(1)やけどの跡で「普通の恋愛できないと思っていた」
【主文】星島被告を無期懲役に処する。
【罪となるべき事実】
星島被告は東城瑠理香さんを拉致して強姦する目的で、平成20年4月18日午後7時30分過ぎごろ、東京都江東区内の当時の東城さん方居室内に玄関から押し入って侵入。東城さんの額をげん骨で殴り、タオルで両手首を縛った上、ジャージーを顔に巻いて目隠しをした。首に包丁を突きつけるなどして、2室となりの自分の部屋に連れ込み、わいせつの目的で略取した。
星島被告は東城さんを強姦しようとしたが、陰茎が勃起しなかった。そのため、アダルトビデオを見るなどしていたところ、午後10時20分ごろ、部屋のドアがノックされた。10時40分ごろ、様子をうかがうために共用通路に出ると、警察官が3人いた。星島被告は無関係を装って部屋に戻ったが、警察官らはすでに東城さんが拉致されたことを把握しており、星島被告が疑われて逮捕されるのは時間の問題で、もし逮捕された場合には、それまでの生活や体面を失うと考えた。そこで、東城さんの存在自体を消してしまうために、殺害し、死体を解体して投棄しようと企てた。
星島被告は午後11時ごろ、東城さん対し、右手で口を押さえた上、左手に持った包丁を首に突き刺した。包丁に体重をかけて深く突き刺したが、5分ほどたっても東城さんの呼吸が止まらなかった。できるだけ早く死に至らせようと考えた星島被告は左手で包丁を引き抜いて大量に出血させ、殺害した。
星島被告は東城さんの死体を解体して投棄しようと企て、4月18日午後11時50分ごろから23日までの間、のこぎり、洋包丁、ペティナイフなどを使って遺体の首、左右の太もも、左右の腕を切断。さらに、左右上肢、左右下肢、胴体部を細かく切断した。
19日から27日までの間、星島被告は自室で切断した遺体の部位などを水洗トイレから下水道管に流して投棄した。
切断した遺体の骨盤などの骨片を22日から5月1日までの間、前後4回にわたり、江東区内のマンションのごみ置き場のごみ箱に投棄。4月29日には同区内のコンビニエンスストアの北側に設置されたごみ箱に投棄した。
妄想…若い女性なら誰でも
【犯行の経緯や動機】
星島被告は、幼いころにできたやけどのあとがあった。女性にやけどのあとを見られるとふられてしまうのではないかという思いから、普通に恋愛したり結婚したりすることはできないと考え、実際にも、女性と交際したことはなかったが、一緒に映画や食事に出かけたり、遊園地の帰りにホテルに寄って性行為をしたりする女性が欲しいと考えていた。
そして、星島被告の欲する女性は、自分のことをずっと好きであり続け、何でも自分の言うことを聞くような女性であった。ただ、現実にそのような女性が目の前に現れることは夢のまた夢と思っていた。
アニメやアダルトビデオの影響もあった星島被告は、女性を拉致し、強姦し続けることで性の快楽の虜(とりこ)にし、自分の言うことを聞かせようと考えた。また、女性に命令を繰り返し、女性の元の人格で自分に都合の悪いところは消去し、思い通りの人格を作り上げて、「性奴隷」にしようと考えた。
星島被告は、20年2月、江東区内のマンションの918号室に引っ越してきた。3月上旬か中旬ごろ、916号室の前で、東城さんの姉を見かけ、同室に1人幕らしの女性が引っ越してきたと思った。
同年4月12日ごろ、星島被告が自慰行為をしている際、仕事のいらいらや将来に対する閉塞感もあり、かねてから「性奴隷」にするのは若い女性であれば誰でもよいと思っていた。そこで、女性を拉致して、自分の部屋に連れ込み、強姦を繰り返して、「性奴隷」にしようと思いついた。
そして、金曜日に女性を拉致すれば、月曜日の朝まで拉致したことに気づかれず、2日以上かけて強姦を繰り返して快楽を与えることができると考え、次の金曜日の同月18日に拉致して強姦することを決意した。
この時、星島被告は女性を「性奴隷」にすることに失敗することはあまり考えていなかった。
仮に失敗した場合には女性の裸の写真を撮影するなどして脅迫すれば、警察に届け出ることはないだろうなどと考えていた。
足音消すため靴下で…
星島被告は、それ以前から916号室の電気メーターを観察していた。その動きから、同室の女性は午後7時ごろから10時ごろまでに帰宅すると思っていた。
4月18日午後6時ごろ、勤務先から帰宅すると、同日午後6時30分ごろから、自室のドアを少し開けて、女性が帰宅して916号室の鍵を開ける音がするのを待ち構えていた。
この時、星島被告は、足音を立てずに916号室に駆け寄るため、靴は履かずに靴下のみを履いていた。
ところが、なかなか女性が帰宅しなかったため、午後7時ごろ、星島被告はいったん自室を出て1階に降り、郵便受けを確認。そのとき、若い女性とすれ違ったため、女性がエレベーターで6階に行ったことを確認。この女性を自室に連れ込んで強姦しようと考え、6階に向かったが、すでに女性の姿はなかったため断念した。
星島被告は自室に戻り、再びドアを少し関け、靴を脱いで916号室の様子をうかがうと、同日午後7時30分ごろ、鍵を鍵穴に差し込んで回す音が聞こえた。