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第5回公判(2010.10.25)

 

(7)「死刑か無期懲役かを選ぶ事案…」冒頭から死刑求刑をにおわせる検察官

犯行現場

 約2時間の休廷をはさみ、公判が再開された。午後からは、検察官による論告求刑などが行われる予定だ。耳かき店店員の江尻美保さん=当時(21)=ら2人をストーカー行為の末に殺害したとして、殺人などの罪に問われた元会社員、林貢二被告(42)が黒のスーツ姿でうつむいて入廷。若園敦雄裁判長が開廷を告げた。

裁判長「それでは論告お願いします」

 男性検察官は、楽器の演奏で使う譜面台のようなものに資料を置き、正面の裁判員らの方を向いて論告を読み上げ始めた。

検察官「先ほどお配りしたメモを適宜ごらんになりながら説明をお聞きください」

 検察官はまず、事案の概要から説明し始めた。林被告が一方的に恋愛感情を抱き、来店拒否されたことをきっかけにつきまといを始め、2人の殺害に至ったことを改めて説明した。

検察官「検察側、弁護側とも事実関係に争いはありません。争点は量刑、つまり刑の重さです」

 検察官は「林被告が2件の殺人、住居侵入、銃刀法違反の罪に問われている」と述べ、死刑、無期懲役または5〜30年の有期刑のいずれかが適用されることを説明。犯行が一方的な恋愛感情によるもので、身勝手で理不尽、凶悪極まりないことを指摘した。

検察官「実質的に死刑か、無期懲役かを選択するかが問題となる事案です」

 6人の裁判員は手元の資料を見ながら、検察官の朗読を聞いている。林被告は終始目を閉じ、うつむいたままだ。

検察官「犯行は、極めて強固な殺意に基づき、執拗(しつよう)かつ残虐な犯行です」

 男性検察官は、林被告が腕力の弱い女性2人を一方的に攻撃していることなどを指摘。祖母の鈴木芳江さん=当時(78)=が殺害された状況を詳細に述べ、残虐性を明らかにしていった。

検察官「芳江さんは突如現れた被告にぎゃーと声をあげ、必死で抵抗したのです。被告はハンマーで殴り続け、果物ナイフで力いっぱい刺しました。10カ所以上、メッタ刺しにしました。苦しむ芳江さんに過剰なまでの攻撃を加え続けたのです」

 検察官は、芳江さんの首の骨までが傷つき、ナイフが折れ曲がっていたことなどから、被告が手加減せず、尋常でない力を込めて刺したと述べた。

検察官「裁判員のみなさん、もう一度芳江さんが現場で倒れていた写真を思いだしてください」

 検察官は裁判員に向かって呼びかけた。血の海と化した現場の様子を引き合いに、あれほど出血するにはどれほど刺さなければならないのかと問いかけた。

検察官「正視に耐えがたいですが、これが被告が現実に起こした事実なのです。被告にわずかでも人間性が残っていれば、美保さんの殺害は思いとどまることができたはずです」

 検察官は、林被告が芳江さん殺害後、2階へとあがり、音をたてないように部屋のふすまを開け、江尻さんを探したと指摘した。

検察官「寝ている家族に気づかれないようにふすまを開け閉めした。被告が冷静な一面を残していたことが分かります」

 林被告は、「やめて」と求める江尻さんの声に耳を傾けることなく、ペティナイフで首を力いっぱい何度も突き刺したことや、襲撃後に死亡しているか確認していることなどを述べ、強固な殺意があったことは明らかだと強調した。

 続いて検察官は、犯行の計画性について述べた。

検察官「被告は犯行前、8月1日に自宅前で待ち伏せしており、少なくともこの時点で殺害が頭に浮かんでいました。翌日の2日には、1日中殺すか思い悩み、方法も考えました。犯行当日の8月3日に最終的に決断し、ハンマーも用意したのです。被告はなぜ3つも凶器を用意したのでしょうか」

 検察官は、江尻さんの自宅には家族がいることも知っていたから、江尻さん殺害の障害となるものを排除し、確実に殺害しようとしていたと考えるのが合理的だと述べた。芳江さん殺害についても、予想の範囲内での犯行だったと指摘した。

 襲撃前に自宅の玄関の施錠を確認し、犯行時は音を立てないように玄関の扉をあけ、靴を脱いで侵入しようとしている点から、事前に得ていた情報をもとに計画を立て、慎重に行動していたと非難した。

検察官「結果は極めて重大です。まったく落ち度のない2人の女性が殺害され、失われた命は二度と元に戻らないのです。被害者の一人ひとりにそれぞれの人生があります。人生を断ち切ることの重さ、周囲に与えた苦しみや悲しみについて、被告は当然、責任を負うべきなのです」

 法廷内の大型モニターには、江尻さんが笑顔を見せている写真が映し出された。検察官は江尻さんの生い立ちを改めて読み上げた。

検察官「江尻さんは家族の写真を携帯電話に入れていた、家族思いの優しい女性でした」

 ピースサインをする江尻さんと家族の写真がモニターに映し出された。

検察官「美保さんはまだ21歳でした。明るい将来が待ち受けていたのです。周囲に気遣いのできる女性でした。それが耳かき店で被告に気に入られることになってしまい、皮肉としか言いようがありません」

 検察官は、江尻さんが、林被告のつきまとい行為に対し、送り迎えしてもらうなどの自衛策をとっていたことなどを述べた。

検察官「(搬送されたのち)美保さんは昏睡(こんすい)状態となり延命治療を施されましたが、約1カ月後に死亡しました。顔はむくみ、父親ですら、(幼いころに負った)美保さんの顔の傷跡からしか、自分の娘を確認できなかったほどです」

 裁判員は落ち着いた様子で手元の資料を見ながら朗読を聞いていた。

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