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(8)星島被告「遺族が『この手で殺したい』と思うのは当たり前」

10分間の休廷をはさみ、午前11時53分から、平出喜一裁判長が星島貴徳被告に質問を始めた。殺害された東城瑠理香さんの姉が、東城さんの人柄や現在の苦しい気持ちなどを語る中、うつむいたまま弁護人席前の長いすに座って聞いた星島被告。「被告人は証言台へ」と促されると、星島被告はふらふらと重い足取りで前に進み、裁判長の「座って」の声にも反応せず、右脇の刑務官に促されて着席した。

裁判長「犯行に至るまでの10年間についての話があまり多くないので補充させてください」

星島被告「はい」

裁判長「両親を殺すとまで思ったのはいつごろですか」

星島被告「上京してから数年くらい…」

星島被告は出身地の岡山県の高校を卒業後に上京している。

裁判長「ちょうどそのころから、両親と連絡を絶つようになったと」

星島被告「はい」

裁判長「なぜ殺すとまで思うようになったのですか」

星島被告「どこにいても、誰といても、やけどを見られるたびに沈黙が訪れて、とりつくように『その足どうした』『やけどだ』と。みんな気持ち悪いものを見る目で。いつかは忘れましたが、母から、(やけどの跡の)ケロイドに膿がたまるのですが、耳かきで取っている最中に『耳かきが臭くなるからやめろ』と…」

これまでの公判でも証言してきたとおり、両親への殺意を持つほどの恨みは、やけどが要因であることを述べた。

星島被告「助けになってくれなくてずっと恨んでいました」

裁判長「しかし、なぜそれが殺すとまでいくのですか」

星島被告「殺さないと気が済まなかったので…。人を殺したい、死ねばいいと思い続けると私のようになると…。遺族の方が『死刑なんて生ぬるい』と、『この手で殺したい』と思うことは当たり前だと思う。私が生きていたら、その思いをずっと引きずらないといけない。『ずっと殺してやる、殺してやる、死ね』と…。死刑が正しいと思います。死んで償いになると思っていません。ゆるしてもらえるとはちっとも思っていません」

裁判長「私の質問は、なぜやけどが人を殺すというところまでいくのかということなんです」

星島被告「はい。すいません」

自身の両親に対する恨みを、東城さんの遺族の感情に重ねたのか、星島被告は質問からはずれた持論を展開。裁判長はわずかに語気を強め、興奮気味に話す星島被告をたしなめた。

裁判長「『殺さないと気が済まない』ということ以外に何か言えることはありますか」

星島被告「いままで一度も謝ってくれませんでした」

前日の公判で弁護人が読み上げた星島被告の両親に対する調書では、1歳11カ月でやけどを負わせてしまったことに「一生残る傷跡を残し、大変申し訳ない気持ちです」(父親)と謝罪していた。これまで本当に謝罪はなかったか、それとも星島被告の心に届かなかっただけなのか。裁判長は、事件直後の平成20年5月に星島被告が両親に送った手紙について質問を向ける。

裁判長「あなたは昨年5月に両親にあてた手紙の中で、両親に謝罪し、感謝の気持ちをつけて送っていますね」

星島被告「はい。弁護士までつけてくれましたので」

星島被告には私選弁護人がついている。

裁判長「今は両親をどう思っていますか」

星島被告「もっと早くにひと言があったら…。こんなに恨めしい気持ちも…」

後悔の念ともとれる発言をする星島被告。ただ、相変わらずボソボソと消え入りそうな声は変わらない。

裁判長「両親を殺そうと思ったことと、人を拉致して性奴隷にすることとは話が違うと思うのですが、そう思うようになったのはなぜですか」

星島被告「普通につきあうのが無理だろうと勝手に考えて、じゃあどうするかを考えたのが原因だと思います」

裁判長「私はこれで結構です。では戻ってください」

星島被告「はい」

裁判長「これで証拠調べを終了します」

傍聴席で遺族が見守る中、最後まで星島被告は、犯行に至った身勝手な動機を話し続けた。証言台から長いすに戻る際は、自ら進んで足を運び、遺族はその姿を厳しい視線で見つめていた。次回公判は26日午前10時に開廷し、論告弁論や星島被告の最終陳述が行われる予定だ。

⇒第6回公判