裁判員会見(2010.12.2)

 

「被告の謝罪の意思が分からない」「だから冥福を祈ることを触れてもらった」…裁判長説諭の真意

家宅捜査

 中央大理工学部の高窪統(はじめ)さん=当時(45)=を殺害したとして殺人罪に問われ、懲役18年が言い渡された山本竜太被告(29)の判決公判後の裁判員らの記者会見は、テレビカメラによる撮影のある会見へと移った。裁判員と補充裁判員8人のうち、裁判員4番の男性会社員(53)のみが応じた。

記者「改めて感想をお願いします」

裁判員4番「正直、大変疲れました。先週水曜から何回か足を運んで評議に加わり、深い議論ができた充実感と疲労がありました。充実した評議ができて、結論を導くことができてほっとしています」

記者「山本被告や高窪教授に対するどんな思いを込めたのですか」

裁判員4番「被告は精神疾患に罹患していて今も抜け切れていない。そういうことから考えて、裁判官も裁判員も悩みました。結果に対しては自信といったらおかしいですが、責任を持って出したつもりです。被告が高窪教授に対して、謝罪の意思がどれほどあるのかよくわからない部分もありました。だから判決の説諭では、反省し冥福を祈ることを織り込ませてもらいました」

 判決を終えて安心したからか、男性会社員の裁判員はすっきりした表情でこう話した。記者の質問に一言ひとことはっきりした声で答えていく。

記者「妄想の世界を理解する上で一番困ったことは?」

裁判員4番「あれほど強い妄想をしたことはないし、想像しながら判断しなければならなくて、難しかったです」

記者「例えば、事件後に弁護士と接見する被告の様子などの映像があった方がよかったですか」

裁判員4番「鑑定医の説明は分かりやすくまとめられていたので、必要なかったと思います」

記者「周囲が、被告に精神障害があることに気づいてあげられていればと思うのですが、どう思いますか?」

裁判員4番「公判では生育歴も述べられていたし、裁判員も論議をしました。途中で助けてあげたり、もっと早い段階で精神科にかかればこうならなかったのではという議論は(裁判員の中でも)多数ありました」

記者「刑務所に収容するのがいいのかという議論はあったのでしょうか」

裁判員4番「ありました。医療刑務所があるということも聞いたし、鑑定医も刑務所に収監しても大丈夫ということで、刑務所に収監すべきだろうと判断しました」

 男性裁判員ははっきりとした口調で、自らの思いを丁寧に説明していった。

記者「裁判員制度について、実際にやってみてどう思いましたか」

裁判員4番「選ばれる前は避けたいと思いました。忙しいし、人を裁く難しさに関与したくないと思ったのは事実です。選ばれてみて、国民の意見や常識を反映させるという趣旨を再認識しました」

「裁判官の丁寧な説明があり、深く真摯に評議し判決に結びついたわけで、貴重な経験をしたし、国民感情が反映された判決になったと思います。いい制度ではないかと現状では思います」

 実際に経験してみて、裁判員制度に対する印象が変わったと話した男性会社員はこう強調して会見を締めくくった。

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