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(10)借金は370万、利息しか払えず

弁護人「あなたは15年1月にパチンコ店を辞めた。理由は?」

鈴香被告「彩香が学校に上がるのに、夜の仕事をやっていてはダメだと思ったので辞めた」

弁護人「体調は悪くなかったのか?」

鈴香被告「めまいがしたりして、会社に迷惑をかけた。立っているのも辛かった」

弁護人「会社にどう迷惑をかけたのか?」

鈴香被告「体調が悪くて何度もトイレに行ったり、しゃがみ込んでしまったり、早退したりした」

弁護人「あなたの体調が悪いのはその時だけだったのか?」

鈴香被告「ずっと続いていた」

弁護人「そのころだけ悪くなったわけではなかったのか?」

鈴香被告「はい」

弁護人「会社を辞めた理由に体調が悪かったこともあるのか?」

鈴香被告「ある」

弁護人「このころに借金で破産手続きをしているようだが、借金はいくらぐらいあったのか?」

鈴香被告「さっき先生に調べてもらったら、370万円あった」

弁護人「離婚するころは、借金は110万円だったのに、なんでこんなになってしまったか?」

鈴香被告「離婚したときは、車がなくて働けなかったので、車を買い換えたりしていた。タイミング良くローン会社から『お金を借りないか』といわれて、巧みな勧誘に乗って借りてしまった」

弁護人「離婚したとき、前夫から月3万円渡されていたようだが?」

鈴香被告「そのお金は借金の返済に使っていたが、返済は分割払いで払っていたので、利息が高くて元金がなくならなかった」

弁護人「私の経験などからいえば、110万円の借金だと月に3、4万円は利息を支払わなければいけないが、利息しか払えていない状態だったのか?」

鈴香被告「はい」

弁護人「借金も悩みだったのか?」

鈴香被告「はい」

弁護人「誰かに相談はしたのか?」

鈴香被告「Cさんに相談して、次にAさんに相談して、それから両親に相談した」

弁護人「それで仕事を辞めようと判断したのか?」

鈴香被告「はい」

弁護人「その後の生活設計はどう立てていたのか?」

鈴香被告「失業保険で借金を払って、失業保険が出なくなったら生活保護を受けて、身体の調子を整えて働こうと思っていた」

弁護人「実際に生活保護を受けて、15年4月に彩香ちゃんが藤里小学校に入った。しかし、保育園は二ッ井にあるのに、なぜ友達がいることを考えて二ッ井小学校に入れなかったのか」

鈴香被告「入れてあげたいと思ったが、藤里の家は家賃が安くて離れたくなかったので、藤里小学校に入れた」

弁護人「彩香ちゃんは学校になじめたのか?」

鈴香被告「なじめていたようにみえた」

弁護人「みえた、ということは、実際はそうではなかったのか?」

鈴香被告「はい。友達のランドセルを傘でたたいたりしていたようだ」

弁護人「友達とは前夫さんですね。それについて、前夫さんの親は何か言わなかったか?」

鈴香被告「腕をつかんで、『お宅は娘さんにどういう教育しているんだ』といわれた」

弁護人「何と答えたのか?」

鈴香被告「彩香の話を聞いてから家に行くので、待ってくださいと言った」

弁護人「それで?」

鈴香被告「彩香が泣いていたので、泣きやむのを待って怒らないように穏やかに優しく聞いたら『間違いだった』と言ったので、謝りに行った」

弁護人「彩香ちゃんが言った『間違いだった』とは、どういう意味なのか?」

鈴香被告「彩香は『自分は間違ったことをしてしまった』と言っているんだと思った」

弁護人「謝りに行って、前夫さんの親は?」

鈴香被告「『分かってくれればいいんだ』と言っていた」

弁護人「ほかになじめなかったことは」

鈴香被告「前夫さんの子と他の友達と3人で帰っているとき、前夫さんの子を置いてけぼりにして走って帰ったと聞いた」

弁護人「教育委員会に訴えるといわれたのか?」

鈴香被告「いわれた」

弁護人「実際に教育委員会から何らかの連絡はあったか?」

鈴香被告「なかった」

弁護人「置いてけぼりは、どんな行動だったのか聞いたか?」

鈴香被告「聞いた。そうしたら、鬼ごっこをやっていて、前夫さんが鬼だったから逃げたと言っていた。もう一人の子に聞いても、同じようなことを言っていたので、これは前夫さんの親が見たことを勘違いしているのだと思って、子供同士のことには口出ししなくていいんじゃないかと思った」

弁護人「親は何て言っていたか?」

鈴香被告「すごく怒っていた」

弁護人「それで、担任に相談して、教頭にも話がいったということだったが?」

鈴香被告「話がいった。それで、これからは何かあったら親だけでなく、学校に知らせるということになった」

弁護人「このトラブルから、不都合なことはあったか?」

鈴香被告「親同士のグループがすでにできあがっていたので、入りづらかったが、この一件でさらに入りづらくなった。親のPTAの会合には出席しなくなった」

弁護人「他の行事にも出なかったのか?」

鈴香被告「授業参観や運動会、学習発表会は出た」

弁護人「地区の行事には出たのか?」

鈴香被告「『七夕さま』ぐらいしかやっている行事を知らなかった。あと、『レクリエーション』もやっていると知っていたが、1年生のときは出られなかった。七夕さまも体調が悪くていけなかったので、知り合いに彩香を預けた」

弁護人「誰かに相談したか?」

鈴香被告「Aさんにしたが『自分も入れなかった』といわれ、アドバイスにならなかった。もう一人の友達は『自分は経験がないので分からない』といわれた」

⇒(11)彩香ちゃんの朝ごはん、買い置きパンやおにぎり