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(1)「暴言ない」捜査員登場、鈴香被告の言い分を全面否定

秋田連続児童殺害事件で、殺人と死体遺棄の罪に問われた無職、畠山鈴香被告(34)の第9回公判が22日午前10時半、秋田地裁(藤井俊郎裁判長)で開廷した。

前日から続く吹雪。降り積もった雪の中、いつものように護送用バスで秋田地裁に到着した鈴香被告は、白のシャツに黒ジャケット、黒ズボン、ピンクのサンダル姿。今日は寒さを感じるのか、普段はあけているジャケットのボタンを一つだけつけていた。

検察側、弁護側双方の証人尋問が予定されている今公判。最初に証言台に立ったのは、鈴香被告を取り調べた秋田県警捜査1課の男性捜査員だった。グレーのスーツを着て、白髪交じりの髪の毛を短く切りそろえた初老の捜査員は、いくぶん緊張気味に証言台の前のいすに腰を下ろす。

捜査員によると、証人は能代署管内で発生したコンビニ強盗の捜査をしていた際に、長女、彩香ちゃん=当時(9)=が行方不明になったことから事件に関与。米山豪憲君=同(7)=事件発生後は、容疑者として浮上していた鈴香被告の身辺調査のため、周辺住民に対する聞き込みを行い、昨年6月4日に鈴香被告が逮捕された後は、鈴香被告の取り調べを最後まで担当していたという。

検察側がまず聞いたのは、取り調べの時間。朝8時半から延々と休みなく取り調べられたとする弁護側の主張を、証人は否定した。

証人「そんな感じではなかった。鈴香被告は、朝夕は弁護士の接見を受けていたため、朝は9時ごろから始めた。よく体調不良を訴えていたので、その都度様子を見て休ませていた。長時間調べたわけではない」

検察官「取り調べにあたり、健康面を注意していたのか?」

証人「はい」

検察官「休憩は?」

証人「申し出があれば休ませていた。必ず留置場に返すのではなく、調べ室でも休ませ、たばこを吸わせていた」

検察官「たばこ休憩は」

証人「頻繁だった。けっこうヘビースモーカーだったと思う」

さらに証人は、取り調べになれてきて、ふざけたように「今日は疲れたから休みたい」と言ってくる鈴香被告をなんとかなだめて取り調べを続けたことがある、とも。

検察側の質問は、鈴香被告が終始主張している、取り調べの際の暴言に及ぶ。

検察官「『人を1人殺しておいて、疲れたといえる訳がない』と言ったことは?」

証人「ない」

検察官「黙秘権は?」

証人「告げていた」

検察官「『話す義務がある』と言ったことは?」

証人「ない。ただ、『逮捕されたら、取り調べを受ける義務がある』とはいった」

検察官「取り調べ中、被告をなんて呼んでいた?」

証人「秋田弁で『あんだ』とか、『鈴香さん』とか」

検察官「『お前』とは?」

証人「呼んだことがない。(被告を)見下げるような言い方はしない」

次々と否定していく証人。検察側は、テンポよく鈴香被告の訴えの数々を読み上げる。

検察官「『お前は何様のつもりか』と言ったことは?」「怒鳴ったことは?」「取り調べ中、指先で机をトントンとたたいたことは?」「『妄想、うそつき、思いつき』は?」「『体が大きいんだから、虚弱はないだろう』は?」「『テレビに出て女優気取りか』は?」「『いろいろな殺人犯を調べたが、お前ほどずるいのは初めてだ』は?」…。

聞かれたすべてを否定する証人。仏教の教義について語ったとする主張については「調べの中で、『被害者を成仏させてあげなきゃいけない。成仏させてあげよう』と言ったことはある」と説明し、恐山のイタコに聞いたという話については、次のように話した。

検察官「(捜査員が鈴香被告に言ったとする)『恐山のイタコに話を聞いたが、かなり当たっていた』という話は?」

証人「雑談のなかで、別事件のことを話した。『被害者の遺族は、わらをもつかむつもりで必死なんだ』と言い聞かせた」

⇒(2)「一部ウソだと思った」「被告は1回では認めない」捜査員証言