲裁なども行ったという女性への証人尋問が続く。弁護側は、祐輔さんが歌織被告へふるった暴力の実態をあぶりだそうと、証人が聞いた夫婦の会話などについて詳細に質問していった。
弁護人「(平成18年3月に)歌織被告が祐輔さんから平手打ちをされ、あなたがマンションへ呼び出されたとき、祐輔さんは(理由について)何と言っていたのか?」
証人「『(歌織被告が)離婚すると言って聞かないから、来てくれないか』という、いつもの内容だった」
弁護人「マンションへ行ったときの2人の様子は?」
証人「(自分が)行ってすぐに治まるわけではない。行ったら2人は並んで座っていて、口げんかみたいになっていた。私は歌織さんの言い分をなるべく聞くようにしていて、『祐輔さんも悪いね』と言えば、(歌織被告の怒りも)だんだん治まってくる感じだった」
弁護人「あなたが呼ばれたとき、実際に歌織さんが祐輔さんに『離婚してくれ』と言っていたことはあるか?」
証人「(歌織被告が)『暴力をふるうのはおかしい。ありえない』と言って、口論していた」
弁護人「平手打ちの時、祐輔さんは謝っていた?」
証人「ずっと謝っていたという状況ではない。反論もしていた」
証人の口からは夫婦の生々しい会話が再現されていった。また、証人は別のけんかの場面についても証言した。
弁護人「(平成)15年の冬ごろ、(歌織被告らが)武蔵小山のマンションにいたときもあなたへ電話があったか?」
証人「はい」
弁護人「どんな内容?」
証人「歌織さんが離婚するといって聞かず、その(離婚を言い出した)原因として、(歌織被告が)愛人からお金を借りていたので殴ってしまったのだと」
弁護人「歌織さんは祐輔さんに『離婚してくれ』と言っていた?」
証人「はい。『私はあなたとやっていけないの。離婚して』と歌織さんが言っていて、祐輔さんは『離婚なんて言うな。悪いところは直すから』と言っていた」
歌織被告は17年6月、知人男性とのメールが原因で祐輔さんに暴力をふるわれて鼻の骨を折るなどのけがをする。警察沙汰(ざた)になったため、歌織被告は約1カ月間、保護シェルターに入所。証人はこの時、祐輔さんからの電話連絡を受けて渋谷署に駆けつけた。
弁護人「渋谷署にあなたが呼ばれたとき、歌織さんとは話したか?」
証人「いいえ」
弁護人「『またか』と思った?」
証人「(祐輔さんから警察に)『来てくれ』といわれたときは何かと思ったが、(けんかの)理由を聞いてまたかと思った」
弁護人「祐輔さんはそのとき、警察に『歌織さんに会わせてくれ』と言っていたのでは?」
証人「はい」
けんかを繰り返しながらも、断固として離婚を拒否していたという祐輔さん。歌織被告は当時を思い出したのか、何か考えるように伏し目がちに足下を見つめていた。