第23回公判(2012.2.17) 【被告人質問】
(10)最後の20万円に「いよいよだな」 次はキャンセル待ちの愛人や出会い系

首都圏の連続殺人事件で練炭自殺に見せかけて男性3人を殺害したとして、殺人などの罪に問われた木嶋佳苗被告(37)に対する裁判員裁判の第23回公判(大熊一之裁判長)。木嶋被告への被告人質問が続いている。
男性弁護人は、平成19年に70歳で死去するまで木嶋被告に1億円近くを支援したとされる千葉県松戸市のリサイクルショップ経営者、●■さん(法廷では実名)との関係について尋ねていく。
平成14年に知り合い、木嶋被告への援助を続けていた●■さん。しかし19年ごろ、体調を崩した●■さんは木嶋被告への最後の送金をする。
弁護人「送金のいきさつは」
被告「●■さんが、体調を崩して一人で銀行にも行けないと。あなた(木嶋被告)も生活に困るだろうから、社員に給料分だけでも振り込ませるから、と。それで20万円…。今までより少ないですけど、いただきました」
弁護人「どう思いましたか」
被告「ああ、いよいよだな、と。よほど悪いんだなと思いました」
●■さんの死を予感した木嶋被告は、今後の生活手段を模索し始める。
弁護人「どういうことをしましたか」
被告「まずは、ブランド品をリサイクルショップに売りました」
弁護人「その他は」
被告「やはり、●■さんのような男性を探すのが一番だなと思いました」
木嶋被告は出会い系サイトで男性を探し始める。
弁護人「知り合った男性とは?」
被告「人によって違いますけど、デートをしたり、ホテルに行くようになりました」
●■さんと知り合う以前は、男性と肉体関係を重ねて現金を受け取っていた木嶋被告。再び同じ生活が始まった。
木嶋被告の銀行口座には、複数の男性から現金が振り込まれるようになる。
弁護人「312万円を振り込んだ男性がいる。この人は結婚相手を探していたのでは」
被告「違います」
弁護人「なぜそう言えるのですか」
被告「既婚者だったからです」
この男性との関係が妻に発覚したことがきっかけで交際を解消。追い込まれた木嶋被告は新たな手段に出る。
被告「ネットではなかなかよい人に会えなかったので、以前知っていた人に連絡を取りました」
木嶋被告は妹と同居を始める平成13年まで、愛人契約を結んでいた男性から現金をもらっていた。しかし、再び連絡を取ったのは違う相手だという。
被告「一回お別れした人に連絡を取ることは、(契約の)ルール上できない。順番待ちのような形で、私の体が空いたら付き合いたいとリクエストしてくれた人たちがいたので、その方たちに連絡を取りました」
“契約愛人”としての木嶋被告はキャンセル待ちができるほどの人気だったようだ。
かつての“客”を収入の手段としていた木嶋被告のもとに、ついに●■さんの訃報(ふほう)が届く。
弁護人「●■さんの死はどうやって知りましたか」
被告「心配で会社に電話したら、家族の方が『父は病気で亡くなった』と」
最大の援助相手を失った木嶋被告。しかし、今までの生活を変える気はなかった。
弁護人「生活をリセットして、普通に暮らそうとは」
被告「現実的に難しいと思いました」
木嶋被告は当時、月100万円以上を出費する生活を続けていた。
弁護人「普通の結婚をしようとは?」
被告「一般のサラリーマンのお給料は知りませんけど、100万円よりは少ないという認識がありました」
インターネットで出会った男性から現金を受け取るようになった木嶋被告。中には1回の性交渉で数十万円を受け取ることもあったという。
弁護人「●■さんが亡くなった後も、月150万円を稼げると思っていましたか」
被告「そうですね…不安はありましたけど。私にも(男性に)与えられるものはあると自負していたので」
弁護人「それは、性的なことで、男性からほめられることが多かった、と」
被告「はい」
そして木嶋被告は平成20年5月、婚活サイト「△△」に登録する。木嶋被告に殺害されたとする3人の男性と知り合うきっかけとなったサイトだ。
弁護人「なぜ△△に登録したのですか」
被告「当時、テレビや雑誌で目にすることが多かった。規模が大きく、信頼できるサイトだと思い、利用しました。真剣に結婚相手を探すサイトだという認識はありました」
廷内の時計はまもなく午後5時になろうとしている。弁護人は時間を気にしながら、サイトの仕組みについて質問を重ねていく。
弁護人「サイトの支払いはどのように」
被告「クレジットカードで支払います」
午後4時50分。弁護人が裁判官らを見やった。
弁護人「きりがいいので、今日の質問はこれまでで」
大熊裁判長が閉廷を告げる。木嶋被告は軽く頭を下げ、被告人席に戻った。
鮮やかな黄色のダウンベストを羽織る木嶋被告。表情を崩さないまま、法廷をあとにした。