(2)「違う一面伝えたい」にすすり泣き
歌織被告が夫婦生活などについて相談していた牧師への証人尋問が続く。弁護側は、歌織被告が1人で教会を訪れた平成17年12月12日のやり取りについて質問を重ねる。
弁護人「そのとき、今も暴力が続いていると聞いたか?」
証人「聞いていないが、続いているという理解だった」
弁護人「洗礼を受けたいとか、歌織被告から何か願いを言われたか?」
証人「特になかった。話を聞いてほしいということが主眼だった」
弁護人「歌織被告からその後、連絡はあったか?」
証人「12月12日以降はなかったが、歌織被告のことを案じていた。はがきを出して、来会するように勧めた」
弁護人「歌織被告についてどう思う?」
証人「報道を見ていると、歌織被告や祐輔さんに対して否定的な評価が多い。両方の家族は耐え難いと思って、違う一面を伝える必要があると考えた。教会の弁護士と相談して、証人になることを申し出た」
歌織被告の方向に時折、顔を向け、ゆっくり語りかけるように証言する。歌織被告はハンカチで口元を押さえ、顔を紅潮させながら、すすり泣いた。
弁護側の尋問が終了。女性検事が立ち上がり、質問を始める。まず祐輔さんと被告が同年7月末以降に初めて教会を訪問したことなどを確認してから、12月12日の相談内容について尋ねる。
弁護人「12日に来たことについて記録はあるのか?」
証人「簡単なメモをつけた」
弁護人「この日の相談内容だが、離婚するか迷っていたのか?」
証人「そう、それが1つ。どうしていいのか分からない様子だったから、シェルター(に入ること)を勧めた。私は牧師として結婚を全うすることを勧めるのが筋だが、もはや結婚の継続は困難と考えた。別れる方向で考えた方がいいとアドバイスした」
弁護人「歌織被告の様子は?」
証人「どうしていいか分からない様子だった。迷っていた」
弁護人「家庭内暴力については聞いたか?」
証人「聞いたが、詳細には聞いていない」
検察側は、弁護側の「祐輔さんによる暴力継続」という主張を突き崩すため、暴力に関する相談内容について確認する。
検察官「暴力は続いていると聞いたか?」
証人「聞いていないが、あったと理解している」
検察官「あくまでも理解?」
証人「はい」
検察側は12日以降、歌織被告が来会せず、連絡もなかったことなどを確認して、尋問を終えた。続いて裁判長が証人に尋問したが、その内容はやはり暴力の継続性に関するものだった。
裁判長「17年12月12日、祐輔さんの暴力が続いていると考えている理由は?」
証人「教会に来ている以上、(暴力が)あったと推測している」
裁判長「具体的な根拠は?」
証人「祐輔さんが2度と暴力を振るわないという誓約をしたにもかかわらず、それ以降も歌織被告が(教会に)来たから、誓約が破られたと理解した」
牧師への証人尋問が終了。牧師は傍聴席のほうに一礼して、証言台を後にした。