第23回公判(2012.2.17) 【被告人質問】

 

(1)ついに事件を語る、自信満々の木嶋被告 ピアノは「上手」 結婚「もう少し待って」 上品な声で

木嶋被告

 首都圏の連続殺人事件で練炭自殺に見せかけて男性3人を殺害したとして、殺人などの罪に問われた木嶋佳苗被告(37)に対する裁判員裁判の第23回公判(大熊一之裁判長)が17日、さいたま地裁で始まった。

 第23回公判では、弁護側が被告人質問を行い、木嶋被告の生い立ちを中心に質問する予定だ。

 木嶋被告が法廷で証言するのは今年1月10日の初公判以来となる。木嶋被告は初公判で、殺人罪に問われた3事件については、起訴内容を全面的に否認している。

 また、男性2人から計約450万円をだまし取った詐欺事件について、「結婚のことを考えてお付き合いしていたことはうそではありません」などと意見陳述している。

裁判長「審理を始めます」

 弁護人が証言台の前に立ち、裁判員らに向かって説明を始めた。

弁護人「(被告人質問は)生い立ちから被告人との関係まで、6つのテーマに分けて行います。今日は3つの殺人事件について聞いた後、生い立ちから△△(婚活サイト)への登録まで話してもらいます」

「生い立ちから聞くのは被害者との関係を理解してもらうためです」

 木嶋被告は平成21年1月、東京都青梅市のマンション室内で、こんろ6つに入れた練炭を燃やし、睡眠状態におちいらせた交際相手だった会社員、寺田隆夫さん=当時(53)=を殺害したとされる。

 寺田さん殺害に加え、同5月、千葉県野田市の無職、安藤建三さん=当時(80)=に睡眠導入剤を飲ませて眠らせた上でこんろを使って練炭に火を付けて殺害。

 さらに、同8月、埼玉県富士見市の駐車場に止めたレンタカーの車内で練炭を燃やし、薬物で眠らせた交際相手の東京都千代田区、会社員、大出嘉之さん=当時(41)=を一酸化炭素(CO)で殺害した罪に問われている。

 弁護側は初公判で説明した木嶋被告の生い立ちについて改めて説明を始めた。

 木嶋被告は昭和49年11月生まれ。北海道出身で妹2人と弟1人の4人きょうだい。平成5年に高校卒業後、18歳で上京した。

弁護人「上京後は、ピアノ講師などをして、恋人とアパートを行ったり来たりしていました」

「平成6年、愛人契約やデートクラブでセックスでお金を稼ぐようになりました。月に150万円くらいです」

「平成10年ごろには、カインドというシーズー犬のサークルを作りました」

「平成13年、妹の○△さんと(東京都)板橋区で暮らすようになりました」

「セックスでお金を稼ぐことがなくなり、介護や介助の仕事を始めました」

「平成15年、詐欺で逮捕されます。執行猶予を受けて釈放されますが、体調を崩しました。17年には不眠や鬱で精神科に通うようになりました。18年まで治療を受けました。20年5月に△△に登録、結婚相手を探し出しました」

 午前10時10分ごろ、ついに木嶋被告が証言台に座った。

 白のカーディガンに黒いスカートにタイツ。清楚な雰囲気だ。

弁護人「3つの殺人事件について聞いていきます」

被告「はい」

弁護人「寺田さんを殺害しましたか」

被告「していません」

弁護人「平成21年1月30日、寺田さんのマンションに行きましたか?」

被告「はい、行きました」

弁護人「睡眠薬を飲ませましたか」

被告「飲ませていません」

弁護人「練炭に火をつけましたか」

被告「していません」

 木嶋被告はこの後、寺田さん殺害事件以外の2つの事件についても、改めて「(殺害)していません」と否定した。よどみなく答える木嶋被告。上品な声が法廷内に響いた。

弁護人「出身は?」

被告「北海道です」

弁護人「お父さんの職業は?」

被告「行政書士です」

弁護人「母親は働いてましたか?」

被告「子供のころにピアノを教えていました」

弁護人「高校のときにサークル活動は?」

被告「ボランティア同好会です。主に老人福祉施設で介護の手伝いなどをしていました」

弁護人「どういう活動を?」

被告「入浴の介助などをしていました。清拭も習っていました」

弁護人「音楽の演奏は?」

被告「施設のイベントで歌うときは伴奏していました」

弁護人「よかったと思ったのはどういうとき?」

被告「感謝の気持ちを言葉にしてくださるときです」

弁護人「役職は?」

被告「3年生のときに部長になりました」

弁護人「高校を平成5年に卒業し、外資系のファーストフード会社に就職しましたね」

被告「はい」

弁護人「どれくらい続きましたか」

被告「3カ月間の研修を受けて辞めました。店舗業務が主で、接客のサービス業は合わないと感じました」

弁護人「その後、ピアノ講師に?」

被告「はい、母親からずっと教わっていました」

弁護人「上手ですか」

被告「たぶん。小学校から高校までコンクールやコンテストで優勝していました」

弁護人「ワープロ入力のアルバイトも始めましたね」

被告「はい。小学校のときに父が持っていたパソコンで習い、中学校のときに英文タイプクラブに入り、父からワープロを買ってもらいました」

弁護人「英文タイプクラブ?」

被告「英文で手紙を書いて外国の友達とやり取りします」

弁護人「キーボード入力は今でも早い?」

被告「普通より早いと思います」

 続いて弁護側は東京上京後の交際状況について質問を始めた。木嶋被告は北海道時代に知り合った男性と交際を続けていたという。

 男性は平成5年当時、28歳で木嶋被告よりも10歳年上。建設会社に勤務し、神奈川県に住むこの男性とほぼ毎日どちらかの自宅に泊まっていたという。

弁護人「●●さん(法廷では実名)と結婚の話題は?」

被告「ありました。●●さんはなるべく早く、30歳までに、と。私は20歳までは独身でいたいので、もう少し待ってほしいと伝えました」

 法廷内は静まりかえり、傍聴人は木嶋被告を見つめている。検察官は視線を手元に落とし、弁護側と木嶋被告のやり取りに聞き入っている。

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