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第5回公判(2010.10.25)

 

(9)「極刑を持って臨むしかない」…その瞬間、顔を硬直させ、わずかにほほを動かした被告

林被告

 東京・秋葉原の耳かき店店員、江尻美保さん=当時(21)=ら2人を殺害したとして殺人などの罪に問われている元会社員、林貢二被告(42)の裁判員裁判第5回公判。男性検察官による論告の読み上げが続く。

 検察官は林被告が2人の命を奪った残虐性について説明。林被告は目を閉じ、うつむいたまま微動だにしない。

検察官「被告が自分の行動を省みていれば分かります。美保さんには何の非もありません。被告は美保さんに異常なまでに執着しました。美保さんはこれ以上対応するのは無理と考えたのです。一方的に憎まれて殺害される…。こうしたことでは、女性は社会でいったいどうやって生活すればよいのでしょうか」

 立ったまま、検察官がゆっくりと論告を読み上げる。

検察官「殺害された(江尻さんの祖母の)鈴木芳江さんと被告は面識がありませんでした。芳江さんは自宅という安全で安心できる空間にいたにもかかわらず、見ず知らずの男に襲われたのです。たまたまその場にいただけでした。被告には尊い命を尊重する思いはまったくなかったのです。芳江さんを邪魔な存在としか考えなかったのであり、殺害をためらうこともありませんでした」

 検察官は林被告が2人の命を奪ったことに対する社会的影響について述べていく。林被告は床に目を落とし、顔を上げようとしない。

検察官「事件により、地域住民や社会に与えた不安は多大です。社会的衝撃は甚大であり、大きな不安を抱えて生活している女性も多いことでしょう。こうした影響も十分に考慮していただきたいと考えます」

 続いて弁護人の主張について、反論を述べていく。

検察官「事件当時、被告は物事を考えられない状態であり、相当程度に判断が困難な状態であったとしているが、これらは何ら理由のないことです。(裁判所の依頼で鑑定した)鑑定医によると、当時の被告は抑鬱(よくうつ)反応を示していたに過ぎず、病気ではありません。善悪の判断など、自身の行動の制御に影響を与えていないのは明らかです」

 林被告は、上半身はうつむいたまま動かないが、緊張からか、黒い革靴の足を上下に踏みならしている。

検察官「事件のとき、被告人は自分をコントロールすることができました。抑鬱は軽症から中症程度であり、抑鬱の反応が影響していることはありません。多くの人が殺人を犯すことがないのに、被告は犯しました。これは女性との交際経験がほとんどなく、コミュニケーションが不慣れなど、被告の人格によるものだといえます」

「耳かき店で美保さんとの距離が近くなったと思ったが、そうでなかったため、殺意が芽生えたのです。殺害は被告の人格、性格で十分説明することができます。決して判断能力が低下していたわけではありません」

 向かって左から3番目の男性裁判員が目の前の資料に視線を落とし、目を閉じたまま検察官の説明を聞いている。

検察官「被告は病気ではなく、(精神状態が犯行に影響したという)弁護人の主張はまったく体をなしていません。また、(弁護側の要請で鑑定した)精神科医の主張はまったく信用できません。たった2時間半しか話をしないで、被告の当時の状態を判断することはできないのです。被告は事件直前まで仕事ができていました」

「弁護側は、被告が通常の精神状態でなかったエピソードとして、美保さんを刺したペティナイフの刃を出したままかばんに入れた話をしました。しかし、判断能力が低下したため、犯罪に走ったというのはおかしな考えです」

 続いて林被告の反省の程度について述べていく。

検察官「被告は毎日ご遺族に手紙を書いています。当初から一貫して事実を認めてはいますが、犯行直後に逃走を試みた点や、すぐに逮捕されたため、事実関係を争う余地がなかったことを考慮すると評価するには限度があります」

「残念ながら、被告が罪を見つめる様子は見ることができません。被告は美保さんへの恋愛感情を否定し、感情を語ろうとしませんでした。どうして来店を拒否されたか、殺意を抱いたかを考え、語るべきでした」

「事件から裁判までは1年2カ月あり、事実に向き合うこともできたはずです。しかし、『美保さんに誘われて耳かき店へ通った』『来店拒否の理由は分からない』などと繰り返した発言は理解に苦しみ、罪を認めているとはいえません」

 林被告が口元を動かし、足踏みを繰り返している。

検察官「被告人質問でご遺族は発言に失望し、都合の悪い部分を隠していると思いました。大切なことは連日の手紙ではなく、自身の犯した事実に正面から向き合うことです」

 検察官は林被告の人格が犯罪を引き起こしたと繰り返す。若園敦雄裁判長が割って入り、同じ内容の発言を繰り返すのではなく、端的に説明するよう検察官に求めた。

 検察官は裁判所が死刑判決を下す際の基準になる『永山基準』について説明。『死刑』の2文字が法廷内に響き、複数の裁判員が表情を硬直させる。

検察官「被告の行動は身勝手で自己中心的であります。芳江さんをハンマーで殴打し、メッタ刺しにしました。美保さんをナイフで殺害しました。計画性もあり、遺族は極刑を望んでおります。執拗(しつよう)かつ残虐であり、殺人罪の中では最も重い刑で臨むしかありません」

 林被告の表情が再び硬直したようだ。相変わらず下を向いたまま顔を上げようとしない。

検察官「尊い2人の命が奪われ、もはや長期刑では済まされないのです」

 法廷内が緊張感に包まれる。

検察官「慎重に(刑罰を)科さなければならないかを考慮しても極めて重大。被告には極刑を持って臨むしかありません」

「被告を死刑に処するのが相当です」

 林被告はわずかにほほを動かした程度で、相変わらず下を向いている。

⇒(10)「全て美保さんの責任と被告に全く反省ない」…“死刑”求刑した遺族代理人