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(2)交差点にトラック突入…瞬間的に「まずい、速すぎる」

加藤智大(ともひろ)被告(27)の犯行に出くわした女性警察官に対する証人尋問が続いている。女性警察官は、背中を刺されて重傷を負った上司の○○警部補とともに、現場で勤務の最中だった。これまでの女性警察官の証言の内容と、防犯カメラの画像を突き合わせる作業が終わり、検察官が質問を続ける。

検察官「あなたは今も、○○警部補と同じ万世橋署で働いていますね」

証人「はい」

検察官「○○警部補は、事件の前後でどう変わりましたか」

証人「はい。事件が原因かは分かりませんが、歩くスピードが、少しゆっくりになりました」

検察側の冒頭陳述によると、○○警部補は肺や気管を傷つけられ、3カ月の重傷を負った。一時は心肺停止に陥っている。

検察官「最後です。今の犯人についての気持ちを聞かせてください」

証人「えーと…。事件は一瞬で終わりましたが、命を落とした方や、けがをした方、目撃した方が、いっぱいいます。被害者の家族の方も、被害者に当たると思います。それだけのことをしたと、深く反省してもらいたいと思います」

検察官「どのような刑罰を望みますか」

証人「自分がしたことに相当する処罰を望みます」

証人はきっぱりと言い切って、検察側の主尋問は終了した。続いて弁護側の反対尋問に移る。男性弁護士が立ち上がる。

弁護人「あなたは○○警部補と一緒に、2人で組んで取り締まりをしてたのですね」

証人「はい」

弁護人「そういう風に、○○警部補と組むのは過去にもありましたか」

証人「いえ、係長(○○警部補)とペアになったのは、その日が初めてでした」

弁護人は、検察側の尋問に対する答えを再度、確認するような質問を続けていった。

弁護人「地図に書いた印の位置から、初めて警部補を見たとき、警部補は何をしていましたか」

証人「…。もう一度、いいですか?」

弁護人「最初に警部補を見たときの、警部補の体勢は?」

証人「…走ってくる男に、背中を向けて立っていました」

弁護人は質問と質問の間で、何を聞くべきか考えるように黙り込むことがあった。証人も、弁護人の質問の意図をつかみかねてか、けげんな声で答える。

弁護人「犯人は(警部補を刺した後、走りながら)刺すような動作をしていましたか」

証人「刺すような動作を見たと思いますが、今は視覚としては覚えていません」

弁護人「上下とか、水平にナイフを振るような行動を見たと、上司に説明したわけではないと」

証人「はい」

この後、別の弁護人が、防犯カメラの画像に関する質問をして、弁護側の反対尋問は終了した。証人は印を付けた地図に、日付と署名を書き入れる手続きを終えたあと、村山浩昭裁判長に促され、一礼して退廷していった。

裁判長「では、続いてもう1人の尋問に移ります。特に弁護人、被告人で、休廷を求めませんね?」

「…はい、ではこのまま続けます」

傍聴席から向かって右、検察側の背後の扉が開いて、次の証人が入廷してきた。30代くらいのスーツ姿の男性。白いシャツに紺色のネクタイを締め、短めの髪を真ん中で分けている。やや緊張した様子で宣誓を終えると、証人席についた。女性検察官が質問に立つ。

検察官「では、落ち着いて答えてくださいね。あなたは今日、会社を休んで出廷してくださいましたね」

証人「はい」

検察官「あなたは、平成20年6月8日に秋葉原で起こった殺傷事件の目撃者ですね」

証人「はい」

検察官「その日は、なぜ秋葉原に行ったのですか」

証人「はい。パソコンの部品を買いに、秋葉原へ行きました」

証人は、やや小さめの声で質問に答える。女性検察官は大きく、はっきりした声で質問を続けていく。

検察官「何時ごろ、秋葉原に着きましたか」

証人「着いたのは、昼過ぎと記憶しています」

ここで、法廷の大型モニターに、現場の交差点の地図が映し出された。

検察官「事件前、どの通りを歩いていましたか」

証人「私は、中央通りを、下(南)から上に歩いていました」

検察官「何を見ながら歩いていましたか」

証人「はい。交差点の左上にある、工事現場を見ながら歩いていました」

検察官「何か視界に入りましたか」

証人「左の方向から、トラックが交差点に進入してくるのが見えました」

検察官に促され、証人が地図に自分の位置と、トラックの位置を書き入れた。

検察官「トラックの様子は?」

証人「すごいスピードでした。瞬間的に『まずい、速すぎる』と思いました」

検察官「交差点の信号は?」

証人「はっきりと青と覚えていませんが、人がいっぱいいたし、自分も渡ろうとしていたので、青だったと思います」

検察官「速度は?」

証人「(時速)40キロくらいだったと思います」

⇒(3)「そこの茶のジャケット、ナイフを持っているぞ」 叫び声に足がすくむ証人